上 下
18 / 26

表 11

しおりを挟む
「あ……」

「あら、ベアトリスお姉様は……ふふ、11位でしたのね?以前より順位があがってよろしかったですわね?まあ私も上がりましたけど?ふふふっ」

 テストの点数が張り出された学園の廊下。クロリスが勝ち誇ったように笑います。

「流石クロリス様ですわぁ」

「流石学園一の才女」

「やはり伯爵家の跡継ぎは……うふふ」

 クロリスのお友達が私の方をチラチラと見ながら笑うのです……。また私は負けてしまいました、しかも前回2位だったクロリスがあがったのですから、首席以外ありません。堂々と名前が連なる一番上に、クロリスがいます。

「どうせまた教師にでもすり寄ったんでしょう!」

「アリス!」

 親友のアリスが声を荒げますが、クロリスは冷たい目で笑うだけ。

「これだからお姉様は……そういえば今日は例の返事も来るはずですし、楽しみですわ」

 例の返事……?何のことかは分かりませんが、とにかく嫌な予感しかしません。それでも私が帰る家はタンバル家なのですから、帰るしかないのです。


「クロリス、例の返事をいただきました。セリ公爵家の三男、ルセッツ様がクロリスとなら婚約を結んでも良いと。しかしそれもクロリスがこのタンバル家を継ぐなら、との条件ですわ」

 さーっと私の全身から血の気が引きます。

「何故、ベアトリスではいかんのだ?」

 お父様は不思議そうにリーエンお義母様に聞きます。それにお義母様は薄く笑って

「ルセッツ様にも好みというものがあるのでございましょう?金髪の方が好きだという事でしたので」

 私の髪の毛は茶色だ……クロリスやフローラ、リーエンお義母様のように美しい金色の髪ではない……。お父様すら、ああなるほどな。それはあるかもしれん、なんて酷い言葉を私にぶつけるのです。

 もう……もう、我慢の限界でした。

「失礼しますっ!!」

 私は走って全員が呼ばれたお父様の執務室から飛び出しました。

「まあ、なんてマナーの悪い」

 そんな声が後ろから聞こえましたが、振り返る事はできませんでした。



「ベアトリス!!」

「カル兄様!?」

 我が家に居るはずのない人の声に呼び止められ、私は振り返ります。そこには何故かカル兄様が立っていて、走り寄ってきてくださいました。

「どうしたんだい!ベアトリス!」

「兄様!私、この家に居たくありません!」

「そうか……アンナ、一緒に来てくれ」

「はいっ」

 私はカル兄様に支えられ、ヴィンター侯爵家へ連れて行っていただきました。ヴィンター公爵家につく間に私はすっかりカル兄様に今まであった事を話してしまったのです。カル兄様は

「よく頑張ったね、ベアトリス。あとは私に任せておきなさい」

 そう言って頭を撫でてくださいました。ヴィンター家につくとおじ様もおば様もいらっしゃって、皆私を歓迎してくださいました。

「ベアトリス、私と結婚して欲しい。私は昔から君の事が好きだったんだ。良ければこれからは兄様ではなく、婚約者として私と共にいて貰いたい」

「に、兄様……」

 突然の告白に驚きつつも私はこくりと頷くのでした。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」  婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。  ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。  そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。  聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?

海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。 「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。 「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。 「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。

処理中です...