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マリナデット・ウィフラート

21 リュジールの後始末

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「兄さんはダレン様と娼婦を分け合って何をしたかったんです?」

「な、何を?!娼婦とはリリアナのことか?!」

「ええ、学園で彼女は有名人ですよ?誰にでも股を開く低俗な女として。それに熱を上げている兄さん達も有名でしたけどね?娼婦の騎士様?」

 俺の1つ下の弟、レンセルはほとほと呆れたと言った顔で、俺の部屋にやって来た。

「まあ、そのおかげで私がハラファイ家を継ぐんですけどね?兄さんのおかげでハラファイ家はこれから先、ウィフラート家の忠実な手駒ですよ。私は構わないですけどね」

「なっ?!どういう事だ!」

 手駒?私のせい?!レンセルが継ぐ?意味が分からない。この家の嫡男は私だぞ!

「あれだけ言われたのに、書類も見たのに何も分かっていないんですか?あなたは廃嫡されたんですよ。そしてお家断絶寸前をウィフラート宰相のお慈悲でなんとか私が繋ぎ止めたんですよ!」

「ど、どういう事だ……?」

 ばさり、書類を投げつけられた。桁を数えるのも億劫になるほどの数字が並んでいる。

「あなたがマリナデット様に払うべき賠償金の一部です。良いですか?一部ですよ!大部分はハラファイ家が負担したんですからね!我が家は没落寸前ですよ!」

「う、嘘だ」

「嘘だったら良かったですね!負けてもらってコレですからね!あなたのせいでお父様は私の卒業を待って引退。私は当主になってもヴィクトル様の腰巾着です。……まああの方はマリナデット様の事以外は優秀ですからダレン様よりマシですけどね」

 嘘だ!嘘だ!私は正義を行ったのに!どうしてこんな事に!

「さて、ここにはお喋りをしに来たのではありませんよ、兄さん。西の国デリット侯爵の男妾か、南のレビ公爵の男妾。どちらがよろしいですか?私としては南のレビ公爵の方がお年も40とまだまだ現役ですし、金額も良い値段をつけてくださったのでお得だと思いますが。デリット侯爵はもう60ですし、夫人もたくさんおられますからね、いびられそうですよ」

「れ、レンセル……何を言って……?まるで私が売られるようではないか……?」

 さあっと血の気がひいて行く。まさか、まさかな……?

「売るだなんて人聞きの悪い!望まれて妻の1人に加えて頂くだけですよ」

「妻?!私は男だぞ?!」

「そうですよ!いくら若いとは言え男はですからね!こんなに好条件を出してくださる方は他にいませんよ!それ以外兄さんはどうやって賠償金を稼ぐつもりですか!剣の腕もない!頭も悪い!そんなあなたは!言っておきますが、足りませんからね!」

 全て力が抜けて床に座り込んだ。わ、私が売られる……のか。リリアナを信じ、ダレン様を信じたばっかりに……。

「私の大事な大事なまりにゃんコレクションを全てお譲りする事を条件に我が家は存続を許されたんですからね!!折角!折角!まりにゃん様から直々にいただいた一生涯の宝物にしようと思っていた刺繍入りのハンカチを差し出したんですからねーー?!聞いてます?!聞いてますか?!兄さん!!あのハンカチに比べたらあなたの尻なんてゴミ同然なんですよ!!分かってますか!!兄さん!!!」

「うう……」

「泣きたいのはこっちだーーー!」

 ハラファイ家はギリギリ存続を許され、リュジールは卒業を待たずに南へ旅立たされた。

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