上 下
15 / 61
半魔神の残念聖女

15 お供しましょう

しおりを挟む
 ミラージ領に向かう馬車は空いていた。私とリードさん、お母さんお兄ちゃんと赤ちゃんの他は

「あれ?昨日馬車で一緒でしたよね?」

 こくり、帽子を目深にかぶっていたが、脱いで頭を下げてくれた。ここまで移動してきた馬車で一緒だった、休憩所では弓で鳥を撃ってくれた人だ。珍しい!
 それともう1人、若い男の人。乗り込んだのはこれで全員だった。

「出発しますよ」

 御者さんの合図でがたり、馬車は動き出す。ここから3日かけてミラージまで行く工程になっています。

「少し回り道になるけど、王都へ行く道としてはミラージから行く方が人通りも多い。あとミラージは大きな街だから、色んなものが見れるな」

「楽しみです!」

 こっそり揺れて軽減を馬車にかける。貴族の馬車なら違うんでしょうが、庶民の乗り合い馬車はこんな物ですよね。
 景色を見るのに窓から顔を出すと、王都方面への馬車が近くを走っていた。

「あーーーーーーー!!」

「えっ?!」

「なんでそっちにぃいいい!!」

 び、びっくりした!どこかで見た事があるような男の人が大声をあげた。慌てて窓から顔を引っ込める。

「どうしたの?アリアさん?」

「な、なんでもないです」

 いきなり大声はびっくりするなぁもう!少し怖かったので外の景色を見るのはもっと街から離れてからにしよう。それがいい!
 はてさて、お守りのブレスレットでも編みましょうか!

「怪我をしませんように。病気になりませんように。お腹を壊しませんように……」

「……」

 隣でリードさんが物珍しそうに見ている。紐をくるくると結んであみあげて行く。結び目の一つ一つに小さな願い事を込めて。
 途中に石を挟んで、紐の色を変える。

「良い出会いがありますように。恋人ができますように。夫婦が円満でありますように。長生きできますように……」

「アリアさん、1本にいくつ願いを入れるんだい?」

「えっ!結び目の数だけですが」

「……だから凄まじい威力なのか…」

「ん?」
 
 小さな声だったので、聞こえませんでしたが、なんでもないよと言われたので気にしない事にします。
 ガタゴトと馬車は予定通り進み、何事もなく今日の野営地に着きました。

 さあ!私の仕事ですね!リードさんに魔除の石を置いてもらい、かまどに火を入れます。泉が側にあるので水を汲み、お湯を沸かします。その間に近くへ野草や薬草を摘みに出かけ、今日は早めに戻りました。
 発酵済みのパン種を出してフライパンでパンを焼き、多い分はマジックバッグに仕舞い込む。

「お姉さん、良い匂い!」

「本当だなぁ。窯もないのにパンって焼けるんだなぁ」

「あら?不思議ですか?本当に焼けてるか味見をします?」

「「するする!」」

 子供と同じ事をしているリードさんが面白くて笑ってしまいます。さて、このまま何事も無ければ良いのですが……。

 旅の無事を半魔神さまにお祈りいたしますが、どうもそうは行かないようです。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

処理中です...