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マリナデット・ウィフラート

2 学園の白百合にゃん

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 自室で

「やった!やりましたわ!!!エレン!エレナ!やっとです!!」

 ひゃっほーーーい!やっと婚約破棄だぁーーーー!きついドレスのまま、グルグル回った。

「耐えましたねぇマリナ様」

「ホントですねー17年ですか?」

「あーーーもーーー!良かった!とりあえず良かった!良かったよーーー」

 長かった!本当に!ぱっと顔を上げて私の従者に確認をする。

「エレン、お父様にご報告はどうだった?」

「裏は取れているらしく、慰謝料をがっぽり奪う算段はついているそうです。あとあの三馬鹿を前に引っ張り出せた事と、公式記録を残せた事を褒めていらっしゃいました」

 よしっ!わたくしは小さく拳を握った。腹黒お父様の事だ。王子はさておき、あの三馬鹿から各家が傾くくらい慰謝料と賠償金を踏んだくるはずです。これでわたくしにお咎めなど来ないわ!

「で、わたくしは失意に濡れて、修道院に身を置きたいと伝えてくれたかしら?」

「ええ、でもそちらは渋っておいででした」

「まだ、わたくしを駒にして絞り取る気かしら!もう限界なのに!流石にもう無理よ!」

 コンコン、ほぼ使用人がいないこの棟でわたくしの部屋の扉を叩くのは

「お母様?」

「ええ、入りますよ、マリナ」

 公爵の第二夫人にしては貧相なお母様がいらっしゃった。

「外まで聞こえておりましたわ。今更バレては事ですわよ?」

「お母様!しかしもう無理ですわ!見てくださいませ!この」

 わたくしはドレスを脱ぐ。

「この立派な胸筋を!もう隠せません!」

 わたくし、マリナデット・ウィフラートは男子ですよの?!



 事の始まりはわたくしのお兄様が2人も殺されてしまったのです。

 お母様は身分の低い男爵家。第一夫人は公爵家のお嬢様。

 雪花の宰相と名高いルイーフ・ウィフラート公爵はそれはそれはおモテになったそうです。
 しかし恋愛に興味がなかったお父様は家柄だけで結婚し……第一夫人は待てど暮らせど懐妊の兆候がなかったそうでございます。
 そこで困ったお父様は子沢山で有名だったお母様を第二夫人に召し上げます。お母様は期待通りにすぐ、第一子を妊娠、お父様にそっくりな男の子を産んだそうです。それが面白くない第一夫人は自分の妹もお父様の妻にと割り込ませて来ました。
 しかし、第3夫人となった妹の方もやはりなかなか授からず…あっという間にお母様が第二子の男の子を身ごもり、産みました。またまたお父様そっくりの美形赤ちゃんだったそうです。

 そして、わたくしのお兄様お2人は亡き者にされたのです。犯人は当然闇に葬られました。公爵家に手出しはできませんもの。

 こうして次に産まれたわたくしは女の子として育てられたのです。それでも何度も命を狙われましたよ?
 専属の護衛のエレンとエレナが徹底サポートしてくれて、やっと生き延びました。
 第一夫人が連れてきた養子を、跡継ぎにとお父様が決めてくださったのも暗殺が減った要因でしたが。

 お父様の血を正しく受け継いだわたくしは、自分でいうのもなんですが大変な美少女に成長いたしました。

 空色を所々に溶かしたような長い銀の髪に、薄紫の瞳。白い肌。お父様譲りの少し切れ長でもぱっちりした瞳に高い鼻。
 宮廷の白百合、学園の雪妖精。まぁ色々……。

 でもどう頑張っても年々男らしくなる体はもう限界です!背もどんどん伸びて、低くはないダレン様と並んでも、わたくしの方が少し高い始末。
 お父様も高身長ですし、お母様も女性にしては高いですからね。
 いつもわたくしを少し見上げて舌打ちをしていたダレン様を思い出します。その辺りは素直にごめんなさいと思いました。
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