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いいえ、メイドです
29 分かち合える非常識
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「ひぇ……」
人が海の上を歩ける事をその日初めて知った。
魔物って以外と手で引っ張れば千切れる事も。
魔法って発動より早く殴れば発動出来ないって事とか。
剣は当たらなければ……。
「非常識!非常識!!」
「常識って何だろうって思う事は良くある。しかし、「それが目の前で出来る人間」がいる非常識だ」
「いやでも、限度がある!」
私はやっと話の分かる友人を得た気持ちになれた。目の前の非常識を非常識とはっきり言い切れる人間は貴重だ。
このルカと言う少年は素晴らしいな!
「出来る出来ないじゃなくて「する」んだって」
「いやああああーー!」
そう!この反応だよ、この普通の反応だよ!周りがおかしいんだよ、やはり。
変な雄叫びをあげながら、ヒューバード殿は海の上で何かを撒き散らしている。
「いやぁ、大量っスねぇ」
「今日も美味い飯が食えそうだなぁ」
鼻歌を歌いながら、この船の海兵達が千切られた魔物を集めている。
「価値の無いところはすぐ海に捨てて、次の奴の餌にしとけよー」
「アイアイ!キャプテン」
駄目だ、この船の乗組員は全員非常識に両足を突っ込んで麻痺している。
「な!兄さん、そうだろう?!おかしいだろう」
「ありがとう、少年。君は正しい!」
「そう言う兄さんもおかしいからね?!何で飛んでくる魚を指で摘めるの!」
いや、こいつ鼻先が尖ってて刺して来る凶暴な奴だから、危ないだろ?
「殺気かな。まあ……きっと君達もすぐ覚えるよ……特にアサリ君達は念入りに教え込まれるさ」
「アサリ?」
しまった。まあここまで来たらもう大丈夫だろう。
「王族、貴族と言うものは時に大きな責任と行動を取らねばならないからね。草民の為矢面に立つ事も必要だし、巨大な魔物を狩らねばならん時もあるし、メイドの言う事には取り敢えず従っておかなければならない事もある」
「……メイドってもしかして、あの人達の事?」
ルカ君も会ったことがあるのだろうか。少年少女は顔を見合わせるが、多分そのメイドだと思うぞ。
「お兄さんも貴族なの?」
アサリ、うん、ユーノと言ったかな?少女が私に尋ねる。
「ああ。馬鹿な貴族だったが、今は少しまともになった気がするよ」
「名前を、聞いても?」
アサリ少年。確かユーシスだったね。まあ、名乗っても特に問題はないだろう。
「ノルド・ヴェルデと言う。君達の兄上の婚約者になったのは私の妹だよ。そしてあのメイド達が仕えているのが、妹さ。妹にかなり苦労をさせてしまったからね、その罪滅ぼしの一環だよ」
「あのおんな……いえ!あの人の……」
「色々やらかしたんだろう?ナイトレイ殿に感謝さるんだよ。彼という兄上がいなかったら、君達も強制キャンプにぶち込まれていただろうからね」
「き、強制……っ!」
私の口調で危険な風を読み取ってくれたようで重畳。
「早く強くなるんだ。後々の方が辛くなるよ……逃げる事は考えない方が良い。ますます辛くなるからね」
少年少女の顔色がますます悪くなったけど、怪我一つまだないのだからキャンプは始まってもいないんだぞ。
人が海の上を歩ける事をその日初めて知った。
魔物って以外と手で引っ張れば千切れる事も。
魔法って発動より早く殴れば発動出来ないって事とか。
剣は当たらなければ……。
「非常識!非常識!!」
「常識って何だろうって思う事は良くある。しかし、「それが目の前で出来る人間」がいる非常識だ」
「いやでも、限度がある!」
私はやっと話の分かる友人を得た気持ちになれた。目の前の非常識を非常識とはっきり言い切れる人間は貴重だ。
このルカと言う少年は素晴らしいな!
「出来る出来ないじゃなくて「する」んだって」
「いやああああーー!」
そう!この反応だよ、この普通の反応だよ!周りがおかしいんだよ、やはり。
変な雄叫びをあげながら、ヒューバード殿は海の上で何かを撒き散らしている。
「いやぁ、大量っスねぇ」
「今日も美味い飯が食えそうだなぁ」
鼻歌を歌いながら、この船の海兵達が千切られた魔物を集めている。
「価値の無いところはすぐ海に捨てて、次の奴の餌にしとけよー」
「アイアイ!キャプテン」
駄目だ、この船の乗組員は全員非常識に両足を突っ込んで麻痺している。
「な!兄さん、そうだろう?!おかしいだろう」
「ありがとう、少年。君は正しい!」
「そう言う兄さんもおかしいからね?!何で飛んでくる魚を指で摘めるの!」
いや、こいつ鼻先が尖ってて刺して来る凶暴な奴だから、危ないだろ?
「殺気かな。まあ……きっと君達もすぐ覚えるよ……特にアサリ君達は念入りに教え込まれるさ」
「アサリ?」
しまった。まあここまで来たらもう大丈夫だろう。
「王族、貴族と言うものは時に大きな責任と行動を取らねばならないからね。草民の為矢面に立つ事も必要だし、巨大な魔物を狩らねばならん時もあるし、メイドの言う事には取り敢えず従っておかなければならない事もある」
「……メイドってもしかして、あの人達の事?」
ルカ君も会ったことがあるのだろうか。少年少女は顔を見合わせるが、多分そのメイドだと思うぞ。
「お兄さんも貴族なの?」
アサリ、うん、ユーノと言ったかな?少女が私に尋ねる。
「ああ。馬鹿な貴族だったが、今は少しまともになった気がするよ」
「名前を、聞いても?」
アサリ少年。確かユーシスだったね。まあ、名乗っても特に問題はないだろう。
「ノルド・ヴェルデと言う。君達の兄上の婚約者になったのは私の妹だよ。そしてあのメイド達が仕えているのが、妹さ。妹にかなり苦労をさせてしまったからね、その罪滅ぼしの一環だよ」
「あのおんな……いえ!あの人の……」
「色々やらかしたんだろう?ナイトレイ殿に感謝さるんだよ。彼という兄上がいなかったら、君達も強制キャンプにぶち込まれていただろうからね」
「き、強制……っ!」
私の口調で危険な風を読み取ってくれたようで重畳。
「早く強くなるんだ。後々の方が辛くなるよ……逃げる事は考えない方が良い。ますます辛くなるからね」
少年少女の顔色がますます悪くなったけど、怪我一つまだないのだからキャンプは始まってもいないんだぞ。
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