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王都に
41 神は降臨するものではないぞ
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「お久しぶりね、ミラージ公」
「こ、これはマグノリア様!?お城付きの聖女様が何故我が家に!?」
「……やっぱりそういう風にとられてたのね」
半魔神の聖女でアリアの師匠でもあるマグノリアははぁと大きくため息をついた。
「王と王妃のたっての願いで、食の細かった王子の為に少しの間だけ食事指導についてただけなのに心外だわ。私のお給料も不正に使われてたみたいだし、もう城には戻らなくて良さそうね」
「不正……なんとも聞き逃せないですな」
「私の事よりまずアリアの事よ。ケビン君の話ではもう面識があるらしいから直接ミラージ公に訴えた方が早いと思ってやってきたの」
マグノリアの隣には一緒に帰ってきたケビンが立っていた。
「道々、マグノリア様にお話を伺いました。あの優しくて親切なアリアお姉さんを騙していた人がいっぱいいるなんて僕、許せません!」
「ノノス村の事ですな?」
「ええ、がっちりぎっちり締め上げて、さらに不正に受け取ったお金を全部返してもらおうと思ってね?」
「なるほど、ここで不正の話が繋がってくるんですね?聖女マグノリア、立ち話もなんですから執務室で詳しくお聞かせ願います。ちょうど良い、ケビンも来なさい。お前も辺境伯の息子として不正をたださねばならない時は必ず来る。学ぶいい機会だ」
「分かりました、叔父様!僕もアリアお姉さんの為に何かしたい!」
ぐっと拳を握り締める甥を頼もしい目で見てから、ミラージ公は二人を執務室に案内した。そこでマグノリアからアリアへ毎月大量のお金が送られていたのに、全てどこか……間違いなく村長の所で着服され、アリアには一銭も届いていない事を知る。
「手紙すら渡していなかったみたいなの。しかもアリアには私がアリアの事を嫌って村を出たなんて嘘まで吹き込んで。私自らが出向いて制裁を加えたい所なんだけれども、祝日祭が近くなっているでしょう?今年は盛大な事になりそうだからそっちの手伝いをしたいのよ」
「確かに……しかしマグノリア様、盛大とは?確かに最近の研究結果の為に半魔神様は非常に注目されている神。そのせいですか?」
「違うんです、叔父様。アリアお姉さんがべつの神様も呼ぶんです。アリアお姉さんが呼ぶと神様が地上に遊びに来てくれるんですって。私もお会いしてみたいなぁ」
「は?」
「凄いですよね、アリアお姉さん!少し前は双子神様が遊びに来ていらして、その時のおやつがクッキーなのに、真ん中に飴が入っていてキラキラしていてとっても美味しかったと!」
ミラージ公は右手でケビンの話を一度止め、目を閉じ左手で自分の目頭を揉んだ。私は疲れているのかな?と言う言葉がぴったり来そうな仕草だ。
「で?なんだって?ケビン。双子神様が、どうしたと?」
「だから遊びに来られたんですって。神殿の中庭に。ちょうどお参りに来ていた子供達とかけっこをしたり輪投げをしたり……」
「ケビンよ、普通神はそんな簡単に降臨したりするものではないぞ」
神……いや、その使徒の降臨でさえ幾多の魔法陣を描き、大量の力を注ぎ、何十年がかりで完成させるときいたことがあるミラージ公はまだ目頭を揉み続けている。
「でも、しょっちゅう神様が来ていらっしゃるんですよね?マグノリア様?」
「ええ、酒神と半魔神様もちょいちょい来てますね」
「は?」
威厳も何もかも吹っ飛んだミラージ公は口をぽかんと開けるしかなかった。
「ミラージ公。アリアは凄い女の子なのよ?」
茶目っ気たっぷりに片目を閉じてウインクするマグノリアに、ミラージ公は自分の常識の狭さをまざまざと見せつけられるのであった。
「こ、これはマグノリア様!?お城付きの聖女様が何故我が家に!?」
「……やっぱりそういう風にとられてたのね」
半魔神の聖女でアリアの師匠でもあるマグノリアははぁと大きくため息をついた。
「王と王妃のたっての願いで、食の細かった王子の為に少しの間だけ食事指導についてただけなのに心外だわ。私のお給料も不正に使われてたみたいだし、もう城には戻らなくて良さそうね」
「不正……なんとも聞き逃せないですな」
「私の事よりまずアリアの事よ。ケビン君の話ではもう面識があるらしいから直接ミラージ公に訴えた方が早いと思ってやってきたの」
マグノリアの隣には一緒に帰ってきたケビンが立っていた。
「道々、マグノリア様にお話を伺いました。あの優しくて親切なアリアお姉さんを騙していた人がいっぱいいるなんて僕、許せません!」
「ノノス村の事ですな?」
「ええ、がっちりぎっちり締め上げて、さらに不正に受け取ったお金を全部返してもらおうと思ってね?」
「なるほど、ここで不正の話が繋がってくるんですね?聖女マグノリア、立ち話もなんですから執務室で詳しくお聞かせ願います。ちょうど良い、ケビンも来なさい。お前も辺境伯の息子として不正をたださねばならない時は必ず来る。学ぶいい機会だ」
「分かりました、叔父様!僕もアリアお姉さんの為に何かしたい!」
ぐっと拳を握り締める甥を頼もしい目で見てから、ミラージ公は二人を執務室に案内した。そこでマグノリアからアリアへ毎月大量のお金が送られていたのに、全てどこか……間違いなく村長の所で着服され、アリアには一銭も届いていない事を知る。
「手紙すら渡していなかったみたいなの。しかもアリアには私がアリアの事を嫌って村を出たなんて嘘まで吹き込んで。私自らが出向いて制裁を加えたい所なんだけれども、祝日祭が近くなっているでしょう?今年は盛大な事になりそうだからそっちの手伝いをしたいのよ」
「確かに……しかしマグノリア様、盛大とは?確かに最近の研究結果の為に半魔神様は非常に注目されている神。そのせいですか?」
「違うんです、叔父様。アリアお姉さんがべつの神様も呼ぶんです。アリアお姉さんが呼ぶと神様が地上に遊びに来てくれるんですって。私もお会いしてみたいなぁ」
「は?」
「凄いですよね、アリアお姉さん!少し前は双子神様が遊びに来ていらして、その時のおやつがクッキーなのに、真ん中に飴が入っていてキラキラしていてとっても美味しかったと!」
ミラージ公は右手でケビンの話を一度止め、目を閉じ左手で自分の目頭を揉んだ。私は疲れているのかな?と言う言葉がぴったり来そうな仕草だ。
「で?なんだって?ケビン。双子神様が、どうしたと?」
「だから遊びに来られたんですって。神殿の中庭に。ちょうどお参りに来ていた子供達とかけっこをしたり輪投げをしたり……」
「ケビンよ、普通神はそんな簡単に降臨したりするものではないぞ」
神……いや、その使徒の降臨でさえ幾多の魔法陣を描き、大量の力を注ぎ、何十年がかりで完成させるときいたことがあるミラージ公はまだ目頭を揉み続けている。
「でも、しょっちゅう神様が来ていらっしゃるんですよね?マグノリア様?」
「ええ、酒神と半魔神様もちょいちょい来てますね」
「は?」
威厳も何もかも吹っ飛んだミラージ公は口をぽかんと開けるしかなかった。
「ミラージ公。アリアは凄い女の子なのよ?」
茶目っ気たっぷりに片目を閉じてウインクするマグノリアに、ミラージ公は自分の常識の狭さをまざまざと見せつけられるのであった。
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