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マリナデット・ウィフラート

47 ダレンの後始末

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 俺は第二王子だ!それなのにこの扱いはなんだ!

「こいつのせいで……」

 すれ違う文官全てからそんな言葉をぶつけられた。俺が何をしたっていうんだ!

「マリナデット・ウィフラート様を侮辱した。マリナデット様がこの国を出る原因を作った!ぼんくらだけならまだしも、ここまで悪害とは。王も王太子も自分の失策に頭を抱えているだろうよ!」

 マリナマリナマリナ!どこへ行ってもマリナの話ばかり!そして城中バタバタと駆け回る者だらけでうるさい!

「もう少し静かに出来ないのか!見苦しい!」

「黙れ!お前のせいで……」

「馬鹿っ!そんなボンクラに構ってる時間なんてない!急いで親書を作らねば!」 

「ああ!くそっマリナデット様が不在なのが分かった途端、掌を返しやがって!」

 文官と騎士が大量の書類を持って走り回る。なんだ?一体どうしたんだ?周りを見ると、歩いているのは俺だけだ。

「急いで!食料の備蓄は?!」

「駄目です、誰も分かりません!」

「マリナ様なら確実にかなり籠城できる量を確保しているはずです!探しなさい!」

「大変です!副料理長がいません!」

「なに?!この期に乗じた?!まさかマッシュは間者だったのか?!」

「金融官僚が逃げました!家ももぬけの空です!」

「財政大臣が国境付近で拘束されました!重要書類を手にしていたそうです」

「騎士団!武具の確認を!くそっしばらく平和が続いて腑抜けたか!」

「ウィフラート宰相閣下!辞任の意向!」

 何が起こっているんだ?我が城は?まるで戦争が始まるようではないか……?

「そ、そうだ。父上……父上にお聞きすれば……」

 やっと聞き出せば父上は大会議場にいるらしい。

「邪魔だ!」「どけっ!」

 突き飛ばされ、悪態を突かれ。それでも俺は父上が座する大きな部屋にたどり着いた。おかしい、なんだこの緊迫した様子は?何が起こっているんだ?我が国に。

「ちちうえ……」

 声をかける前に、扉が乱暴に開いて俺は突き飛ばされる。

「お前っ!俺に向かって、なんて事ぉ」

「交渉決裂!交渉決裂!我が国と南のザーヴァ帝国は開戦状態に入ります!」

「やはり、マリナデットが居らんと頷いてはくれなんだか……」

「お伝えします……「マリナちゃんが居ない貴国に価値なし。ザラへ遊びに行く為に邪魔なので踏み潰させて頂く」との事でございます……っ」

「くっ……!マリナデットはどこまで人たらしなのだ!」

 だぁん!と机を打つ父上の拳の音が響き辺り、皆静かになる。

「父上……?」

「ダレンか。何しに来た?」

 何の感情もない目で見られ、俺は魂の底まで震え上がった。人はここまで表情がなくなるものだろうか?
 顔色は死人とほぼ同じ、目の下はクマがくっきり出ているのに、目だけが異常にギラついている。人というよりモンスターといった方が近い。

「あの、父上、わ、私は何をすれば……」

「何もするな」

「え」

「お前を自由にさせて置いてこれほど後悔する事があろうとはな?どうだ?お前の思った通りか?この国を潰し、国民を犠牲にし、我々の首を切り離し並べたかったのか?叶うぞ、お前の望み。帝国に我が国が叶うわけなかろう?
 粗方の猛者どもはギラへ投降済み、ウィフラート家はもうおらん。良かったな、マリナデット一人捨てるだけでここまで出来るお前の才覚に驚きを隠せぬよ」

「父、上……?」

 立ち上がり、指示を出す。

「我が首一つで納めては貰えぬだろう。チェイニーはケイトニーを伴ってザーヴァへ使者に立て!ケイトニーが居れば生き残れよう。残りの王子はザラのマリナデットを頼れ。妃は……」

「残りますわ」

「すまん」

「ち、父上!俺は今更、マリナデットに頭など下げられん!!」

 何だよ!そのマリナデットを頼れって!あんなデカイだけの女が何の頼りになるんだよ!あり得ないだろう!

「お前はどこへでも行けダレン。お前に声をかける時間さえ惜しい。お前はとっくの昔に王子でもなんでもないのだからな」

「え……?」

 俺が王子でないってどう言う事なんだ??
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