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マリナデット・ウィフラート

13 ビックスライム弾けるにゃん

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「き、今日こそスライムを倒します!」

 プルプルと震える腕でマリナデットは短剣を構えた。

「マリウス様、今日はご無理をなさらず休養日にしましょう?」

「だめですわ!1か月しかないのですよ!」

 昨日慣れない短剣を振り回し過ぎて、筋肉痛なのだ。

「ううー!なせばなりますーーー!」

 すかっ!今日もスライムに当たらない。
 その時、がさりと森に続く茂みが揺れた。マリナデットがそちらを向く前に、短剣を構えたエレンとエレナがマリナデットを背に庇うように立ち塞がった。

「マリナ様!下がって!」

「は、はい!」

 二人の声に条件反射的に従う。エレンとエレナが来てから、2人の指示には従った。それが生き延びる為に必要だったから。

 がさがさと揺れる茂みはスライムよりも大きいものを示していた。

ぼよん!

 普通のスライムより大きな……その名の通りビッグスライムが現れた。スライムが合体して大きな個体になったものだ。

 エレンとエレナは短剣を下げた。

「びっくりしましたわ……」

「そうですね」

「ビッグスライムはマリウス様では倒せませんね」

 ビッグスライムは体が大きい分、表面から核まで長さがある。マリナデットの持っている短剣では核まで届かないのだ。

「残念ですが……普通のスライムでもまだ倒せませんから……」

 しょんぼりしてしまう。ビッグスライムは辺りの草を食べ始め、所々大地にハゲが出来ている。

「どなたか退治して下さると良いのですが……」




「おい、坊ちゃん出番だ!」

「うっ!やってくれぇーー!」

「覚悟しろよぉ!」



「おい、へたれ行けや!」

「いやしかし!だがしかし!あーーーしかし!!」



「ふぅん!!!S級冒険者魔法!筋力超アップーーーーっ!」

 この辺りでは5人しかいないS級冒険者のガララスの腕がムッキムキに膨れる上がる。
 依頼主の「坊ちゃん」を掴み上げて

「逝ってこおーーーい!!!」

「うわぁああああーーーー!」

放り投げた。ビッグスライムに向かって。




「つべこべ言わずに行け!」

「ぎゃーー!」

 木の上から蹴り落とした。ビッグスライムに向けて。


「うわーーーー!」
「ぎゃーーーー!」

「な、なんですかっ!?」

 取りあえず、マリナの近くにいたビッグスライムは潰れて死んだ。だがしかし、2人の冒険者も頭にコブを作って倒れていた。

「えっと……?」

 エレンとエレナは頭を抱えた。
目を回している2名の主なダメージ源は2人が激突したからであってビッグスライムはそんなとばっちりを受けてぱちゅんと弾けてしまった。

「……隣国第3王子アスレイ・ジェルヘルム様……?とルシュール・ステファン公爵令息様?」

「良く似ていると言われますが!別人でっす!」

「ハイいい!別人でぇす!!」

「あ、起きた」「起きましたね」


「あ、そうなんですか。お怪我はありませんか?」

 にっこり笑うマリナデットの笑顔の眩しさに射られて悶絶する。

「間近っ!光が強すぎるッ!」

「くぅっ!焼けつきそうだ!」


「「……。」」

 エレンとエレナはマリナデットを促してどこかに逃げたかった。

「あの……?」

「あ!私、F級冒険者、アスタです!」

 じゃーん!と効果音がなりそうなくらい得意げに冒険者カードを見せてくる。

「わ、私も冒険者、ルディです!」

「そうなんですね。私も駆け出しです、奇遇です」

 普段なら、絶対に騙されることのない粗だらけの自己紹介に偽装冒険者カードだが、自己責任しかない冒険者という立場、更にスライムを倒さなくては!という使命とテンションで、すっかり騙された。

「よ、良ければF級同士、一緒にスライムを倒しませんか?」

 渡りに船の提案にマリナデットは目を輝かせた。

「よ、よろしくお願いします!」

「「眩!!」」

 
 えっちら、おっちら……。もたもた、もたもた……。

「マリウスさん!そちらです!」

「はいいいい!」

「ルディさん、回り込んで!」

「はいっ!えい!」

「た、倒せました!!」

 わー!パチパチ!

「アスレイ・ジェルヘルム様は精霊術と超古代語魔法の使い手であらせられる」

「ルシュール・ステファン公爵令息は召喚術に長けて呼び出せぬ者は己の嫁くらい、と言われています」

「剣術は見事にF級のお二方ですね」

少し離れた所から見守るエレンとエレナの横に

「すまねー。うちの坊ちゃんが」

「お邪魔します。うちのヘタレがどうもどうも」

 お守りが集結していた。

 
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