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23 幸せ家族計画
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キーチェの時は俺も未体験の事だったし、小さな町だったので産婆とヘンリーの奥さんに励まされたが、今回はたくさんの医者や看護師がたくさん並んで完璧な布陣だった。
「みゃーみゃー!」「にーにー!」
「両方とも虎の子ですな!可愛らしい」
男の子の方はキーチェみたいに黒い毛で女の子の方はリオウに似た金色の毛むくじゃらの子虎だった。
「はは……虎の子の姿で産まれたぞ……?」
「人型で産まれるか獣型で産まれるかはその子の気分と言われているから……そう言う気分だったんだろう」
「そう言うもんなのか?」
「違いますよ、殿下。子供が複数いる場合は母体内で場所を取らないように小さくなれる獣型で産まれるんです」
「……」
冷静なツッコミが医者から入った。
「獣人同士の子供であれば多産の事が多いです。人族が母体の場合は子供が一人である事もありますからその時は人型で産まれる事もあります」
医者の言う事はとても正しいなと思う。キーチェは人型で産まれてきたもんな。リオウは育児に関してはど素人だという事が良く分かった。
「これから勉強する……」
おっかなびっくり赤ちゃん虎を抱き上げて神妙な顔をしている。リオウはなんと言うか有言実行の人だ。自分がすると言ったらするし、しないと言ったら絶対にしない。その辺りはとても信頼できる。
「ニィニィ!」「みゃーみゃー!」
子供達はそんなリオウの事なんか知ったこっちゃないと言わんばかりに腕の中から逃げ出そうと爪を立てて引っ掻いている。キーチェの時は必死で育ててよく覚えていないけれど、こんなに活動的じゃなかった気がするな?
「はは、これはやんちゃになりそうな姫様と王子様ですね」
そんな太鼓判を医者からもらい、俺のお産は恙なく終わったが……。
「……」
「ご懐妊ですね……少し、計画性という物をですね……?」
クレノとケイティと名前をつけた子供達がまだ4ヶ月くらいの頃、俺はまた妊夫になっていた。
「……我慢してた分、濃いのか?」
100発100中なんて言葉もちらほらし出したが
「いや、その……なんだ……凄く、ごめんなさい……」
最近覚えた日本式土下座をリオウは華麗に決め、俺は医者と話し合い産むことを決めた。
「なんせ、助けてくれる人手はあるしなあ」
リオウの8人いる兄弟と確執がある奴もいるけれど、仲良くしてくれる奴もいて、キーチェが凄く懐いている一番上のお姉さんや一番下の弟なんかが積極的に世話を焼いてくれている。
「カイリ様が男性な事もあり、体力面でも問題はなさそうです。ただし、注意深く見て行かなければなりません。無理はもっての外です」
魔石の研究所に職場復帰できるかな?と思ったけれど、絶対に駄目だと止められてしまった。
「絶対に一人で歩いちゃ駄目だ!」
「……いや、運動不足になるから」
24時間警備員の様にリオウが張り付いてちょっとうざったかったりしたが、キーチェを肩車して肩からスリングをかけ、その中にクレノとケイティを入れ……俺と手を繋いで歩くリオウは中々父親が様になっていて嬉しかった。
「あと二人増えたらどうやって……背中か!」
「いや、俺が抱っこするし……」
「キーチェがおんぶしてあげるー!」
リオウが王太子なんて辞めると駄々を捏ねたり、キーチェが大暴れしてティーゲの王宮の壁を壊したり色々な事件があったりしたが、あっという間に2人家族から7人家族になってしまった。
魔石の研究も進み、魔獣を命がけで狩る人が減っている。冒険者とか呼ばれる人たちからは不評だが、まだ田舎では魔石が必要だし、結局最初は狩って来ないといけないので職を失うところまでは行っていないらしい。ただ、先細りはしているので、違う職業に就く人たちは増えていると言う事だ。
「やはり世界は「平和」に向かったようだ。カイリは使命を果たしたよ」
「でも俺は大したことをしていない」
「カイリの撒いた種がなければ、研究所も何もかも生まれなかった。平和の種を撒くためにカイリは呼ばれた」
王宮の広い庭で子供達が元気に駆け回るのを見ながら俺とリオウは草の上の座って話をしている。結局リオウは王太子のままだし、俺は召喚された異世界人の上にリオウのつがいだし、魔石研究の第一人者だしという事で国外へは行かないでくれと懇願されている。
「リオウに会うためだったのかもしれないよ?」
俺が笑うと、リオウもくしゃっと破顔する。
「ああ、そう言ってもらえるととても嬉しい。カイリ、愛してるよ」
大きな手と太い尻尾を巻きつけて、喉をゴロゴロ鳴らしている。
「俺も愛してる」
二人で肩を寄せ合っていると、子供達が気が付いて走り寄ってくる。
「俺も俺も-!」「ぼくもー!」「わたしもー!」「きゃーっ」「にゃーーーん!」
「あっ!こらっ」
どさどさと俺とリオウの上に降ってくる子供達は元気すぎるほど元気な虎の子達で全員リオウそっくりだ。
「ねー母さん、俺、もっと兄弟いても良いと思うんだよね!」
キーチェがびっくりするようなことを言い出し、下の子供達が目をキラキラさせて俺を見上げてくる。
「えーっ!ケティに妹が増えるー!?」「クーにもー!?」
いやいや、待て待て。もう5人もいるんだぞ?虎族は子沢山が推奨されているが流石にねえ?
