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6 新しい生活
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「カイリ!」
「ああ、ヘンリー。どうした?魔石のパワー切れ?」
「それもあるけど、キーチェ大きくなったなぁ」
「もう流れ着いてから6年になるからね」
ビーグル犬みたいな垂れ耳のヘンリーから俺はカウンターの上に出された3つの魔石を受け取り、少しだけ思い出していた。
6年前、俺が目を覚ましたベッドはこの犬獣人のヘンリーのベッドで、目を開けるとヘンリーと奥さんのマリーが心配そうに覗き込んでいた。
「あ!目を覚ましたよ!大丈夫かい?キミ」
そこから俺達の付き合いは始まった。俺の身に起こった事は俺にもよく分からなかったが、俺はどうやらどこか川の上流で捨てられ、運良く川岸に打ち上げられ……朝の散歩をしていたヘンリー夫妻に拾われたって事だった。
そして俺の、特に下半身に起こった事については医者を呼んでくれて詳しい診察を受けさせてくれた。
「……妊娠しておられますね」
「は?」
「つがい契約も済んでいる……」
「うー……」
俺は色々悩んだが、悩んでいるうちにどんどん腹は膨れてくるし、何だか腹の子供を殺すなんて出来っこなくて産んでしまった。
「みゃーみゃー!」
「あ、あは、あはは。猫の子みてぇ」
「色はカイリそっくりよ!」
つがいの姿が見当たらないオメガの俺は苦労も沢山した。ヘンリー達に迷惑も沢山かけた。でもある日俺は魔石の加工ができる事に気がついたんだ。
魔石は魔物から取れる核で所謂「乾電池」だ。たくさんの道具の動力になっているんだけれど、この世界で魔石は使い捨てだった。磨いたり手入れすれば長く使えるというので、魔石の手入れをする仕事をしていたら
「……「充電」出来る気がする」
そう、俺はどうも「乾電池」を「充電池」にすることが出来るようなのだ。そして2年以上研究して充電ステーションも作る事に成功したんだ。そこから俺の生活は楽になったし、迷惑をかけまくったヘンリー夫妻に恩を返せるようになっていった。
「よいしょ」
充電ステーションに俺が「充電池化した魔石」を置く。そしてスイッチを入れれば15分ほどでフル充電だ。
「はぁ~ほんとこれ便利だよなあ」
「うん、俺にこんな能力があったなんて知らなかったよ。このおかげで飯にくいっぱぐれずに済むしな」
ヘンリーが持ってきた充電池にした魔石だって、一個5000ゴールド位するものだ。1ゴールドは1円くらいだから5000円の電池を使い捨てにするのは結構辛い。でも魔石がないと出来ないことが多すぎてこの町の人は魔石を買うのにかなりの資金を使っていた。
そこに俺の登場だ。最初は魔石の研磨の仕事をしていた。それだけでも俺は結構いい腕だと認められ、そこそこの給料を貰えた。俺が魔石を磨いて整えれば寿命が倍になるっていうんだからいい仕事が出来るようになったな、って喜んでたんだ。
「キーチェ!今日はお肉だぞー!」
「みゃーん!おにきゅー!」
初めてまともな給料を貰った日にはキーチェと肉を食ったし、少し余裕ができ始めてやっとヘンリーの家の間借りからボロ家だけど一軒家に移った……ヘンリーんちの隣の隣の家だったけど。
「カイリー!キーチェ!でてくなああああっ居ろよおおおっ!」
ヘンリーとマリーの子供達は泣きながら止めてくれたけど、隣の隣に引っ越したら
「泣いて損したーっ!」
って怒ったなあ。ちなみにヘンリーとマリーは犬の獣人なので子だくさんである。みんな似た顔で可愛い。キーチェの良き兄弟だ。俺の仕事が中々なくてその日食うものも稼げなかった時にこいつらは自分の食い物を減らしてまでキーチェに飯を分けてくれた。キーチェと3.4歳しか違わないガキ共がだぞ!?
