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その他の話
1 帰るか
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「ふん!ポッと出の癖に!穢らわしい」
俺は俺に向けられた悪意を受け流す。つがいだとか、奇跡の魔石細工師だとか異世界人だとかそんなのはどうでも良くて、ただ自分が気に入らない奴等を虐げる事が大好きな人間はどこにでもいるということだ。
今の俺は見た目は若くて20そこそこだ。多分童顔気味な顔のせいでもっと若いと思われてる。リオウは可愛い可愛いとあのデカくてザラザラした舌で馬鹿みたいに舐め回してくるけど。
まあ社会人として数年過ごしてきた俺は、俺のことを最初からよく思わない、仲良くしたいと最初から思わない敵意剥き出しの連中を無視する術を身につけている。だからすいーっと無視した。
まあ気に入らないのは分かる。リオウは良い王太子だった。だった、というのは俺と出会い、6年間生きる屍だったからその間に人気やら人望やらを随分失った。
しかし、俺という使える人間連れて戻って来たので、また評価が上がった。実際のリオウの「王太子としての素晴らしさ」は俺は良く分からない。
しかし次期王が決定していたリオウが失脚しかけ、第二王子が王太子に……と噂された。本人もその気になりかけたのにリオウは俺と会って大復活してしまう。第二王子の一派にしてみれば面白くないこと、この上ないだろう。
第二王子は更に側妃様の子供で、正妃様の子供であるリオウの事を何かとライバル視しているらしい。
で、俺の事を見下しているのは、その第二王子の妹。名前は忘れたけど、顔つきがリオウ達正妃様の子供はシュッとしているけど、側妃様の子供達は丸顔。丸顔の派手なドレスの女性が取り巻きの令嬢をたくさん連れて俺を睨んでいた。
まあ、すいーっと無視されて怒っているようだが、どうでもいい。
……そう、俺は無視できるんだが、それができない奴がいる。
「平民の癖にお前生意気だぞ!」
「俺はリオウ父さんの子供だもん!!」
ぐるる、と低いうなり声を上げて、第二王子の子供達とキーチェはにらみ合う。そうだ、キーチェは生まれも育ちも平民なんだから、貴族のことを何も知らない。
「母さん、母さんーーー!」
「どうしたんだキーチェ」
「俺、こんな所嫌だ!町に帰りたい!!」
そうだな……。弟と妹が生まれてからキーチェは自分のことを俺、と言うようになったし、俺の事をママから母さんに変えた。きっとキーチェの中の兄の威厳がそうさせるんだろう。
「にーに、ケティあの子達怖い」
「クーも……」
「大丈夫だ!二人は俺が守る!あいつは口ばっかりだもん、喧嘩したから俺の方が強いからな!安心して」
「にーに!カッコいい!」「良かったぁ!」
手を出さずに帰ってきたのはとても偉い。まだ2歳のクレノとケイティとの一緒の散歩だったから、二人を守るために頑張ったんだろう。あいつら、ってことは第二王子の三兄弟か。キーチェは今8歳、三兄弟は10歳だ。子供の2歳違いは体の大きさなどのアドバンテージがまるで違う。
「町か……」
確かに王宮での暮らしはキーチェには辛いだろう。王太子の息子だからと勉強にマナーや窮屈な服。どれもこれもキーチェが嫌がるものばかり。それでもここが安全だからとリオウに説得され
「母さんと弟妹達を守るため」
に、日夜頑張っている。でも、魔石の技術は広がっているし、もう良いんじゃないかなって思う。
「父さんに相談してみようか?」
「……でも父さんは王子様なんだろう?王子様はお城に住んでないと駄目なんでしょう?」
はてさて、どこからかお喋りメイドの噂話を聞いてきたのか、キーチェが悲しそうに目を伏せる。俺は俺の可愛い息子にこんな思いをさせるためにここにきた訳じゃない。
ふん!王子様がなんだ!そんなの知るか!
「町に帰ろう。きっとケイティもクレノもサーシャもスオウもそっちの方が良い」
「ホント!?」
キラキラとキーチェの目が輝く。最近どんよりしていたもんな、子供にあんな目をさせて何が親か!
