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王都に
48 ノノス村調査隊3
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「村長はいるか?」
この村に相応しくないほど立派で大きな家が村長に家だそうだ。遠くからでも良く見え、小さな村に不釣り合いだと誰もが思う。
「へ?ミラージ公爵様の使者!?ど、どうぞおあがりください!汚い家ですがっ!」
使者たちは中へ通され、顔を顰めるしかない。この村の村長の家にしては立派過ぎる。大きな扉と絨毯の敷かれた廊下。家には数人メイドがいるようだし、絵画の掛かった廊下。下位の貴族の屋敷と言っても通じるほどの立派なものだった。
こんな家、この小さな村で作れるはずがない。
「……こいつで間違いないですね」
「ああ、マグノリア様がアリア様へ送ったという金はこいつが全て着服したようだな」
最初から分かった通り、この村の連中は「全員クロ」であり、村長が「一番マックロ」で間違いないようだ。これなら調査はスムーズに終わり、半魔神様の祝日祭に間に合いそうだと5人は胸を撫でおろしていた。
どこかほっとした5人の使者の様子を村長は勿論勘違いした。村長の家は村に似つかわしくないほど、豪華である。その事で何か言われるのではないかと緊張していたが「これは違う」と勝手に解釈したのだ。
「ささ、使者様。遠いところわざわざお越し下り何かとお疲れでしょう。我が家でごゆるりとおくつろぎください。誰か、使者さまにお茶を」
「畏まりました。旦那様」
勘違いした村長は使者たちをもてなし始めた。使者たちは丁寧に断るが、何を勧められた、どういう反応であるか、家財の様子などを細かく見ていて、そして最後に
「この村には綺麗所の店もあります故、これで楽しまれて来てはいかがでしょうか?」
と、金貨の入った袋を渡された時点で、全員で頷いた。
「村長。王都におられる半魔神の聖女マグノリア様より、こちらに住んでいた半魔神の聖女アリア様への手紙と送金、全てお返し願おう」
「は?」
「裏は全て取れておる。王都より定期的に送られる手紙と金をアリア様の所へお持ちせず、村長の所へ持っていくように指示されたと雇っていた者もすでに自白済み。そしてこの村の村長には相応しくない暮らしぶりはどこから金を調達した?皆、家探しだ」
「よし、手分けして探そう」
「お、おやめ……おやめくださいっ!!」
慌てて使者たちを止めようとするが使者は5人で、村長は一人。居間に残り、開始の合図をした隊長が彼の4人の部下を止めようとする村長の腕をつかんだ。
「慌てずとも。しかし恐ろしいな……長年にわたり積み重ねてきた悪事。バレなかったからと言ってそれが日常か?少し考えたらわかるはずだぞ、この豊かではない村でこんな生活が出来るわけがないことくらいは。金は全て返してもらう。足りなければ全てを売り払ってな」
「ひ、そ、そんな、そんなこと……」
「ミラージ公は全てご存じだ」
「なんで……どうして、こんな事に……」
「ミラージ公の大切な甥御さんを助けた聖女様がいてな?分かるか、お前たちがずっと顎でこき使い不当な扱いをしてきたアリア様だ」
「ま、まさか……アリアが告げ口を!!あの娘、この村に置いてやった恩も忘れて!」
激昂する村長の腕を掴んでいた隊長の指に力が入る。
「聖女アリア様はこの村の事を悪く言った事などなかったのに、なんと恩知らずな!お前達に恥を知るという言葉はないのか!」
「痛い……ひい!お助けを!!」
そして次々と証拠の品を見つけてくる。
「ありました。マグノリア様からの手紙です!……しかし送られた金額もどうもマグノリア様が申されていたのより少ないですね」
「マグノリア様がこの村に送るお金もどこかでピン跳ねされていたようです」
「はは、その事実はマグノリア様にお伝えせねばならないな。かの聖女は中々に激しい気性だと聞く」
ミラージ公の使者はあっという間にノノス村の悪事をあぶり出してしまった。多分、祝日祭で美味しい物をたらふく食べたかった……いや、それ以外に理由があったに違いないが、とにかく祝日祭に間に合うよう、素早く正確に任務を遂行したのだった。
