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マリナデット・ウィフラート

9 ざまぁ2 リュジール

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 その日、ハラファイ伯爵は嫡男のリュジールを領地に送り返そうとしていた。

 ウィフラート公爵家から秘密裏に届いていた手紙。学園でクソみたいな男爵令嬢に入れあげ、マリナデット様に不敬を働いている……。
 信じたくはなかったが、証拠写真をこれでもかと送られ、

「お前のような者が公爵令嬢とは、聞いて呆れる!リリアナは毎日泣いておるぞ!」

 などど、自分より高位の令嬢に高圧的に暴言を吐く音声まで届いた。

「旦那様!大変です!!リュジール様が!衛兵に護送されてお帰りにまりました!」

「馬鹿な!今日な第一王子のパーティーであろう?!」

 伯爵は転がるように、玄関へかけて行き

「離せ!私を誰だと思っているっ!」

 と、喚く息子を無視して衛兵に声をかける。

「このバカは……何を、何をやらかしましたか?!まさかマリナデット様に暴言を吐いてはおりませんよね?!」

「そのまさかでございます。伯爵」

 ハラファイ伯爵はその場に崩れ落ちた。

「父上!私は正しい事をしただけです!泣いている令嬢を助けて、悪事を働く者を断罪したのです!」

 伯爵は理解できない物を見た。

「正しい?何を根拠に?泣いている?泣くだけなら赤子でも出来よう。悪事?証拠はあるのか?断罪?お前が誰かを裁ける立場にあるのか?」

 顔色と表情の全てを失った父親をリュジールは見た。そして気がついた。自分は一体何をしたのかを。

 第一王子のパーティーの場を乱しただけでも罪は重い。

「公式記録員が書面を残しております。……残念ですが、近いうちにウィフラート家から、書面が届くでしょう」

「……もう……逃げ場などないのですな?」

 俯いてポツリと言葉を零す。

「ウィフラート宰相様が逃げ場など残しておくはずがないと思います」

「わしは長年、閣下の下で働かせて貰った……それ故の先に知らせてくれた温情であったのに、生かせなんだな……」

 その場にうずくまる。衛兵は気の毒そうに見ているが、元を正せば息子を諫められなかった、そして早めに対処出来なかった伯爵の落ち度であった。

「衛兵殿、ありがとう。このゴミは皆様に迷惑をかけぬようにきっちり処分しておきます」

「死までは宰相様もお望みではないでしょう」

 ありがとうございます。伯爵はは深々と礼をして、衛兵を見送った。

「リュジールを監禁しろ」

「旦那様?!」

 執事が悲鳴を上げる。

「我が家は終わったのだ。皆も次の奉公先はなるべく手配したいとは思うが、ハラファイ伯爵家はもうすぐ幕をおろす。長い付き合いであった、礼を言う……」

「何を仰るのです!旦那様!!」

「リュジールが……この愚かな馬鹿息子があらぬ罪をウィフラート家の令嬢に着せたのじゃ……!かの名家を罵倒して生きて行けるはずがない!」

 執事は息を飲んだ。恐怖で瞬時に真っ青になる。

「父上!私は!正しい事を!」

「痴れ者めっ!」

 私はリュジールの顔に書類の束を投げつけた。

「他者を裁くと言うことは間違いがあってはならんのだ!証拠というものはこういう物を言うのだ!目を通して己れの罪を悔いるがよい!」

 リュジールを書類を持たせて軟禁した。

「財産をまとめねばならんな。わしの首で済めば良いが……ウィフラート家の温情にすがるしかないな……。」

 伯爵はそれでも立ち上がる。ここで渋ってはなお氷華の宰相の不興を買ってしまう。

「宰相の夫人……マリナデット様の生母殿と親しくしておる者はいなかったか……ああ、なればランズ公爵は……ああ!チェイニー王子に謝罪の手紙を早急に書かねば」

 やる事は山積みだった。

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