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17 強いぞ、お父様

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 前の人生と違って私は幸せに生きて20歳になった。可愛い息子は2歳に、お父様は風邪も引かず元気いっぱい。

「ディルフィルが成人するまでわしが目を光らせてやるぞ!」
「まあ、頼もしいわ。お父様」
「おじいちゃま、しゅごい!」
「わっはっは! そうであろうそうであろう!」

 我が家の資産はどんどん増えている……トッドリア侯爵が静かで色々邪魔をしてこないのが功を奏していて、前の人生では裏に表に色々邪魔をされていたんだと驚くほどだった。そんなトッドリア侯爵は我が家がどうしても断れない夜会に現れて、私達を貶めるのに余念がない。

「おっとこれはこれは、天下の公爵家にとんだ阿婆擦れが……」

 聞こえるように言われても私もお父様も軽く無視。周りの貴族も笑っていたり軽く同調するだけ。そう、飽きたのよ。同じ話題で2年も引っ張れば皆飽きるわ。
 そしてお父様のコレもね。

「我が孫は本当に可愛いし、賢い! それに可愛い娘を他の男にくれてやらなくて良いのに跡取りがいるなんて、なんと男親としては嬉しいことだろうか!」
「あは……ははは、流石ですな」

 周りの貴族にも引かれる孫大好きっぷりでトッドリア侯爵の攻撃は何のダメージもない。分かりやすい汚点を突きまくってトッドリア侯爵も他の罠を仕掛けようともしないし、我が家にも大して害はない。

 それよりもトッドリア侯爵は取り組むべき大きな難題があるしね。

「王太子殿下は体調が優れぬらしい。今日もアイビー嬢はお一人だ」
「これでは御子は……」

 トッドリア侯爵の娘、アイビー・トッドリアは王太子妃になっていた。私がナルクと別れようと色々画策していたころ、並み居る王太子妃候補を打ち倒し、彼女が婚約者の座を射止めたのだ。そして短い婚約期間の後、すぐに結婚した。
 しかしその頃から王太子殿下は体調を崩されるようになって寝込むことが増えた……なのでご懐妊の吉報は未だ聴こえない。トッドリア侯爵はその辺りに気を揉んでいて、我が家のことは二の次になっている。
 その辺りはお父様の溜飲を下げる所でもある。

「うちにはこぉーーんなにかっわいいー!孫がいるしなぁ?!」
「そ、そんなどこの馬の骨の種か分からん孫など」
「かぁわいーなー! がははは!」
「くうっ」

 お父様も大人気ないと思う。それにしても前の人生で王太子殿下の御子は産まれていたんだっけな、と思い出そうとしても思い出せなかった。その頃はもう傾きかけた家をなんとかするのに手いっぱいで周りを見る余裕なんて一欠片もなかった。来る日も来る日も借金に追われて……思い出しただけでもぞっとする日々だった。
 良かった、本当に良かった。ナルクときっぱり別れられて。あの時はこれしかないととんでもない手段に出たけれど、結果的に良い方向へ進んだ……顔ももう朧げな一夜の相手をしてくれた騎士には感謝しかない。


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