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17 6年前に起こった事
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静けさを打ち破るのはやっぱり子供だった。
「僕のパパはおーじさまなのー!?」
「キーチェ!」
カイリが止めるより早くキーチェはピョンっとリオウに飛びついた。
「あ、ああ……多分、間違いなく。ほら、耳の形も尻尾もそっくりだろう?」
キーチェの目の前にぶおんと差し出された太い尻尾は確かにそっくりだとキーチェは目をキラキラさせた。
「ほんとだ!パパなんだ!わーーー!」
そして一呼吸おいてから
「あのね、パパ。抱っこしてくれる?」
「ああ、良いとも」
暫くキーチェははしゃぎ回っていたが、ヘンリーの息子達がやって来て連れ出して行った。きっとキーチェに聞かせられない大人同士の話をする必要があると配慮されたんだろう。
「好きだ、愛している」
「……」
「今も……君の無事を知って、居場所を知ってからずっと飛び掛かって押し倒したい衝動と戦っている。あの王都の広場の真ん中で君に口づけをして嬌声を上げさせたいと思っていた」
「……ッ変……態……」
「なんと罵られようと、君に触れたい。君を感じたい、抱きしめたい。愛し合いたい……だが、それ以上に君にこれ以上嫌われたくないんだ」
喉の奥から絞り出すような声が聞こえる。
「なんで……あの時、あんなことを?」
カイリは知らずのうちに自分の首筋に手を伸ばした。そこにははっきりとリオウに噛まれた跡が残っている。カイリの身体は間違いなくつがいであるリオウを求めているが、心が否定している。
「俺はずっとつがいを捜していた。でも見つからなかった。焦れて焦れて焦れて……。そしてあの夜俺のつがいは君だと確信した……自分自身を止められなかった。生まれてからずっと燻っていた思いを君にぶつけてしまった。とても申し訳ない事をしたと心から謝りたい」
「だからと言って……」
あれはないのではないか?とカイリは思い出しても寒くなる。あの圧倒的暴力の前に何も出来ずに凌辱され尽くした……思い出したくもない事だ。
「誰かに殴られ……ヒューとか言う奴だったらしいが、目を覚まして自分のしたことに青くなり、信じられなかった。そしていくら探しても君がいなかった……川に投げ捨てられたらしいと聞いた時は心臓が止まった」
「どういう、事なんだ?」
カイリはあの時どうしてああなったか、全くわからなかった。夜の庭で覆面の男達に襲われ、助けを求めたらその人物に手酷く襲われ……気が付いたらヘンリーの家のベッドの上だった。覆面男と襲ったこの目の前の人物は仲間ではないとは思ったが、真相は分からなかった。
「君と一緒に召喚された男がいただろう。ヒュー、と言ったかな。そいつが君を襲わせたらしい」
「!?なんでヒュー君が!?」
思ってもみなかった話にカイリは声を荒げた。何故だ??俺も聞いた話だが、とリオウは前置きをしてから話し出す。
「ヒューは自分が勇者だと言ったが、どうも力が足りなかったらしい。何をやっても上手く行かず、イライラした毎日を過ごしていたらしい。そして何を思ったのか、自分が与えらえたはずの力をカイリ、君に取られたと思い込んだ」
「なんだって……?俺はそんな勇者?特別な力なんてないぞ?」
リオウは少し考えこみ黙ったが、話の続きを教えてくれた。
「そして、一緒に来たカイリを殺せば、力が自分に戻ると思ったらしい……そうしてあの覆面男達を雇った。まあ正確にはヒューにそうしろ、と囁いた貴族の男がいたらしい。ヒュー一人じゃそんな汚い仕事を引き受けるような組織とのつながりなんてなかったからな。そして言われるままに王宮に男達を引き込み……まんまとカイリを庭に呼び出す事に成功した」
俺の背筋にゾクリと寒い物が走る。まさかヒュー君が、俺を殺そうだなんて、信じられない。
「たまたま召喚者に会いたいと思って訪問していた俺は助けを求める声を聞き、走り寄った……そしてカイリと出会った。俺は自制が利かず、カイリを手酷く扱い……様子を見に来たヒューに殴られて気絶した。そしてヒューはあの覆面達を起こし、カイリを王宮の外へ運び出し……川へ捨てたらしい。あれだけ大きなダメージを負っているのであれば川に突き落とせば死ぬだろうと……」
