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8 リュックいっぱいの干し肉を

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「キーチェはパパに会いたいか?」

「ぜーんぜんっ。パパなんて嫌いだもん。あったら蹴飛ばしちゃうかも!」

「そうか」

 今日も泥だらけになって遊んで帰ってきたキーチェを風呂に入れながら聞いてみたらニコニコと笑ながらそんなことを言った。
 更に夕飯の時間には大興奮で

「パパなんてコテンパンにしちゃう!」

「おいおい、ハンバーグは振り回すな」

「へへっ!」

 最近育ち盛りのキーチェは肉をどんどん食べる。パンを入れてかさましした手のひら位のハンバーグを6個ぺろりと食べて一緒にベッドに入って眠る。

「パパより僕がうんと強いんだからね!」

「ああ、キーチェは強いからなあ。俺より強いしなあ」

「でしょう!」

 さっきまで喋っていたのに、ストンと寝てしまい隣でスヤスヤと寝息を立てるキーチェ。

「うにゃ……パパ……」

「……」

 ヘンリーの息子達がヘンリーにじゃれついているのをじっと見ていた事も知っている。ヘンリーに叱られてしょんぼりと耳を垂らしているのを見ていた事も。俺が父親の事を話さないから、気を使って聞いてこない事も。

「……パパ、か」

 怖い、はっきり言って会うのは怖い。でもキーチェは父親と会いたいと思っている。会いたくない会いたくないと言いながらあれほど口にするのは会いたいからだろう。

「……キーチェに見せるくらいなら問題ないかもしれない」

 そうだ、こっそり見に行ってみよう。王太子って言うくらいだ、きっと国の真ん中の王宮にいるに違いない。
 でも見る事は出来ないだろうな、何かの挨拶で姿をチラリと見れたら良いな。


 俺はキーチェを連れて旅に出る事にした。

「うわーー!旅!楽しそう!」

「そうだな」

 旅なんかした事ないからキーチェも嬉しそうだ。

「ヘンリー、その間の充電ステーション頼むよ」

「お、俺なんかが出来るのか?!」

「ヘンリーの魔力を充電ステーションに登録したから大丈夫。朝一回、起動に魔力を流してスイッチを押すだけ。簡単だろ?」

 一度やって貰うと何なく出来た。

「はぁー!こんだけ?!」

「うん。今の所、俺とヘンリーしか動かせないからね。壊れたら……俺が戻るまでまってて貰うしかないなぁ」

「カイリ、早く戻ってこいよ」

「そのつもりだ」

 ヘンリーの目が真剣だった。まさか出て行って帰ってこないつもりじゃないよな?!と強く聞いてきている気がする。勿論俺はこの町の暮らしが気に入っているから、戻ってくるつもりだ。
 その王太子の探索とやらがこの町を探し終え、ほかの町に行ったら何食わぬ顔顔で帰ってくる、そう言う作戦だ。

「そうと決まれば……干し肉くれてやる!旅には干し肉だよな!」

「肉ー!」

「ヘンリー、人族の俺にあのジャーキーみたいな干し肉は固すぎるよー」

「キーチェが食うだろ!いっぱい持っていけ!」

 俺達はリュックサックに大量の干し肉を詰め込んで、住み慣れた町を後にした。

「ねーママ、どこに行くのー?」

「どこだと思うー?」

 みんな暖かく見送ってくれたし、干し肉もいっぱいくれた。そんなに食えるかなあ??

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