「こらこら、カイリの体の事もあるんだから。無理させるわけにはいかないだろう?……まあもっといてもいいとは思うけど……」
ちらっとこっちを見るリオウはなんだか期待に満ちた子供達と同じような目をしているから困ったものだ。
「で、出来たらね!?」
「避妊をやめたらすぐだろ……?」
「……」
ちょっと苦笑気味にリオウは言うが、確かにすぐのような気がする。何せ前例が前例だけにそんなことはないよといえない所だ。
「まあ、そうかも、だけど。子供はさ、授かり物だから欲しいって思っても上手く行かない時もあるし」
だから、来てくれたら全力で可愛がりたいし。
「みゃみゃー、しゃー、ねーたん?」
今の所一番下のサーシャが一番キラキラした目で見て来るなぁ。サーシャを抱き上げて
「さあ、どうだろうね?」
「しゃーもねーたん!」
真っ黒な髪の毛を撫でるとお日様の良い匂いがする。残りの4人はリオウに「お父さん登り」を敢行してるから、俺達家族は今日も仲良しだ。
「まあ、増えても悪くないよなぁ」
日本の事をたまに思い出したりするが、こちらの世界を捨てる事はもう出来ない。こっちに俺の幸せはあったんだから。
傷ついた事もあったけれど、俺は今、幸せだ!
終
「みゃーみゃー!」「にーにー!」
「両方とも虎の子ですな!可愛らしい」
男の子の方はキーチェみたいに黒い毛で女の子の方はリオウに似た金色の毛むくじゃらの子虎だった。
「はは……虎の子の姿で産まれたぞ……?」
「人型で産まれるか獣型で産まれるかはその子の気分と言われているから……そう言う気分だったんだろう」
「そう言うもんなのか?」
「違いますよ、殿下。子供が複数いる場合は母体内で場所を取らないように小さくなれる獣型で産まれるんです」
「……」
冷静なツッコミが医者から入った。
「獣人同士の子供であれば多産の事が多いです。人族が母体の場合は子供が一人である事もありますからその時は人型で産まれる事もあります」
医者の言う事はとても正しいなと思う。キーチェは人型で産まれてきたもんな。リオウは育児に関してはど素人だという事が良く分かった。
「これから勉強する……」
おっかなびっくり赤ちゃん虎を抱き上げて神妙な顔をしている。リオウはなんと言うか有言実行の人だ。自分がすると言ったらするし、しないと言ったら絶対にしない。その辺りはとても信頼できる。
「ニィニィ!」「みゃーみゃー!」
子供達はそんなリオウの事なんか知ったこっちゃないと言わんばかりに腕の中から逃げ出そうと爪を立てて引っ掻いている。キーチェの時は必死で育ててよく覚えていないけれど、こんなに活動的じゃなかった気がするな?
