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マリナデット・ウィフラート

43 お金がないにゃん

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「こんな素晴らしい物を扱えるなんて職人冥利に尽きるぜ……お嬢ちゃんいい仕事させてくれてありがとうよ」

「お嬢ちゃんではありません!それにしても素晴らしい出来ですね。着てみても?」

 どうぞ、と言われたのでマリウスは出来上がったばかりのホワイトサーベルタイガーの毛皮のコートをひらりと羽織った。毛皮は丁寧に加工されていて、元々の美しい毛はそのまま、皮のなめしや、縫製型取りも美しく満足いく仕上がりだった。

「素敵……そしてとってもあったかい!ありがとうございます。親方さん」

 マリウスは作ってくれたドワーフの男性に頭を下げた。

「良いんだぜ、嬢ちゃん。大切に着てやってくれ」

 わかりました、とにっこり笑いマリウスは親方に手紙を渡す。

「これは素晴らしい仕事をしていただいたお礼の一つです。今まで住んでおられた南の地は押さえてありますので、準備が整い次第元の場所に戻っていただけませんか?」

「!?嬢ちゃん!これは土地の権利書じゃねえか!」

「ええ、元々あなた方の物を、城の不届き者が難癖をつけて奪い取ったものです。見つけてきたのでお返ししようと思いまして。引っ越しの馬車などは懇意にしている商人を呼んでありますので、そちらのお申しつけ下さればいつでもご用意できます」

 見ればマリウスの後ろに今まで見たことのない女が一人立っていて、よう!と言わんばかりに手を挙げている。気さくな平民といったところだ。

「腕利きの商人ですから、色々出来る事があると思います」

「はーい!マリウスちゃんに頼まれて、この辺一体にも手を出させて貰ってるサイラス商会だよ!さーなんでもお任せあれ!金さえあればなんでも手に入れちゃうよ!しかも今ならその金さえ、王様が払ってくれるんだよ!おっかいどく~!」

 にやぁと女商人は笑った。儲かる仕事があればとことんまで儲ける、そんな心意気の塊みたいな笑顔だった。

「じょ、嬢ちゃん!?本気か?何で俺たちみたいなくいっぱぐれた奴らにこんな」

「あら!私は職人を遊ばせておくほど阿呆じゃありませんよ!暮らしが整ったらガンガン働いてもらいますので!」

「ガンガン……」

 可憐な容姿からは予想がつかなかった強い言葉が飛び出して、ドワーフの親方は少し驚いた。

「ここギラにお金がないのはお金を生み出すところに、きちんとお金を払わないからなんです。こんな一流の集団がいるのにおじゃがむきむきしかさせてないとか、木の食器しか作らせてないとか!勿体なさすぎて眩暈がしましたわ!」

「嬢ちゃん……」

「こう見えても私、金勘定にはうるさい方なのですよ?」

 にっこり笑う笑顔はとても愛らしく、言っている事も可愛らしいが、規模は国家予算なのだ。

「うーん、でもなるべく早く色々作って貰いたいんですよね。この国、お金なくて……」

「そりゃ俺たちも頑張らなきゃならないなぁ!」

 そうかこの国、金がねーのか!親方は大声で笑い、この嬢ちゃんに借りを返さなければと、腕をまくった。


 

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