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9 姉の手紙

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 キャロラインが通わなくなっても、学園生活は続いている。週末の休みにタウンハウスに戻り、週の最初に寮に戻る生活だ。その方が通学の時間を勉強にさける。
 ルーザは学園の一年生であり、キャロラインは2年生であった。セドリック王子、ルリルーも2年生だ。
 学年の違うセドリック王子に会える場所は生徒会になる。王子は生徒会長をしているし、ルーザは会計として学園の運営に携わっていた。これも卒業後に生かす為だ。

「セドリック様、ルリルー嬢に手紙を渡したいのですが……」

「ルーザ、君からかい?」

 セドリック王子は来客用のソファに座らせたルリルーをちらりと見て言う。ルリルーは生徒会の人間ではないので、仕事がある訳でもない。
 今までは一人にしておくとキャロラインがいじめると、セドリック王子が言うので避難と言う形で生徒会に匿っていたが……。
 目線を変えて見てみると、ルリルーは申し訳なさそうに体を小さくして、座っている。非常に居心地が悪そうだ。

「いえ、私からではなく……姉、キャロラインからなのですが……」

「何だと!?まだあの女は!」

 王子は声を荒げたが、ルリルーは目を輝かせて立ち上がった。

「あの!キャロライン様から私に手紙が……」

「駄目だ!ルリルー!どうせあの女の事だ!また君を不快にする事しかしでかさないに違いない!」

 ルーザは内心、少し嫌悪感を感じた。確かに婚約はなくなった。しかし、長いあいだ婚約者として過ごして、王子の婚約者として勉学に励んで来た姉を「あの女」呼ばわり。しかも見てもいないのに、否定するのはどうなのだろうかと。

「いいえ!そんな事はございません!お願いです、その手紙を私にくださいませ!」

 ルリルーは基本的に王子に全く逆らわない。なのに、キャロラインの事だけは必死に訴えた。

「ご心配でしたら、中を確かめてはいかがですか?最初から封はされずに送られて来ました。見ても良いという事でしょう」

 ルーザの言葉にセドリックは初めて薄いピンク色で花の透かし模様が入った封筒をみた。

「……親愛なるルリルー・ディアンデ様、今更っ!」

 控えめな花の香りも上品な手紙を、セドリックは乱暴に開いてみる。非常に見やすく美しい文字で綴られた謝罪の手紙であった。どこにもセドリックが心配したような言葉は書かれていない。

「……この最後の言葉はなんだ?さっぱり分からないのだが?」

「私も分かりません。隣国の流行でしょうか?」

 ルーザとセドリックが顔を合わせる中、ルリルーの手に手紙が渡る。

「グレートマックは肉が多すぎでいけません。ナゲットはシェアしましよう、バーベキューソースで良いですか?……ああ!キサラさん、良かったわ!」

 ルリルーにだけは分かった。自分達が生きていた日本の記憶。マクドナルポンのバーガーは大きすぎるし、ナゲットのたくさん入っているサイズもあったし、バーベキューソースは懐かしい味だ。

 私とキサラさん、操さんの3人で食べたらとても美味しかったでしょうに!

 良かった、良かったと涙を流さんばかりに手紙を抱きしめるルリルーに、ルーザもセドリックも驚きを隠せないのであった。

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