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マリナデット・ウィフラート
45 お前はクビにゃん!
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「お、王太子様!お助けください!!」
「……フェブル伯爵、まだいたのか。支払いが滞っておるぞ。早く賠償金を支払い罪を清算すると良い」
「そ、それが!ありえないほどの金額が請求されておりまして!我が家に商人を名乗る無法者が現れ、全て差し押さえると暴れておるのです!お助けください!」
王太子のメディオは一瞬目を上げたが、めんどくさそうにため息をし、
「その方が期日までに払わないのが悪い」
それだけいって、無茶振りされた書類に目を戻す。とても分かりやすく効率的に書かれた書類だが、何せ数が多い。処理しても処理しても書類は増えてゆく、謎だ。
「わ、私が着服したとされる金額もおかしいですが、追徴金なるものが更におかしい!なぜ一週間遅れただけで元の10倍になるのですか!」
「最初に渡した紙に書いてあったろう?それなのにそれを無視し、一週間遅らせた方に問題がある」
ペンも書き味の良い物に代わっている。
「王太子たるもの、小物にも気を使っていただかないと。しかも安物の輸入品などもってのほか!ドワーフ民芸の美しい物を使ってください。こちらをどうぞ。お色が良くお似合いですよ」
確かに使っていて疲れないし使いやすく手に馴染む。書類の効率も上がった……ような気がする。このような美しい細工が国内にあったとは知らなかったし、執務机周りもきれいに整頓されるようになった。
「机の乱れは書類の乱れです。多くとも、ただ積み上げるだけの書類はよくありませんよ」
一理はあると思う。インクも良い物を使い始めた。更に効率が上がった気がする。マリナデットの仕事は大きなものから小さなものまで幅広いが、どれも良い結果を出している。やはり手放せない人材だ。
「たった一週間ですよ!」
「フェブル伯爵。たった一週間と言うなら問おう、たった一週間、なぜ用意できんのだ?人には待てと願うくせに自分はできんと言うその惰弱、認めるわけにはいかん」
「うううう……」
反論も出来ずにフェブル伯爵は唸り声をあげる。こいつがマリナデットが決裁した書面に勝てるわけがない。
「しかし!金額が!」
「正式なものだ。もっと調べようか?多分その1.5倍には増えると思うが?」
「ううう……!」
お願いします、とは言えないようだ。とメディオは書類へサインをする。身に覚えがあるんだろう。
「そ、それにしても差し押さえが過ぎます!屋敷の物全てとは納得できません!」
「払えなければ差し押さえられる。当たり前ではないのか?」
「しかし、そんなことをされれば我がフェブル家は立ち行かなくなります」
立ち行かなくなっても良いからそのような書類が出来たのだがな、メディオは声には出さない。
「しかし、良いのか?フェブルよ。お前がここでこうして埒も開かない文句を私にぶつけているこの一時ですら、追徴金は増えているのではないか?元の金額が大きいがゆえに、少しでも長引くとありえないくらい増え続けるぞ。その身を奴隷として売りに出さねば足りなくなっても、私は助けはせん。なにせ、正しい取り立てなのだからな」
最初から明記してあるし、何度も念を押した。莫大な賠償金を期限までに返すようにと。それを書類をよく読みもせず、期限を破ったのはそちらの都合だ。それをどうして庇いだてができようか?
「あの方は必ず王太子に泣きついてきます。しっかり切捨てるように」
マリウスの言ったとおりになり、少し寒気すら覚える。
「見ればわかりますよ」
そういうが彼?彼女はフェブル伯爵に会ったことはなく、彼の書いた書類しか見た事がないはずであるのに、どうして彼の性根がそこまでわかってしまうのか不思議だった。
「そういう書類の書き方をしていらっしゃる方ですので」
書類一つでそこまでわかってしまうのか、とメディオは書類の書き方を改めたものだった。
「……フェブル伯爵、まだいたのか。支払いが滞っておるぞ。早く賠償金を支払い罪を清算すると良い」
「そ、それが!ありえないほどの金額が請求されておりまして!我が家に商人を名乗る無法者が現れ、全て差し押さえると暴れておるのです!お助けください!」
王太子のメディオは一瞬目を上げたが、めんどくさそうにため息をし、
「その方が期日までに払わないのが悪い」
それだけいって、無茶振りされた書類に目を戻す。とても分かりやすく効率的に書かれた書類だが、何せ数が多い。処理しても処理しても書類は増えてゆく、謎だ。
「わ、私が着服したとされる金額もおかしいですが、追徴金なるものが更におかしい!なぜ一週間遅れただけで元の10倍になるのですか!」
「最初に渡した紙に書いてあったろう?それなのにそれを無視し、一週間遅らせた方に問題がある」
ペンも書き味の良い物に代わっている。
「王太子たるもの、小物にも気を使っていただかないと。しかも安物の輸入品などもってのほか!ドワーフ民芸の美しい物を使ってください。こちらをどうぞ。お色が良くお似合いですよ」
確かに使っていて疲れないし使いやすく手に馴染む。書類の効率も上がった……ような気がする。このような美しい細工が国内にあったとは知らなかったし、執務机周りもきれいに整頓されるようになった。
「机の乱れは書類の乱れです。多くとも、ただ積み上げるだけの書類はよくありませんよ」
一理はあると思う。インクも良い物を使い始めた。更に効率が上がった気がする。マリナデットの仕事は大きなものから小さなものまで幅広いが、どれも良い結果を出している。やはり手放せない人材だ。
「たった一週間ですよ!」
「フェブル伯爵。たった一週間と言うなら問おう、たった一週間、なぜ用意できんのだ?人には待てと願うくせに自分はできんと言うその惰弱、認めるわけにはいかん」
「うううう……」
反論も出来ずにフェブル伯爵は唸り声をあげる。こいつがマリナデットが決裁した書面に勝てるわけがない。
「しかし!金額が!」
「正式なものだ。もっと調べようか?多分その1.5倍には増えると思うが?」
「ううう……!」
お願いします、とは言えないようだ。とメディオは書類へサインをする。身に覚えがあるんだろう。
「そ、それにしても差し押さえが過ぎます!屋敷の物全てとは納得できません!」
「払えなければ差し押さえられる。当たり前ではないのか?」
「しかし、そんなことをされれば我がフェブル家は立ち行かなくなります」
立ち行かなくなっても良いからそのような書類が出来たのだがな、メディオは声には出さない。
「しかし、良いのか?フェブルよ。お前がここでこうして埒も開かない文句を私にぶつけているこの一時ですら、追徴金は増えているのではないか?元の金額が大きいがゆえに、少しでも長引くとありえないくらい増え続けるぞ。その身を奴隷として売りに出さねば足りなくなっても、私は助けはせん。なにせ、正しい取り立てなのだからな」
最初から明記してあるし、何度も念を押した。莫大な賠償金を期限までに返すようにと。それを書類をよく読みもせず、期限を破ったのはそちらの都合だ。それをどうして庇いだてができようか?
「あの方は必ず王太子に泣きついてきます。しっかり切捨てるように」
マリウスの言ったとおりになり、少し寒気すら覚える。
「見ればわかりますよ」
そういうが彼?彼女はフェブル伯爵に会ったことはなく、彼の書いた書類しか見た事がないはずであるのに、どうして彼の性根がそこまでわかってしまうのか不思議だった。
「そういう書類の書き方をしていらっしゃる方ですので」
書類一つでそこまでわかってしまうのか、とメディオは書類の書き方を改めたものだった。
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