20 / 27
20 どうしても断れない来客
しおりを挟む
「アネモネ。来客がある……その、どうしても断れない方なのだ」
「?」
体を壊す男性用性欲増大薬が大々的に取り締まられて数か月後、お父様にそんな事をいわれて着飾らされてしまった。
話によると、ナルクとダリアは大げんかになったようだ。そんな薬を使ってまでたくさんの女性と関係を持ち続け、女性達にお金を使っていたナルク。それを知ったダリアはナルクを思いっきり殴ったらしいけれど、まあ知ったことではない。
「あなたがアネモネの婚約者だったから誘ったのに! この役立たず!」
「黙れ、たかが子爵の娘が侯爵の息子である私と結婚できたんだからありがたいと思え」
「何よっ 借金持ちの次男が偉そうなこといわないで!」
「くそっ お前が上手くやってアネモネに取り入っていればこんなことには! 今頃公爵家の婿として輝かしい人生を送っていたはずなのに」
「お黙りなさいよ! 結局あんたが女性にだらしないからでしょうっ」
お似合いの夫婦じゃないかしら? 可哀想なのは子供で、そんな二人のやり取りを隅で小さくなりながら聞いていたそうだけど、どうかしてやろうという気は起きない。ダリアとナルクの子供はあの二人の血を良く引いていて、前の人生では私のことを見下してニヤニヤしていたのを忘れない。
私の可愛いディルフィルと少ししか違わないのに、環境というのは恐ろしいものだわ。
「おかあさま、だいじなおきゃくさまがいらっしゃるの?」
「ええ、そうらしいわ。ディルフィル。もしお客様にあったらきちんとご挨拶できるかしら?」
「はい! できます」
「まあ! やっぱりディはいい子ね」
「えへへ~」
ディルフィルの触り心地の良いきれいな金髪を撫でる。私も金髪だけど、ちょっと髪質が違って本当にサラサラしている。これは父親の血かしらね?
「お嬢様、ディルフィル様。お客様がお見えです」
「あら、ではいきましょうか、ディ」
「はい、おかあさま」
メイドのルシーに声をかけられ、私とディルフィルは手を繋いでエントランスへ向かう。お父様がどうしても断れないお客様って一体誰なのでしょう?しかも、断りたかったのに、断れなかったってことなのかしら?
「おかあさま。おきゃくさま、もういるよ」
「あら、本当ね。急ぎましょう」
お父様が見たことがない背の高い方と話をしている。あら、その方も金髪ね。
「遅くなり、申し訳ございません」
「もうしわけございません」
私とディルフィルが着くと、お父様は大っ嫌いなパプリーを食べた時の顔をしていた。そんなにお客様のことが嫌いなのかな?
「今日は無理をいってすまない」
「?」
随分背が高いが、かなり痩せた男性はそれでもとてもサラサラした金髪に青い目の持ち主だった。会ったことはないはずなのに、その容姿に既視感がある、一体どこで見たのだろうか……。
「おかあさま?」
手をつないだディルフィルが一瞬考えこんだ私を心配したのか声をかけてくれた。大丈夫よ、と言おうとして可愛い息子に視線を下ろし、はっとする。
似ている。ディルフィルはこの目の前の男性に似ている……そっくりだといっても過言ではない。驚いて二人を見比べてしまった。どこをどうみても……似ていた!
「?」
体を壊す男性用性欲増大薬が大々的に取り締まられて数か月後、お父様にそんな事をいわれて着飾らされてしまった。
話によると、ナルクとダリアは大げんかになったようだ。そんな薬を使ってまでたくさんの女性と関係を持ち続け、女性達にお金を使っていたナルク。それを知ったダリアはナルクを思いっきり殴ったらしいけれど、まあ知ったことではない。
「あなたがアネモネの婚約者だったから誘ったのに! この役立たず!」
「黙れ、たかが子爵の娘が侯爵の息子である私と結婚できたんだからありがたいと思え」
「何よっ 借金持ちの次男が偉そうなこといわないで!」
「くそっ お前が上手くやってアネモネに取り入っていればこんなことには! 今頃公爵家の婿として輝かしい人生を送っていたはずなのに」
「お黙りなさいよ! 結局あんたが女性にだらしないからでしょうっ」
お似合いの夫婦じゃないかしら? 可哀想なのは子供で、そんな二人のやり取りを隅で小さくなりながら聞いていたそうだけど、どうかしてやろうという気は起きない。ダリアとナルクの子供はあの二人の血を良く引いていて、前の人生では私のことを見下してニヤニヤしていたのを忘れない。
私の可愛いディルフィルと少ししか違わないのに、環境というのは恐ろしいものだわ。
「おかあさま、だいじなおきゃくさまがいらっしゃるの?」
「ええ、そうらしいわ。ディルフィル。もしお客様にあったらきちんとご挨拶できるかしら?」
「はい! できます」
「まあ! やっぱりディはいい子ね」
「えへへ~」
ディルフィルの触り心地の良いきれいな金髪を撫でる。私も金髪だけど、ちょっと髪質が違って本当にサラサラしている。これは父親の血かしらね?
「お嬢様、ディルフィル様。お客様がお見えです」
「あら、ではいきましょうか、ディ」
「はい、おかあさま」
メイドのルシーに声をかけられ、私とディルフィルは手を繋いでエントランスへ向かう。お父様がどうしても断れないお客様って一体誰なのでしょう?しかも、断りたかったのに、断れなかったってことなのかしら?
「おかあさま。おきゃくさま、もういるよ」
「あら、本当ね。急ぎましょう」
お父様が見たことがない背の高い方と話をしている。あら、その方も金髪ね。
「遅くなり、申し訳ございません」
「もうしわけございません」
私とディルフィルが着くと、お父様は大っ嫌いなパプリーを食べた時の顔をしていた。そんなにお客様のことが嫌いなのかな?
「今日は無理をいってすまない」
「?」
随分背が高いが、かなり痩せた男性はそれでもとてもサラサラした金髪に青い目の持ち主だった。会ったことはないはずなのに、その容姿に既視感がある、一体どこで見たのだろうか……。
「おかあさま?」
手をつないだディルフィルが一瞬考えこんだ私を心配したのか声をかけてくれた。大丈夫よ、と言おうとして可愛い息子に視線を下ろし、はっとする。
似ている。ディルフィルはこの目の前の男性に似ている……そっくりだといっても過言ではない。驚いて二人を見比べてしまった。どこをどうみても……似ていた!
594
お気に入りに追加
4,282
あなたにおすすめの小説
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る
月
ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。
能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。
しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。
——それも、多くの使用人が見ている中で。
シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。
そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。
父も、兄も、誰も会いに来てくれない。
生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。
意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。
そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。
一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。
自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。
どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな
こうやさい
ファンタジー
わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。
これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。
義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。
とりあえずお兄さま頑張れ。
PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。
やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物
ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。
妹のマリアーヌは王太子の婚約者。
我が公爵家は妹を中心に回る。
何をするにも妹優先。
勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。
そして、面倒事は全て私に回ってくる。
勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。
両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。
気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。
そう勉強だけは……
魔術の実技に関しては無能扱い。
この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。
だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。
さあ、どこに行こうか。
※ゆるゆる設定です。
※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる