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マリナデット・ウィフラート
24 勇者にゃん2
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「あ、勇者だ」
「ホントだ、勇者だ」
「おーい、勇者?今日は何倒したんだ?」
「分かった!酒瓶かな?!ごろーん!」
「借金じゃね?!踏み倒しー!プププ」
「積木の塔じゃないですかー?ばぶばぶー!」
ブルブルと震えても、誰も笑うのをやめなかった。
「俺は……俺は勇者だぞ!!」
故郷の街で、神殿から確かに勇者と認定された。岩に刺さった聖剣も抜いた。街ではチヤホヤされ、何もかもやりたい放題だったのに!
「申し訳ないけど、パーティ……辞めさせて貰うわ」
女賢者が1番だった。
「わたくしもお暇させていただきます、耐えきれません!」
女魔法使いも去った。
「あの……神殿から、呼び出しが……」
聖女がペコリと頭を下げた。
「俺は!俺は勇者だぁーーー!」
酒場で酔い潰れ、朝帰りの途中に見知った姿を見る。
「ああ!高名な青の賢者フラディア様にお会いできるなんて光栄です!」
「はあ?ありがとうございます。私は急いでいるので、失礼します……早くいかねばいい席がなくなる!」
賢者は振られたようだ、ざまーみろ!
「ずっと憧れていました!灼熱の魔道士フェアリス子爵!」
「どーもー?あ、さいならー」
魔法使いも相手にされてない。いい気味だ。
「あの、あの猊下。私に何用で……」
「私は呼んでませんよ?高司祭の誰かでしょう?神殿で指示を受けてください。今日の受付はー私の番~♪楽しみー!」
スキップを踏みながら上機嫌で去ってゆくのを呆然と見送っている。
あの3人はかなりの実力者だ。そいつらが、あっさり路傍の石みたいに扱われるのは何かと胸がスーッとした!ざまあみろ!
「しかし……」
この国はおかしい。外見は普通の国なのだが、何かおかしい。大体、最初に王に謁見した時からおかしい!
大抵、勇者が国に現れれば皆、両手をあげて歓迎するのが普通なのに!謁見まで3日待たされるのはもっとおかしかった!
「そうか。頑張りたまえ」
しか言われないのもおかしかった!勇者だぞ!となりの国など、入国した瞬間、貴族や王が飛んできて俺に取り入って来たぞ!
……たくさんの討伐依頼や、ゴタゴタ解決もおしつけられたが、そう言うものをこなして世界の平和を守るのが勇者なのに!
「何か討伐する魔獣などはおりますか?」
「いや?特には……」
「お困りごとは?」
「お主に頼むことは何もない」
「……」
何もとはどういうことだよ!大抵王家なんか、いろんな問題を抱えてるって相場が決まってんだ!
はっはー?分かった!俺に払う報奨金が足りないんだろ!だから依頼できないって訳だ。
分かるぜ!いくら王様でも金は湧いてくるわけじゃねーからな!上がこんなんじゃ、冒険者ギルドに行けばきっと何ヶ月も放置されて、誰も狩ることのできない魔物の依頼がわんさかとあるに違いない!
それを俺がまとめてぶっ倒し、称賛を浴びる!完璧な作戦だ!
「おい、行くぞお前ら」
「……なによ、勇者だからって偉そうに!」
「実力がなきゃあんたとパーティなんか組まないんだからね!」
「み、皆さん、仲良く……」
冒険者ギルドについて依頼の掲示板をみて驚くほど事になる。依頼がない!
大型の魔獣の討伐依頼や依頼も無い!あるのは薬草摘みや常設のスライム退治、家畜を狙う狼狩り……。
なんだ?凶暴な魔獣、魔物は狩尽くされてしまったような感じは!
やっぱりこの国はおかしい!
「はぁ、やめだ!やめ!」
俺はこの国を出る事にした。
「でも、可愛いかったなー」
あんな可愛い女にならまたなじられたいなどと!
こんな事をニヤニヤしながら考えたていた俺は後ろからポンと肩を叩かれた。むっ?!気配がしなかったぞ!こいつ!
「ちょっと君、少し良いだろうか?」
「な、なんだ?!お前ら……?」
何かやけに怒り狂っている男の一団に声をかけられた。俺の肩をギリギリと物凄い握力で締め上げながら、凄まじい怒気を孕ませている。いてぇ!いてぇ!俺が何したって言うんだっ!
「私の名前はヴィクトル・ウィフラート。とある結社の最高幹部をしている。君の行動についていくつか質問したいので、少しついて来て貰えるだろうね?勿論、拒否すれば実力行使をさせていただくが、異論は認めない」
「ひっ!」
ノーと言える隙が一つもない!ヴィクトルと名乗った……着ている服が上等なので多分貴族の男の後ろには数人の男が付き従っていた。
あれ?あいつ、あの時いたギルドの受付?あれ?この馬鹿でかい剣を持っているのも顔を見たことがあるぞ?あれ?さっき女賢者を適当にあしらった青の賢者様?もいるんじゃね?
