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12 どうしたと言うのだ(リース殿下視点

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 ノルドが久しぶりに学園にきた。なにやら家の都合とかで一ヵ月前後、休んでいたのだ。

「ノルド、久しぶりだな」

「ええ、お久しゅうございます、リース殿下」

「ノルド?」

「何でございますか?」

 目の前にはノルドがいる。しかしなんだろうこの違和感は。以前のノルドは何かが違う、そんな気がする。みればノルドは顔つきが鋭くなっている気がする。たった1か月会わなかっただけなのに、顔つき目つき、体つき、全てが何か違う。

「気のせいか……」

 私はそれが何なのか、まるで見当もつかなかった。

「あーーノルド!久しぶりぃ~!」

 マリリーがノルドを見て走ってくる。マリリーは本当に無邪気だ。少女のような笑顔に私はいつも心が癒される。しかし、いつも私と一緒にそんなマリリーを見ていたノルドの目つきは変わってしまった。まるで汚い物を見るかのようにマリリーに鋭い視線を投げつけた。

「殿下、それでは私は失礼致します」

「ノルド?」

 マリリーに挨拶もせずにノルドは背を向けた。ど、どうしたんだ?ノルド。お前もマリリーの事は気に入っていただろう?

「待ってぇ~ノルドぉ~どこいくのお~~~」

 去って行くノルドに追いすがり、腕を絡ませようと伸ばしたマリリーを後ろを振り返る事もなく、ノルドはさっと避けた。

「え」

「やめていただきたい、ここは学園です。婚約者でもないのに迷惑です」

「ノ、ノルド……?」

「それと私の事はヴェルデ公爵令息と。名前で呼ぶのも今後やめていただく。私を名前で呼ぶ女性は妹と婚約者殿だけで結構」

「は!?ノルド何を言っているの!?」

 ど、どうしたんだ?あんなにマリリーに名前を呼んで欲しいとお願いしていたのに、一体!?

「ノルド、本当にどうしたんだ?」

 私が声をかけると、ノルドは自嘲気味にほほ笑んで

「私とて公爵家の一員なのです。我が公爵家を支えていかねばならない、やっとそのことに気づけただけです」

 そしてノルドは私達にくるりと背を向ける。ノルドが向かう先には婚約者のラファエラ・カトリウム侯爵令嬢が立っていた。

「ごめん、待たせたね、ラファ」

「本当にノルドったら……。やっと公爵令息らしくなったじゃない?」

「ふふ、うちにはこわーい鬼みたいなメイドが二人もいるんだ。きっちり扱かれたよ」

 優雅にラファエラの手を取り、その指先に軽く口を寄せる。動きも上品で洗練されている。あのノルドがそんなことが出来るはずがないのに!


 しかし、その日からノルドは別人になったようだった。座学は真面目過ぎるほど真面目に受け、剣術は私より劣っていたと思ったのに、

「ヴェルデ、腕を上げたな」

「付け焼刃ですが、少し訓練を受けました」

 教官に褒められるほどだった。魔術を使えばやはり素晴らしく。

「弓で追い立てられながら魔法を使わなくてよいなんて楽なものだな……」

 ダンスのレッスンも

「ヴェルデ君、素晴らしいです」「重しがない……足に羽が生えたようだ」

 マナーも

「完璧です、ノルド・ヴェルデ」「失敗しても命が保証されているとは……」

 別人と言っても過言ではない。そして

「お兄様」

「ああ、アルカンジェル。一緒に帰りたいのだが、今日はラファエラと勉強してから帰るよ。先に帰ってくれ」

「畏まりました。ラファエラ様によろしくお伝えください」

「今度、ラファエラが我が家に遊びに来たいと言っていた。ぜひ一緒にもてなして欲しいんだが、頼めるか?」

「勿論でございます!お兄様」

「ありがとう、アルカンジェル。流石自慢の妹だ」

 一番変わったのはアルカンジェルに対する態度だ。なんだあの麗しい兄妹愛は!今までのノルドなら顔すら見なかったのに。一体どうしたと言うのだ!?

「学園は……いいな、監視が……ヒッ!?」

 大きな木をみて青くなっている。どうしたというんだろうか……。

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