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いいえ、メイドです

21 王への道は厳しい

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「ただいま戻りました!」

「……?!ジョルジュ……ノイマン……?」

「はいっ!不肖ジョルジュ・ノイマンでございます!ナイトレイ殿下!ヘイルズ国への最後通牒を預かるべくやってまいりました!」

 ナイトレイ殿下は驚かれつつも手紙を手渡してくれた。確かに私はここの所のレラさんの教育のお陰で少し変わったかもしれないな!はっはっはっ!

「で、では副提督ジョルジュ。この手紙を10日程でヘイルズの王宮に届けて欲しい……」

「いやなに!三日程で参りますよ!海も泳げるし空も飛べる飛び鰐の群れを見つけましたからね!こんな海など丸一日で泳ぎ切ります!はっはっは!」

 たかが隣国へ行くのに10日もかけていたような軟弱者など、もう我が海軍にはおりませんよ!

「た、頼もしい限り、だよ。ジョルジュ」

「はい!行ってまいります!はっはっはっは!」



 体つきが変わったとか、顔つきが変わったとかそう言う問題でなく、何か全てが変わってしまったジョルジュをナイトレイは口を閉じることを忘れて見送った。

「……我が海軍に何が起こった……?」

 はははは!!大きな笑い声がして、先程見送った筈のジョルジュが腕を組んだままの仁王立ちで海の上を滑って行く。

「まあ、面白いですわね」

 アルカンジェルはそれを窓からみてにこにこ笑っているが、目を擦ってもジョルジュは単身で海の上で笑いながら高速でヘイルズ方面に向かっていた。あっという間に視界から消えてしまう。

「あ、アルカ。今ジョルジュが船にも乗らず、たった一人で海の上を移動していたように見えたんだが、私は疲れているのだよな?」

 きょとん、とした顔の婚約者を見て「あ、これは私が理解出来ない奴だ」と瞬時に判断した。

「水の上を滑っているように見えて下に、運んでくれる何かがいるそうですわ、レイ様。我が家の使用人もほとんど出来ますわ、楽しそうですわよね」

「そ、そうか。使用人も出来るなら、海軍副提督なら出来ない訳がないな」

「ええ!わたくしにも教えて欲しいのですが、無理だと言って教えてくれないのです。レイ様もレミ達に習ってみては?」

 なんて恐ろしい事を!と、思いつつもあの海軍の上に立つにはやはり必要なことかも知れない。

「あ、ああ。暇を見て稽古をつけて貰おうかな」

 これも立派な王になる為の試練に違いないと、拳を強く握る。きっとお守りのハンカチが自分の命は守ってくれると信じて。

「王とはなんと厳しい道なのでしょうね、アルカ」

「でもレイ様なら立派にやり遂げると信じております」

 頑張ってやり遂げられるものだと信じたい。
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