「僕のパパはおーじさまなのー!?」
「キーチェ!」
カイリが止めるより早くキーチェはピョンっとリオウに飛びついた。
「あ、ああ……多分、間違いなく。ほら、耳の形も尻尾もそっくりだろう?」
キーチェの目の前にぶおんと差し出された太い尻尾は確かにそっくりだとキーチェは目をキラキラさせた。
「ほんとだ!パパなんだ!わーーー!」
そして一呼吸おいてから
「あのね、パパ。抱っこしてくれる?」
「ああ、良いとも」
暫くキーチェははしゃぎ回っていたが、ヘンリーの息子達がやって来て連れ出して行った。きっとキーチェに聞かせられない大人同士の話をする必要があると配慮されたんだろう。
「好きだ、愛している」
「……」
「今も……君の無事を知って、居場所を知ってからずっと飛び掛かって押し倒したい衝動と戦っている。あの王都の広場の真ん中で君に口づけをして嬌声を上げさせたいと思っていた」
「……ッ変……態……」
「なんと罵られようと、君に触れたい。君を感じたい、抱きしめたい。愛し合いたい……だが、それ以上に君にこれ以上嫌われたくないんだ」
喉の奥から絞り出すような声が聞こえる。
「なんで……あの時、あんなことを?」
カイリは知らずのうちに自分の首筋に手を伸ばした。そこにははっきりとリオウに噛まれた跡が残っている。カイリの身体は間違いなくつがいであるリオウを求めているが、心が否定している。
「俺はずっとつがいを捜していた。でも見つからなかった。焦れて焦れて焦れて……。そしてあの夜俺のつがいは君だと確信した……自分自身を止められなかった。生まれてからずっと燻っていた思いを君にぶつけてしまった。とても申し訳ない事をしたと心から謝りたい」
「だからと言って……」
あれはないのではないか?とカイリは思い出しても寒くなる。あの圧倒的暴力の前に何も出来ずに凌辱され尽くした……思い出したくもない事だ。
「誰かに殴られ……ヒューとか言う奴だったらしいが、目を覚まして自分のしたことに青くなり、信じられなかった。そしていくら探しても君がいなかった……川に投げ捨てられたらしいと聞いた時は心臓が止まった」
「どういう、事なんだ?」
カイリはあの時どうしてああなったか、全くわからなかった。夜の庭で覆面の男達に襲われ、助けを求めたらその人物に手酷く襲われ……気が付いたらヘンリーの家のベッドの上だった。覆面男と襲ったこの目の前の人物は仲間ではないとは思ったが、真相は分からなかった。
「君と一緒に召喚された男がいただろう。ヒュー、と言ったかな。そいつが君を襲わせたらしい」
「!?なんでヒュー君が!?」
思ってもみなかった話にカイリは声を荒げた。何故だ??俺も聞いた話だが、とリオウは前置きをしてから話し出す。
「ヒューは自分が勇者だと言ったが、どうも力が足りなかったらしい。何をやっても上手く行かず、イライラした毎日を過ごしていたらしい。そして何を思ったのか、自分が与えらえたはずの力をカイリ、君に取られたと思い込んだ」
「なんだって……?俺はそんな勇者?特別な力なんてないぞ?」
リオウは少し考えこみ黙ったが、話の続きを教えてくれた。
「そして、一緒に来たカイリを殺せば、力が自分に戻ると思ったらしい……そうしてあの覆面男達を雇った。まあ正確にはヒューにそうしろ、と囁いた貴族の男がいたらしい。ヒュー一人じゃそんな汚い仕事を引き受けるような組織とのつながりなんてなかったからな。そして言われるままに王宮に男達を引き込み……まんまとカイリを庭に呼び出す事に成功した」
俺の背筋にゾクリと寒い物が走る。まさかヒュー君が、俺を殺そうだなんて、信じられない。
「たまたま召喚者に会いたいと思って訪問していた俺は助けを求める声を聞き、走り寄った……そしてカイリと出会った。俺は自制が利かず、カイリを手酷く扱い……様子を見に来たヒューに殴られて気絶した。そしてヒューはあの覆面達を起こし、カイリを王宮の外へ運び出し……川へ捨てたらしい。あれだけ大きなダメージを負っているのであれば川に突き落とせば死ぬだろうと……」
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