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半魔神の残念聖女
24 スープの塩
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「あ、あの、あの、よろしくお願いします……」
「こちらこそよろしくお願いします!半魔神の聖女さま!」
ううう……なぜ私が公爵様のお屋敷の台所にいるのでしょうか?
「皆さんの職場を乱して本当にすいません」
料理人は気難しいひとが多いのに、私のような素人が来て良い所じゃないのに!ケビン君がどうしても!って言うから……。
「あの夜に食べた肉団子のスープが忘れられないんです。お塩味なのに、凄く美味しかった!」
そりゃ外で食べたし、あの時はお腹がすいていたでしょ!そのせいで美味しかったの!
「お願いします!アリアお姉さん」
そう言われたら断れなかった……!もう!そして台所に来た訳なんです。
「えーと……くず肉ってあります?あとお野菜、適当なものと、キノコを……」
はっきり言って、どこにでもある食材。くず肉はもう一度包丁で叩いて柔らかく。だってケビン君が食べたいって言うんだもの。子供の口当たりが良いように。お湯に入れて丁寧に灰汁をとる。
「美味しくなーれ、美味しくなーれ」
くるくるっとかき混ぜていつものお祈り?野菜も食べやすく、でも煮溶けないくらいの大きさに。
キノコもとんとん。美味しくなーれ。
「お塩だけは私の手持ちを使いますね」
お塩で味を整えておしまい。え?簡単?そりゃそうですよ!野外料理ですもん!
「これだけなんですが……」
あっという間に出来上がる。コツなんて何もない、味も至って簡単。
「少し、味見をしても良いですか?」
「どうぞ」
興味深そうな顔見ていたこのお屋敷の料理人がお皿を持っていたので、盛り付けます。
「お口に合うか分かりませんが」
どう見ても貴族様の食べ物じゃないよね?それでも料理人はそっと口をつけてくれた。
「……美味い」
「ありがとうございます!」
お世辞でも褒められると嬉しいものです!
器によそって持っていくと、ケビン君がワクワクした顔で覗き込んできた。
「わー!これです!いただきます」
「はい、どうぞ」
思わず、返事をしてしまった。
「僕、本当は人参が嫌いなんだけど、たべられるようになったんだ。旅をして、その日のご飯も食べられなくて、お風呂も入れなくて……弟は泣くし、大変だった」
ケビン君は学んだんだ。
「食べられる事の喜びと、美味しさ。おいしくなーれの魔法。ありがとうアリアお姉さん」
「はい、どう致しまして」
この子を無事に届けることができてが良かった。ケビン君は絶対いい領主様になると思う。
民と一緒に泣き笑う。そんな素敵な領主様に。
「ふむ、美味いな。肉も滑らかで硬さがなく、臭みもない。塩は良い物を使っておるな?どこの物か聞いてもよいか?」
あれっ?!ミラージ様まで食べてるの?!これ、貴族様の食べ物じゃないよ!!
「塩ですか?2つ山を超えた先の洞窟で取れる岩塩ですよ?」
がたり!ミラージ様は椅子を鳴らして立ち上がった。
「なっ?!岩塩だと?!塩が取れるのか!!」
「え?あ、はい。見つけたのは偶然ですが、塩の洞窟があります」
「誰か!!地図!」
執事さんが慌てて持ってくる。ばっと広げるとちっちゃくノノス村も載っている。
「アリアさん、どっちだ?」
「ここの山の……この辺に洞窟があります」
指で辿った先に丸をつけた。
「良し!!我が領内だ!素晴らしい!でかしたぞ!ありがとうアリアさん!やはり半魔神の聖女様は最高だな!!」
「すぐさま調査隊を!口の硬い者で編成してくれ!しかし必ずあると分かって更にいい塩が取れると分かっているなんて……最高だ!!」
ミラージ様はウキウキワクワクが止まらない!と言った顔。スキップでもし始めそうだ。
「おじさまがこんなにはしゃぐの初めて見ました」
ケビン君も驚いている。
「ケビン!塩とはとても大切な物なのだぞ?しかも美味いなんて最高じゃないか!楽しみだー」
「あの、ミラージ様」
「おお!もちろんアリアさんは今まで通りつかってくだされ。むしろ掘り出したのをお持ちしましょう!して、発見者のアリア殿の取り分も用意しますからのう」
あらあら?スープから塩を採掘する話になってしまいました……。
「こちらこそよろしくお願いします!半魔神の聖女さま!」
ううう……なぜ私が公爵様のお屋敷の台所にいるのでしょうか?
