【完結】わたくしは悪役令嬢？転生メイドがざまぁして幸せになります！

25 帰宅

「お嬢様、すみません。私達とした事が少し油断をしていました。早急に排除致しますから、お耳を少し塞いでいただけると嬉しいです」

「どうしたの？」

　楽しかったお出かけからの帰り、少しだけ懐かしい我が家の側まで来た時にレミとレラが厳しい顔をしました。
　ゆっくりとは言え、走っている馬車の扉を開けて、レラがふっと消えます。

「レミ！レラが落ちたわ！！大変よ！！」

「大丈夫です。ちょっとジャンプしただけですから」

　冷静に開いた扉を閉めるレミ。わたくしはオロオロしてしまいますが……。

「レミが大丈夫だと言うのなら、大丈夫。なのですね？」

「その通りですございます、お嬢様」

　ぺこりと頭を下げてそして笑顔。ああ、この笑顔は何にも増して安心して信じられる笑顔ですわ。
　わたくしの乗っている馬車が道の隅の方に避けて走っていると前方から一台の豪奢な馬車が、物凄い勢いで走って来ました。あ、あれは馬が暴走しておりませんか？！

「アルカンジェル・ヴェルデぇーーー！俺様がぁーーーわざわざぁーーーー！」

「い、今のは帝国からいらした留学生の方では？」

　すれ違い様、ものすごい声で男性が叫んでいる様に聞こえました。あの方は学園で何度か顔を合わせた事がある留学生の方ですね。確か、東の帝国の方から来られた方だと記憶しております。

「また来るぅーーーーー！！！」

　馬がー！御者が叫び声を上げながら、制御不能になった馬車を立て直そうと慌てていますが、見る間に馬車は遠ざかってしまいました。

「あ、お嬢様。邪魔な来訪者も居なくなりましたし、帰りましょう」

「え、でも暴れ馬車は危険ではありませんか？」

　街の人が轢かれたら大変ですわ。

「レラが少し馬に刺激を与えただけですから、大丈夫ですよ」

「まあ……そうなの？では、大丈夫ね」

　勿論ですとも。レミとそんな話をしていると、少し懐かしく感じる我が家へ到着致しました。

「アルカンジェルお嬢様、お帰りなさいませ！少しばたついていて出迎えが遅れました。申し訳ございません」

　皆が笑顔で迎えてくれて、やはりホッとしてしまいました。

「どうしたのですか？先程の馬車の方が何か？」

　馬車から降りながら、執事長に聞いてみると、形の言い髭を怒りに震わせました。

「帝国の王子だかなんだか知りませんが、お嬢様に合わせろと何度も連絡もなしに押しかけまして。非常に不愉快な御仁でした」

「まあ……もしかしてエルード様ですか？」

「名前も言わぬ方でした。ただ帝国の王子だと。大変に失礼で横柄な言い分に我々もほとほと困っておりました」

「もう来ませんから、安心してくださいな、執事長」

　あら？わたくしの後ろについて来ているレミがにっこり笑います。

「ほっほ！それは重畳。助かりますよ、レミ」

　きっとこれも大丈夫なのね？屋敷の者達を困らせてはいけません。ホリデーはまだ続きますが、学園が始まったらエルード様にはやめていただくようお願いしませんと。

「さあ、お嬢様お疲れでしょう。ゆっくりして下さい。ノルド様達はまだお戻りになりませんので、屋敷の者は少ないですが、何も問題ありませんよ」

「まあ、ありがとう。そうさせて貰うわ。お兄様達はどうなさったの？」

「街道で魔獣を狩りながらお帰りになります。魔獣が減れば皆、安全に旅ができますから」

　あら、素敵だわ！流石お兄様ね。わたくしは慣れ親しんだ我が家でゆっくりとお風呂に浸かり深い眠りについたのでした。