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マリナデット・ウィフラート

35 ニコラの後始末

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「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!全部全部嘘だ!」

 ニコラは壊れたように2.3日叫び続けていたが、好転することはなかった。ニコラは廃嫡され、この家は弟が継ぐ。そして邪魔なニコラは奴隷同然に売られてゆくのだ。

「どうしてこんなことに……?」

 リリアナのせいだ。違う……。

「俺の……せいだ」

 愚かだった、なぜリリアナの言葉のみを信じたのか、自分でも分からない。彼女の言葉は耳に甘かった。

「……隣国だったな、俺の売却先は」

 聞いたこともない名前だったが貴族だ。ならば礼節は大事にしなければならない。数日後に俺は送られる。せめてそれまで先方に失礼のないように礼儀でも頭に叩き込んでおこう。バーベリー家の血を引く者として。



「あらあら!可愛い坊やが売られてきたわね?お姉様が可愛がってあげるわ」

 覚悟を決めて対面した隣国の女公爵は、豊満で妖艶な……ものすごい美女だった。その時ニコラは思い出したのだ。

「俺ってば、青臭い学生の娼婦女より、お姉様の方が好みだったわ」

 と。

「あら!そうなの?ウフフ」

 どうも50近いという事は聞いて来たのだが、目の前の美女はどう見ても30そこそこ。学園を途中で退学してきたニコラよりも年上ではあるが……。

「凄い……好き!」

「私もニコラちゃんのこと気に入ったわ!」

 相思相愛の馬鹿ップルが誕生した。のちにニコラは語る。

「これもマリナデット様のお導き。あんなクソ娼婦に捕まって人生のすべてを棒に振る所を華麗に救出していただいた上に生涯の伴侶に出会う手助けすらしていただけるなんて。学園でマリナデット様に行った数々の非礼を許してくださるだけでもありがたいのに、もう感謝のしようもございません!」

「マリナちゃーん!可愛い旦那様をありがとうね~」

 二人の間には奇跡的に一人子供が生まれ、末永く幸せに暮らしました。ウィフラート家への借金もモリモリ返し、バーベリー家よりもこちらのナレス家が飛ぶ鳥を落とす勢いで繁栄していった。

 ニコラの両親は安堵し、弟のセレウスは

「解せぬううううううう!」

 と、大声を上げたとか上げないとか。

「はっはっは!セレウス。お前はまだマリナデット様への信仰と忠心が足りぬのではないのか?」

 ニコラは今日もマリナデットに祈りと忠誠を捧げている。




「へくちっ!なんだか寒気がしますわ」

「大丈夫ですか?マリナさま?」


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