「はは、これはやんちゃになりそうな姫様と王子様ですね」
そんな太鼓判を医者からもらい、俺のお産は恙なく終わったが……。
「……」
「ご懐妊ですね……少し、計画性という物をですね……?」
クレノとケイティと名前をつけた子供達がまだ4ヶ月くらいの頃、俺はまた妊夫になっていた。
「……我慢してた分、濃いのか?」
100発100中なんて言葉もちらほらし出したが
「いや、その……なんだ……凄く、ごめんなさい……」
最近覚えた日本式土下座をリオウは華麗に決め、俺は医者と話し合い産むことを決めた。
「なんせ、助けてくれる人手はあるしなあ」
リオウの8人いる兄弟と確執がある奴もいるけれど、仲良くしてくれる奴もいて、キーチェが凄く懐いている一番上のお姉さんや一番下の弟なんかが積極的に世話を焼いてくれている。
「カイリ様が男性な事もあり、体力面でも問題はなさそうです。ただし、注意深く見て行かなければなりません。無理はもっての外です」
魔石の研究所に職場復帰できるかな?と思ったけれど、絶対に駄目だと止められてしまった。
「絶対に一人で歩いちゃ駄目だ!」
「……いや、運動不足になるから」
24時間警備員の様にリオウが張り付いてちょっとうざったかったりしたが、キーチェを肩車して肩からスリングをかけ、その中にクレノとケイティを入れ……俺と手を繋いで歩くリオウは中々父親が様になっていて嬉しかった。
「あと二人増えたらどうやって……背中か!」
「いや、俺が抱っこするし……」
「キーチェがおんぶしてあげるー!」
リオウが王太子なんて辞めると駄々を捏ねたり、キーチェが大暴れしてティーゲの王宮の壁を壊したり色々な事件があったりしたが、あっという間に2人家族から7人家族になってしまった。
魔石の研究も進み、魔獣を命がけで狩る人が減っている。冒険者とか呼ばれる人たちからは不評だが、まだ田舎では魔石が必要だし、結局最初は狩って来ないといけないので職を失うところまでは行っていないらしい。ただ、先細りはしているので、違う職業に就く人たちは増えていると言う事だ。
「やはり世界は「平和」に向かったようだ。カイリは使命を果たしたよ」
「でも俺は大したことをしていない」
「カイリの撒いた種がなければ、研究所も何もかも生まれなかった。平和の種を撒くためにカイリは呼ばれた」
王宮の広い庭で子供達が元気に駆け回るのを見ながら俺とリオウは草の上の座って話をしている。結局リオウは王太子のままだし、俺は召喚された異世界人の上にリオウのつがいだし、魔石研究の第一人者だしという事で国外へは行かないでくれと懇願されている。
「リオウに会うためだったのかもしれないよ?」
俺が笑うと、リオウもくしゃっと破顔する。
「ああ、そう言ってもらえるととても嬉しい。カイリ、愛してるよ」
大きな手と太い尻尾を巻きつけて、喉をゴロゴロ鳴らしている。
「俺も愛してる」
二人で肩を寄せ合っていると、子供達が気が付いて走り寄ってくる。
「俺も俺も-!」「ぼくもー!」「わたしもー!」「きゃーっ」「にゃーーーん!」
「あっ!こらっ」
どさどさと俺とリオウの上に降ってくる子供達は元気すぎるほど元気な虎の子達で全員リオウそっくりだ。
「ねー母さん、俺、もっと兄弟いても良いと思うんだよね!」
キーチェがびっくりするようなことを言い出し、下の子供達が目をキラキラさせて俺を見上げてくる。
「えーっ!ケティに妹が増えるー!?」「クーにもー!?」
いやいや、待て待て。もう5人もいるんだぞ?虎族は子沢山が推奨されているが流石にねえ?
「こらこら、カイリの体の事もあるんだから。無理させるわけにはいかないだろう?……まあもっといてもいいとは思うけど……」
ちらっとこっちを見るリオウはなんだか期待に満ちた子供達と同じような目をしているから困ったものだ。
「で、出来たらね!?」
「避妊をやめたらすぐだろ……?」
「……」
ちょっと苦笑気味にリオウは言うが、確かにすぐのような気がする。何せ前例が前例だけにそんなことはないよといえない所だ。
「まあ、そうかも、だけど。子供はさ、授かり物だから欲しいって思っても上手く行かない時もあるし」
だから、来てくれたら全力で可愛がりたいし。
「みゃみゃー、しゃー、ねーたん?」
今の所一番下のサーシャが一番キラキラした目で見て来るなぁ。サーシャを抱き上げて
「さあ、どうだろうね?」
「しゃーもねーたん!」
真っ黒な髪の毛を撫でるとお日様の良い匂いがする。残りの4人はリオウに「お父さん登り」を敢行してるから、俺達家族は今日も仲良しだ。
「まあ、増えても悪くないよなぁ」
日本の事をたまに思い出したりするが、こちらの世界を捨てる事はもう出来ない。こっちに俺の幸せはあったんだから。
傷ついた事もあったけれど、俺は今、幸せだ!
終
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