「皆さんの職場を乱して本当にすいません」
料理人は気難しいひとが多いのに、私のような素人が来て良い所じゃないのに!ケビン君がどうしても!って言うから……。
「あの夜に食べた肉団子のスープが忘れられないんです。お塩味なのに、凄く美味しかった!」
そりゃ外で食べたし、あの時はお腹がすいていたでしょ!そのせいで美味しかったの!
「お願いします!アリアお姉さん」
そう言われたら断れなかった……!もう!そして台所に来た訳なんです。
「えーと……くず肉ってあります?あとお野菜、適当なものと、キノコを……」
はっきり言って、どこにでもある食材。くず肉はもう一度包丁で叩いて柔らかく。だってケビン君が食べたいって言うんだもの。子供の口当たりが良いように。お湯に入れて丁寧に灰汁をとる。
「美味しくなーれ、美味しくなーれ」
くるくるっとかき混ぜていつものお祈り?野菜も食べやすく、でも煮溶けないくらいの大きさに。
キノコもとんとん。美味しくなーれ。
「お塩だけは私の手持ちを使いますね」
お塩で味を整えておしまい。え?簡単?そりゃそうですよ!野外料理ですもん!
「これだけなんですが……」
あっという間に出来上がる。コツなんて何もない、味も至って簡単。
「少し、味見をしても良いですか?」
「どうぞ」
興味深そうな顔見ていたこのお屋敷の料理人がお皿を持っていたので、盛り付けます。
「お口に合うか分かりませんが」
どう見ても貴族様の食べ物じゃないよね?それでも料理人はそっと口をつけてくれた。
「……美味い」
「ありがとうございます!」
お世辞でも褒められると嬉しいものです!
器によそって持っていくと、ケビン君がワクワクした顔で覗き込んできた。
「わー!これです!いただきます」
「はい、どうぞ」
思わず、返事をしてしまった。
「僕、本当は人参が嫌いなんだけど、たべられるようになったんだ。旅をして、その日のご飯も食べられなくて、お風呂も入れなくて……弟は泣くし、大変だった」
ケビン君は学んだんだ。
「食べられる事の喜びと、美味しさ。おいしくなーれの魔法。ありがとうアリアお姉さん」
「はい、どう致しまして」
この子を無事に届けることができてが良かった。ケビン君は絶対いい領主様になると思う。
民と一緒に泣き笑う。そんな素敵な領主様に。
「ふむ、美味いな。肉も滑らかで硬さがなく、臭みもない。塩は良い物を使っておるな?どこの物か聞いてもよいか?」
あれっ?!ミラージ様まで食べてるの?!これ、貴族様の食べ物じゃないよ!!
「塩ですか?2つ山を超えた先の洞窟で取れる岩塩ですよ?」
がたり!ミラージ様は椅子を鳴らして立ち上がった。
「なっ?!岩塩だと?!塩が取れるのか!!」
「え?あ、はい。見つけたのは偶然ですが、塩の洞窟があります」
「誰か!!地図!」
執事さんが慌てて持ってくる。ばっと広げるとちっちゃくノノス村も載っている。
「アリアさん、どっちだ?」
「ここの山の……この辺に洞窟があります」
指で辿った先に丸をつけた。
「良し!!我が領内だ!素晴らしい!でかしたぞ!ありがとうアリアさん!やはり半魔神の聖女様は最高だな!!」
「すぐさま調査隊を!口の硬い者で編成してくれ!しかし必ずあると分かって更にいい塩が取れると分かっているなんて……最高だ!!」
ミラージ様はウキウキワクワクが止まらない!と言った顔。スキップでもし始めそうだ。
「おじさまがこんなにはしゃぐの初めて見ました」
ケビン君も驚いている。
「ケビン!塩とはとても大切な物なのだぞ?しかも美味いなんて最高じゃないか!楽しみだー」
「あの、ミラージ様」
「おお!もちろんアリアさんは今まで通りつかってくだされ。むしろ掘り出したのをお持ちしましょう!して、発見者のアリア殿の取り分も用意しますからのう」
あらあら?スープから塩を採掘する話になってしまいました……。
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