この村に相応しくないほど立派で大きな家が村長に家だそうだ。遠くからでも良く見え、小さな村に不釣り合いだと誰もが思う。
「へ?ミラージ公爵様の使者!?ど、どうぞおあがりください!汚い家ですがっ!」
使者たちは中へ通され、顔を顰めるしかない。この村の村長の家にしては立派過ぎる。大きな扉と絨毯の敷かれた廊下。家には数人メイドがいるようだし、絵画の掛かった廊下。下位の貴族の屋敷と言っても通じるほどの立派なものだった。
こんな家、この小さな村で作れるはずがない。
「……こいつで間違いないですね」
「ああ、マグノリア様がアリア様へ送ったという金はこいつが全て着服したようだな」
最初から分かった通り、この村の連中は「全員クロ」であり、村長が「一番マックロ」で間違いないようだ。これなら調査はスムーズに終わり、半魔神様の祝日祭に間に合いそうだと5人は胸を撫でおろしていた。
どこかほっとした5人の使者の様子を村長は勿論勘違いした。村長の家は村に似つかわしくないほど、豪華である。その事で何か言われるのではないかと緊張していたが「これは違う」と勝手に解釈したのだ。
「ささ、使者様。遠いところわざわざお越し下り何かとお疲れでしょう。我が家でごゆるりとおくつろぎください。誰か、使者さまにお茶を」
「畏まりました。旦那様」
勘違いした村長は使者たちをもてなし始めた。使者たちは丁寧に断るが、何を勧められた、どういう反応であるか、家財の様子などを細かく見ていて、そして最後に
「この村には綺麗所の店もあります故、これで楽しまれて来てはいかがでしょうか?」
と、金貨の入った袋を渡された時点で、全員で頷いた。
「村長。王都におられる半魔神の聖女マグノリア様より、こちらに住んでいた半魔神の聖女アリア様への手紙と送金、全てお返し願おう」
「は?」
「裏は全て取れておる。王都より定期的に送られる手紙と金をアリア様の所へお持ちせず、村長の所へ持っていくように指示されたと雇っていた者もすでに自白済み。そしてこの村の村長には相応しくない暮らしぶりはどこから金を調達した?皆、家探しだ」
「よし、手分けして探そう」
「お、おやめ……おやめくださいっ!!」
慌てて使者たちを止めようとするが使者は5人で、村長は一人。居間に残り、開始の合図をした隊長が彼の4人の部下を止めようとする村長の腕をつかんだ。
「慌てずとも。しかし恐ろしいな……長年にわたり積み重ねてきた悪事。バレなかったからと言ってそれが日常か?少し考えたらわかるはずだぞ、この豊かではない村でこんな生活が出来るわけがないことくらいは。金は全て返してもらう。足りなければ全てを売り払ってな」
「ひ、そ、そんな、そんなこと……」
「ミラージ公は全てご存じだ」
「なんで……どうして、こんな事に……」
「ミラージ公の大切な甥御さんを助けた聖女様がいてな?分かるか、お前たちがずっと顎でこき使い不当な扱いをしてきたアリア様だ」
「ま、まさか……アリアが告げ口を!!あの娘、この村に置いてやった恩も忘れて!」
激昂する村長の腕を掴んでいた隊長の指に力が入る。
「聖女アリア様はこの村の事を悪く言った事などなかったのに、なんと恩知らずな!お前達に恥を知るという言葉はないのか!」
「痛い……ひい!お助けを!!」
そして次々と証拠の品を見つけてくる。
「ありました。マグノリア様からの手紙です!……しかし送られた金額もどうもマグノリア様が申されていたのより少ないですね」
「マグノリア様がこの村に送るお金もどこかでピン跳ねされていたようです」
「はは、その事実はマグノリア様にお伝えせねばならないな。かの聖女は中々に激しい気性だと聞く」
ミラージ公の使者はあっという間にノノス村の悪事をあぶり出してしまった。多分、祝日祭で美味しい物をたらふく食べたかった……いや、それ以外に理由があったに違いないが、とにかく祝日祭に間に合うよう、素早く正確に任務を遂行したのだった。
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