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王都に
49 ノノス村調査隊4
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先だって報告を受けたミラージ公は大きくため息をついた。
「男神神殿の神官達はまともに魔獣退治も出来ぬ神官見習い以下、女神神殿の神官は癒しの魔法も碌に使えない上に回復ポーションは泥水並みのこちらも見習い神官以下……聖人聖女を無断で名乗り、寄付金を不正に着用し、全て娯楽の為に使っていた」
「間違いありません」
「そして村の警備は聖女アリア一人に任せ、結界も彼女が一人で作っていた。聖水やポーションも彼女が一人で行っていた」
「その通りです」
「しかも彼女に毎日パンを焼かせ、それを奪い取り対価を払う事もない。家の修理、畑仕事、子守まで彼女に?何故?」
「分かりませんが、村長がアリア様にやらせればよい、そう村民に伝え、鵜呑みにしたと」
「意味が分からん」
「私達にも分かりませんでしたが、恐ろしい事にそれが当然という顔をしておりました。「アリアはいつ帰ってくるのか、自分達はとても困っている」と訴えられる始末」
使者たちの隊長ですら思い出してため息が漏れる。
「アリアを見たのかい!?いつまで外をほっつき歩いているんだ!すぐ帰るように伝えておくれ!」
「アリア様はこの村へはもう帰りませんよ。彼女は半魔神様の聖女です。王都でそれは一生懸命働いておいでです」
「なんで!?アリアがいないと畑が進まないよ!」
「何故、半魔神の聖女であらせられるアリア様が畑を手伝うのですか?逆でしょう。あなた方がアリア様の半魔神様への奉仕を手伝うべきところです」
「え……だって村長が……」
「あの男は犯罪者です。そして村長に言われてもそんな訳ないでしょう。何故聖女様が畑仕事を?畑は農民の仕事です」
「え……?」
「アリアに早く戻って朝にパンを焼くように伝えてくれ!パン屋のパンじゃ不味すぎる!」
「何故です?半魔神の聖女たるアリア様が朝早くからパンを焼く理由は?」
「え……だってアリアのパンの方が美味いから」
「当然です。半魔神の神官達が作るお料理はどれも美味しい。でも何故村人全員のパンをアリアさんが焼かねばならないのです?半魔神様の聖女のパンなどあなた方が買えるほど安い物ではありませんよ?」
「でも今まで……ほとんどタダで貰って……」
「それが異常だと普通気が付きますよね?パンはパン屋で。パン屋にすらきちんとお金を払うのに美味しい半魔神様のパンを頂けるというのにタダなどあり得ませんよ」
「え……」
「アリアに子守の手伝いを」「何故」
「アリアに掃除を」「何故」
「アリアに」「アリアに」「アリアに」
村人は本当に自分達が面倒くさくてやりたくない事を全て押し付けていたのだ。
「対価を頂きます。半魔神の聖女たるアリア様を使うという事はどれほど大変な事なのか。貴方たちは知らねばなりません。マグノリア様が王宮で栄養指導の名の下、料理を作っていた時より高い給金を請求することになります。覚悟をするように」
「ひ……ひいいい!」
「男神神殿、女神神殿も中央からのお達しを待つように。神官どころか見習い程度の実力で何が聖人、何が聖女ですか。半魔神神殿に賠償金と村の警護代、ポーション、聖水の作成費を納金するように!」
「そ、そんなお金ないわ!!」
「では借金ですね」
「ひいいいいっ!」
死者たちに容赦と言う言葉は一つもなく、ノノス村の村人は今までどれほど非常識でアリアに頼り切り迷惑をかけていたことにやっと気が付いたのだった。
「男神神殿の神官達はまともに魔獣退治も出来ぬ神官見習い以下、女神神殿の神官は癒しの魔法も碌に使えない上に回復ポーションは泥水並みのこちらも見習い神官以下……聖人聖女を無断で名乗り、寄付金を不正に着用し、全て娯楽の為に使っていた」
「間違いありません」
「そして村の警備は聖女アリア一人に任せ、結界も彼女が一人で作っていた。聖水やポーションも彼女が一人で行っていた」
「その通りです」
「しかも彼女に毎日パンを焼かせ、それを奪い取り対価を払う事もない。家の修理、畑仕事、子守まで彼女に?何故?」
「分かりませんが、村長がアリア様にやらせればよい、そう村民に伝え、鵜呑みにしたと」
「意味が分からん」
「私達にも分かりませんでしたが、恐ろしい事にそれが当然という顔をしておりました。「アリアはいつ帰ってくるのか、自分達はとても困っている」と訴えられる始末」
使者たちの隊長ですら思い出してため息が漏れる。
「アリアを見たのかい!?いつまで外をほっつき歩いているんだ!すぐ帰るように伝えておくれ!」
「アリア様はこの村へはもう帰りませんよ。彼女は半魔神様の聖女です。王都でそれは一生懸命働いておいでです」
「なんで!?アリアがいないと畑が進まないよ!」
「何故、半魔神の聖女であらせられるアリア様が畑を手伝うのですか?逆でしょう。あなた方がアリア様の半魔神様への奉仕を手伝うべきところです」
「え……だって村長が……」
「あの男は犯罪者です。そして村長に言われてもそんな訳ないでしょう。何故聖女様が畑仕事を?畑は農民の仕事です」
「え……?」
「アリアに早く戻って朝にパンを焼くように伝えてくれ!パン屋のパンじゃ不味すぎる!」
「何故です?半魔神の聖女たるアリア様が朝早くからパンを焼く理由は?」
「え……だってアリアのパンの方が美味いから」
「当然です。半魔神の神官達が作るお料理はどれも美味しい。でも何故村人全員のパンをアリアさんが焼かねばならないのです?半魔神様の聖女のパンなどあなた方が買えるほど安い物ではありませんよ?」
「でも今まで……ほとんどタダで貰って……」
「それが異常だと普通気が付きますよね?パンはパン屋で。パン屋にすらきちんとお金を払うのに美味しい半魔神様のパンを頂けるというのにタダなどあり得ませんよ」
「え……」
「アリアに子守の手伝いを」「何故」
「アリアに掃除を」「何故」
「アリアに」「アリアに」「アリアに」
村人は本当に自分達が面倒くさくてやりたくない事を全て押し付けていたのだ。
「対価を頂きます。半魔神の聖女たるアリア様を使うという事はどれほど大変な事なのか。貴方たちは知らねばなりません。マグノリア様が王宮で栄養指導の名の下、料理を作っていた時より高い給金を請求することになります。覚悟をするように」
「ひ……ひいいい!」
「男神神殿、女神神殿も中央からのお達しを待つように。神官どころか見習い程度の実力で何が聖人、何が聖女ですか。半魔神神殿に賠償金と村の警護代、ポーション、聖水の作成費を納金するように!」
「そ、そんなお金ないわ!!」
「では借金ですね」
「ひいいいいっ!」
死者たちに容赦と言う言葉は一つもなく、ノノス村の村人は今までどれほど非常識でアリアに頼り切り迷惑をかけていたことにやっと気が付いたのだった。
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