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マリナデット・ウィフラート

42 今年は白いコートです

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「届きましたわーマリウス様」

「ありがとう、エレン。重かったでしょう?」

「4頭分入っているそうですわ。流石ヴィクトル様ですね」

 あら、お兄様に依頼したの?とマリウスは受け取ってきた箱の中身をちらっと見る。加工前の毛皮がふんわり詰まっていた。

「しょうがない方ですね」

 毛皮の上に乗っている手紙を読んでみると、休暇中なので、色々手伝えると書いてあった。何をやっているのかとマリウスはため息をつき

「さ、これをドワーフの集落に運んでマントにでもしてもらおうかしら?」

「暖かいのが出来そうですね!」

 エレンもエレナもにこにこと笑った。きっとホワイトサーベルタイガーの白い毛皮のマントはマリウスに良く似合うだろう。


 マリウスとエレン、エレナとテスラはまた安物の馬車に揺られて北の荒地を目指していた。今度は馬車いっぱいの硬いパンを積んでいる。
 大して美味しくないが、日持ちだけは抜群だからだ。

「こんにちはー」

「あ!あのお姉ちゃんだ!」

「お、お兄ちゃんでしてよ?!」

 慌てるマリウスに無邪気な子供達は首を傾げた。

「今日はパンを持って来たのですよ。あの非力なお兄ちゃんから貰ってくださいね」

「誰が非力か!」

 と言うテスラの声と

「はーい!」

 と手を上げる子供の声が出て重なった。

「そして持ってきましたよ、ホワイトサーベルタイガーの毛皮です」

「嘘だろ……」

 驚く職人は箱の中身を見て更に驚く事になる。

「ブルーホワイトサーベルタイガーじゃねぇか!なんで変異種まで!」

「さあ?サービスでしょうか?」

 マリウスの脳裏にドヤ顔のヴィクトルの顔が浮かぶ。兄を褒めろ!褒めるのだ、まりにゃん!と。うざったいのでぱたぱたと仰いで散らしておいた。

「きっとたまたま遭遇したから狩ったんでしょ」

「そうですよ、たまたまですよ」

 エレンとエレナのヴィクトルに対する評価は低い。ただの変態の扱いだ。

「マント、お願いしますね!暖かい物で」

「変異種なんて初めてみたぞ!これは……腕がなるわい!あんたが着るのか?」

 マリウスは首を振る。

「私は白い方が欲しいですわ。そのちょっと青い毛皮はそうですね、似合いそうな人を知っていますからプレゼントしましょうか」

 きっとメディオ様に差し上げたから、きっと似合うだろうな、とマリウスは笑う。

 その後このブルーホワイトタイガーの毛皮のコートはギラ公国の王の権威の象徴として代々伝わって行く事となる。

「今年はやっぱり白いコートで決まりです!」

 だが、ギラ公国の権威など、寒さで風邪を引きそうなマリウスにはどうでも良い事だった。

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