ホント俺はヘンリー一家に頭が上がらない。胡散臭い俺を匿って、町の人達を説得したり宥めたり……。
「お、出来たかな?お代は」
「ヘンリーから金取れるわけねーだろ!馬鹿にすんな」
俺はやっと平和な日常を手に入れたんだ。
「ああ、ヘンリー。どうした?魔石のパワー切れ?」
「それもあるけど、キーチェ大きくなったなぁ」
「もう流れ着いてから6年になるからね」
ビーグル犬みたいな垂れ耳のヘンリーから俺はカウンターの上に出された3つの魔石を受け取り、少しだけ思い出していた。
6年前、俺が目を覚ましたベッドはこの犬獣人のヘンリーのベッドで、目を開けるとヘンリーと奥さんのマリーが心配そうに覗き込んでいた。
「あ!目を覚ましたよ!大丈夫かい?キミ」
そこから俺達の付き合いは始まった。俺の身に起こった事は俺にもよく分からなかったが、俺はどうやらどこか川の上流で捨てられ、運良く川岸に打ち上げられ……朝の散歩をしていたヘンリー夫妻に拾われたって事だった。
そして俺の、特に下半身に起こった事については医者を呼んでくれて詳しい診察を受けさせてくれた。
「……妊娠しておられますね」
「は?」
「つがい契約も済んでいる……」
「うー……」
俺は色々悩んだが、悩んでいるうちにどんどん腹は膨れてくるし、何だか腹の子供を殺すなんて出来っこなくて産んでしまった。
「みゃーみゃー!」
「あ、あは、あはは。猫の子みてぇ」
「色はカイリそっくりよ!」
つがいの姿が見当たらないオメガの俺は苦労も沢山した。ヘンリー達に迷惑も沢山かけた。でもある日俺は魔石の加工ができる事に気がついたんだ。
魔石は魔物から取れる核で所謂「乾電池」だ。たくさんの道具の動力になっているんだけれど、この世界で魔石は使い捨てだった。磨いたり手入れすれば長く使えるというので、魔石の手入れをする仕事をしていたら
「……「充電」出来る気がする」
そう、俺はどうも「乾電池」を「充電池」にすることが出来るようなのだ。そして2年以上研究して充電ステーションも作る事に成功したんだ。そこから俺の生活は楽になったし、迷惑をかけまくったヘンリー夫妻に恩を返せるようになっていった。
「よいしょ」
充電ステーションに俺が「充電池化した魔石」を置く。そしてスイッチを入れれば15分ほどでフル充電だ。
「はぁ~ほんとこれ便利だよなあ」
「うん、俺にこんな能力があったなんて知らなかったよ。このおかげで飯にくいっぱぐれずに済むしな」
ヘンリーが持ってきた充電池にした魔石だって、一個5000ゴールド位するものだ。1ゴールドは1円くらいだから5000円の電池を使い捨てにするのは結構辛い。でも魔石がないと出来ないことが多すぎてこの町の人は魔石を買うのにかなりの資金を使っていた。
そこに俺の登場だ。最初は魔石の研磨の仕事をしていた。それだけでも俺は結構いい腕だと認められ、そこそこの給料を貰えた。俺が魔石を磨いて整えれば寿命が倍になるっていうんだからいい仕事が出来るようになったな、って喜んでたんだ。
「キーチェ!今日はお肉だぞー!」
「みゃーん!おにきゅー!」
初めてまともな給料を貰った日にはキーチェと肉を食ったし、少し余裕ができ始めてやっとヘンリーの家の間借りからボロ家だけど一軒家に移った……ヘンリーんちの隣の隣の家だったけど。
「カイリー!キーチェ!でてくなああああっ居ろよおおおっ!」
ヘンリーとマリーの子供達は泣きながら止めてくれたけど、隣の隣に引っ越したら
「泣いて損したーっ!」
って怒ったなあ。ちなみにヘンリーとマリーは犬の獣人なので子だくさんである。みんな似た顔で可愛い。キーチェの良き兄弟だ。俺の仕事が中々なくてその日食うものも稼げなかった時にこいつらは自分の食い物を減らしてまでキーチェに飯を分けてくれた。キーチェと3.4歳しか違わないガキ共がだぞ!?
ホント俺はヘンリー一家に頭が上がらない。胡散臭い俺を匿って、町の人達を説得したり宥めたり……。
「お、出来たかな?お代は」
「ヘンリーから金取れるわけねーだろ!馬鹿にすんな」
俺はやっと平和な日常を手に入れたんだ。
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