王子様が王宮に必要ならリオウはここに置いて行く。
「ああ、俺達は町暮らしの方が性に合ってるよ」
偉い人みたいな暮らしは出来っこないんだ。俺はリオウから買い与えられた子供達の服や雑貨を手早く纏め始めた。
俺は俺に向けられた悪意を受け流す。つがいだとか、奇跡の魔石細工師だとか異世界人だとかそんなのはどうでも良くて、ただ自分が気に入らない奴等を虐げる事が大好きな人間はどこにでもいるということだ。
今の俺は見た目は若くて20そこそこだ。多分童顔気味な顔のせいでもっと若いと思われてる。リオウは可愛い可愛いとあのデカくてザラザラした舌で馬鹿みたいに舐め回してくるけど。
まあ社会人として数年過ごしてきた俺は、俺のことを最初からよく思わない、仲良くしたいと最初から思わない敵意剥き出しの連中を無視する術を身につけている。だからすいーっと無視した。
まあ気に入らないのは分かる。リオウは良い王太子だった。だった、というのは俺と出会い、6年間生きる屍だったからその間に人気やら人望やらを随分失った。
しかし、俺という使える人間連れて戻って来たので、また評価が上がった。実際のリオウの「王太子としての素晴らしさ」は俺は良く分からない。
しかし次期王が決定していたリオウが失脚しかけ、第二王子が王太子に……と噂された。本人もその気になりかけたのにリオウは俺と会って大復活してしまう。第二王子の一派にしてみれば面白くないこと、この上ないだろう。
第二王子は更に側妃様の子供で、正妃様の子供であるリオウの事を何かとライバル視しているらしい。
で、俺の事を見下しているのは、その第二王子の妹。名前は忘れたけど、顔つきがリオウ達正妃様の子供はシュッとしているけど、側妃様の子供達は丸顔。丸顔の派手なドレスの女性が取り巻きの令嬢をたくさん連れて俺を睨んでいた。
まあ、すいーっと無視されて怒っているようだが、どうでもいい。
……そう、俺は無視できるんだが、それができない奴がいる。
「平民の癖にお前生意気だぞ!」
「俺はリオウ父さんの子供だもん!!」
ぐるる、と低いうなり声を上げて、第二王子の子供達とキーチェはにらみ合う。そうだ、キーチェは生まれも育ちも平民なんだから、貴族のことを何も知らない。
「母さん、母さんーーー!」
「どうしたんだキーチェ」
「俺、こんな所嫌だ!町に帰りたい!!」
そうだな……。弟と妹が生まれてからキーチェは自分のことを俺、と言うようになったし、俺の事をママから母さんに変えた。きっとキーチェの中の兄の威厳がそうさせるんだろう。
「にーに、ケティあの子達怖い」
「クーも……」
「大丈夫だ!二人は俺が守る!あいつは口ばっかりだもん、喧嘩したから俺の方が強いからな!安心して」
「にーに!カッコいい!」「良かったぁ!」
手を出さずに帰ってきたのはとても偉い。まだ2歳のクレノとケイティとの一緒の散歩だったから、二人を守るために頑張ったんだろう。あいつら、ってことは第二王子の三兄弟か。キーチェは今8歳、三兄弟は10歳だ。子供の2歳違いは体の大きさなどのアドバンテージがまるで違う。
「町か……」
確かに王宮での暮らしはキーチェには辛いだろう。王太子の息子だからと勉強にマナーや窮屈な服。どれもこれもキーチェが嫌がるものばかり。それでもここが安全だからとリオウに説得され
「母さんと弟妹達を守るため」
に、日夜頑張っている。でも、魔石の技術は広がっているし、もう良いんじゃないかなって思う。
「父さんに相談してみようか?」
「……でも父さんは王子様なんだろう?王子様はお城に住んでないと駄目なんでしょう?」
はてさて、どこからかお喋りメイドの噂話を聞いてきたのか、キーチェが悲しそうに目を伏せる。俺は俺の可愛い息子にこんな思いをさせるためにここにきた訳じゃない。
ふん!王子様がなんだ!そんなの知るか!
「町に帰ろう。きっとケイティもクレノもサーシャもスオウもそっちの方が良い」
「ホント!?」
キラキラとキーチェの目が輝く。最近どんよりしていたもんな、子供にあんな目をさせて何が親か!
王子様が王宮に必要ならリオウはここに置いて行く。
「ああ、俺達は町暮らしの方が性に合ってるよ」
偉い人みたいな暮らしは出来っこないんだ。俺はリオウから買い与えられた子供達の服や雑貨を手早く纏め始めた。
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