「さあ……反省と教育の時間だ……!」
俺は、生まれて来た事を若干後悔した。
「ホントだ、勇者だ」
「おーい、勇者?今日は何倒したんだ?」
「分かった!酒瓶かな?!ごろーん!」
「借金じゃね?!踏み倒しー!プププ」
「積木の塔じゃないですかー?ばぶばぶー!」
ブルブルと震えても、誰も笑うのをやめなかった。
「俺は……俺は勇者だぞ!!」
故郷の街で、神殿から確かに勇者と認定された。岩に刺さった聖剣も抜いた。街ではチヤホヤされ、何もかもやりたい放題だったのに!
「申し訳ないけど、パーティ……辞めさせて貰うわ」
女賢者が1番だった。
「わたくしもお暇させていただきます、耐えきれません!」
女魔法使いも去った。
「あの……神殿から、呼び出しが……」
聖女がペコリと頭を下げた。
「俺は!俺は勇者だぁーーー!」
酒場で酔い潰れ、朝帰りの途中に見知った姿を見る。
「ああ!高名な青の賢者フラディア様にお会いできるなんて光栄です!」
「はあ?ありがとうございます。私は急いでいるので、失礼します……早くいかねばいい席がなくなる!」
賢者は振られたようだ、ざまーみろ!
「ずっと憧れていました!灼熱の魔道士フェアリス子爵!」
「どーもー?あ、さいならー」
魔法使いも相手にされてない。いい気味だ。
「あの、あの猊下。私に何用で……」
「私は呼んでませんよ?高司祭の誰かでしょう?神殿で指示を受けてください。今日の受付はー私の番~♪楽しみー!」
スキップを踏みながら上機嫌で去ってゆくのを呆然と見送っている。
あの3人はかなりの実力者だ。そいつらが、あっさり路傍の石みたいに扱われるのは何かと胸がスーッとした!ざまあみろ!
「しかし……」
この国はおかしい。外見は普通の国なのだが、何かおかしい。大体、最初に王に謁見した時からおかしい!
大抵、勇者が国に現れれば皆、両手をあげて歓迎するのが普通なのに!謁見まで3日待たされるのはもっとおかしかった!
「そうか。頑張りたまえ」
しか言われないのもおかしかった!勇者だぞ!となりの国など、入国した瞬間、貴族や王が飛んできて俺に取り入って来たぞ!
……たくさんの討伐依頼や、ゴタゴタ解決もおしつけられたが、そう言うものをこなして世界の平和を守るのが勇者なのに!
「何か討伐する魔獣などはおりますか?」
「いや?特には……」
「お困りごとは?」
「お主に頼むことは何もない」
「……」
何もとはどういうことだよ!大抵王家なんか、いろんな問題を抱えてるって相場が決まってんだ!
はっはー?分かった!俺に払う報奨金が足りないんだろ!だから依頼できないって訳だ。
分かるぜ!いくら王様でも金は湧いてくるわけじゃねーからな!上がこんなんじゃ、冒険者ギルドに行けばきっと何ヶ月も放置されて、誰も狩ることのできない魔物の依頼がわんさかとあるに違いない!
それを俺がまとめてぶっ倒し、称賛を浴びる!完璧な作戦だ!
「おい、行くぞお前ら」
「……なによ、勇者だからって偉そうに!」
「実力がなきゃあんたとパーティなんか組まないんだからね!」
「み、皆さん、仲良く……」
冒険者ギルドについて依頼の掲示板をみて驚くほど事になる。依頼がない!
大型の魔獣の討伐依頼や依頼も無い!あるのは薬草摘みや常設のスライム退治、家畜を狙う狼狩り……。
なんだ?凶暴な魔獣、魔物は狩尽くされてしまったような感じは!
やっぱりこの国はおかしい!
「はぁ、やめだ!やめ!」
俺はこの国を出る事にした。
「でも、可愛いかったなー」
あんな可愛い女にならまたなじられたいなどと!
こんな事をニヤニヤしながら考えたていた俺は後ろからポンと肩を叩かれた。むっ?!気配がしなかったぞ!こいつ!
「ちょっと君、少し良いだろうか?」
「な、なんだ?!お前ら……?」
何かやけに怒り狂っている男の一団に声をかけられた。俺の肩をギリギリと物凄い握力で締め上げながら、凄まじい怒気を孕ませている。いてぇ!いてぇ!俺が何したって言うんだっ!
「私の名前はヴィクトル・ウィフラート。とある結社の最高幹部をしている。君の行動についていくつか質問したいので、少しついて来て貰えるだろうね?勿論、拒否すれば実力行使をさせていただくが、異論は認めない」
「ひっ!」
ノーと言える隙が一つもない!ヴィクトルと名乗った……着ている服が上等なので多分貴族の男の後ろには数人の男が付き従っていた。
あれ?あいつ、あの時いたギルドの受付?あれ?この馬鹿でかい剣を持っているのも顔を見たことがあるぞ?あれ?さっき女賢者を適当にあしらった青の賢者様?もいるんじゃね?
「さあ……反省と教育の時間だ……!」
俺は、生まれて来た事を若干後悔した。
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