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半魔神の残念聖女
20 アリアの「普通」
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「君は自分の価値を分かっていない!モグモグ!うめぇ!何これ」
「チキンのタレ焼きですよ。味が染みてて美味しくできましたね」
「……んまし」
3人で小さなテーブルを囲む。行儀悪く皿をもって掻き込む。手を伸ばしてものを掴む。
「残ってんのもーらい!」
大皿から残りをつまんでくる。
「……俺も」
「お皿に乗ってるので全部ですよ?」
最初から肉を食べる。スープなんてない。前菜もメインもデザートもいっぺんに並ぶ。
「あはは!美味しいですか?」
大口を開けて笑い、暖かいご飯を食べる。
「美味い!アリアさんが作るご飯は最高だ」
こくこく!
やったね!嬉しいな!
これが私が1番楽しい食卓だ。誰かと笑いながらご飯を食べる。
村ではずっと1人だったな。仕事を教えてくれた聖女様がいた時は一緒にご飯を食べたけれど、居なくなってからはずっと一人で寂しく食べていた。
「最高は言い過ぎですよ!でも誰かと食べるってとっても美味しいですよね。村では私一人だったので……」
「……アリアさん、いつも聞いてて不思議だったんだけど、君の村は一体どうなってるんだ?君は半魔神様の聖女だろう?どうして聖女の君が村の雑用を一人でやっているんだい?」
リードさんが真面目な顔で聞いてきました。狩人さんもうんうんと頷いて同意。え?何かおかしいのでしょうか?
「そ、それが普通と聞いていますが、違うのですか……?」
「違うから俺たちがおかしいって聞くって思わなかった?」
「あっ!なるほど……」
「朝から何をやっていたか、教えてみてくれない?」
私は思い出しながらしゃべり始めた。
「まず、日の出くらいに起きて、村の人全員のパンを焼きます」「え?」
「みんながもらいに来るので渡します」「渡す?売るんじゃなくて?」「あ、材料費はおいていってくださいますよ?」
「それから教会の清掃と村全体の掃除と、その日掃除予定の家を回ります」「……」
「あとはいろいろです。女神神殿のポーションを作ったり、男神神殿と賢者神殿の依頼をこなしたり」
「魔獣退治をしたり、広い畑を耕したり。お昼はだいたい30人分くらい作りますね。早くしないと間に合わないんですよね。私ったら遅いからいつも怒られてました」
「……午後は何かしてますか?」
「子守のときもあれば、薪を割る時もありますし。休憩は3時のおやつまでありませんね」
「おやつの後はまた一働きして暗くなってから教会に帰ってご飯を作って食べます。寝る前に明日の仕込みをして寝ます。そんな感じです」
「アリアさん。働くの好きなんですか?」
私はびっくりした。そんなわけないじゃないですか!
「嫌ですよ!私だってゆっくり半魔神様にお祈りしたり、教会をきれいにしたりしたいです。ゆっくり寝たいし、ご飯もゆっくり食べたい……でもそれが普通なんですよね?私が手際が悪いから時間がかかるばっかりで」
二人ともとても可哀想なモノを見る顔です!なんです!その顔‼デザートのゼリーは私が全部食べちゃいますよ‼
「アリアさんの村が異常だということが良くわかりました」
えっ⁉そうなんですか???
私の住んでいた村はどうやら、このミラージ領のはじっこにある村らしく、管轄はミラージ様らしい。明日、会いに行くことになりました。うーん?そんなにおかしいんでしょうか……?
「でもゼリーはくださいね!」
「どうぞ。桃のゼリーですよ」
「⁉ うましぃ‼」
「チキンのタレ焼きですよ。味が染みてて美味しくできましたね」
「……んまし」
3人で小さなテーブルを囲む。行儀悪く皿をもって掻き込む。手を伸ばしてものを掴む。
「残ってんのもーらい!」
大皿から残りをつまんでくる。
「……俺も」
「お皿に乗ってるので全部ですよ?」
最初から肉を食べる。スープなんてない。前菜もメインもデザートもいっぺんに並ぶ。
「あはは!美味しいですか?」
大口を開けて笑い、暖かいご飯を食べる。
「美味い!アリアさんが作るご飯は最高だ」
こくこく!
やったね!嬉しいな!
これが私が1番楽しい食卓だ。誰かと笑いながらご飯を食べる。
村ではずっと1人だったな。仕事を教えてくれた聖女様がいた時は一緒にご飯を食べたけれど、居なくなってからはずっと一人で寂しく食べていた。
「最高は言い過ぎですよ!でも誰かと食べるってとっても美味しいですよね。村では私一人だったので……」
「……アリアさん、いつも聞いてて不思議だったんだけど、君の村は一体どうなってるんだ?君は半魔神様の聖女だろう?どうして聖女の君が村の雑用を一人でやっているんだい?」
リードさんが真面目な顔で聞いてきました。狩人さんもうんうんと頷いて同意。え?何かおかしいのでしょうか?
「そ、それが普通と聞いていますが、違うのですか……?」
「違うから俺たちがおかしいって聞くって思わなかった?」
「あっ!なるほど……」
「朝から何をやっていたか、教えてみてくれない?」
私は思い出しながらしゃべり始めた。
「まず、日の出くらいに起きて、村の人全員のパンを焼きます」「え?」
「みんながもらいに来るので渡します」「渡す?売るんじゃなくて?」「あ、材料費はおいていってくださいますよ?」
「それから教会の清掃と村全体の掃除と、その日掃除予定の家を回ります」「……」
「あとはいろいろです。女神神殿のポーションを作ったり、男神神殿と賢者神殿の依頼をこなしたり」
「魔獣退治をしたり、広い畑を耕したり。お昼はだいたい30人分くらい作りますね。早くしないと間に合わないんですよね。私ったら遅いからいつも怒られてました」
「……午後は何かしてますか?」
「子守のときもあれば、薪を割る時もありますし。休憩は3時のおやつまでありませんね」
「おやつの後はまた一働きして暗くなってから教会に帰ってご飯を作って食べます。寝る前に明日の仕込みをして寝ます。そんな感じです」
「アリアさん。働くの好きなんですか?」
私はびっくりした。そんなわけないじゃないですか!
「嫌ですよ!私だってゆっくり半魔神様にお祈りしたり、教会をきれいにしたりしたいです。ゆっくり寝たいし、ご飯もゆっくり食べたい……でもそれが普通なんですよね?私が手際が悪いから時間がかかるばっかりで」
二人ともとても可哀想なモノを見る顔です!なんです!その顔‼デザートのゼリーは私が全部食べちゃいますよ‼
「アリアさんの村が異常だということが良くわかりました」
えっ⁉そうなんですか???
私の住んでいた村はどうやら、このミラージ領のはじっこにある村らしく、管轄はミラージ様らしい。明日、会いに行くことになりました。うーん?そんなにおかしいんでしょうか……?
「でもゼリーはくださいね!」
「どうぞ。桃のゼリーですよ」
「⁉ うましぃ‼」
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