【完結】半魔神の聖女は今日も反省する

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
14 / 61
半魔神の残念聖女

14 見かけたらしょうがない、

しおりを挟む
「信じらんない!信じらんないっ!」

「ごめんってば!アリアさん!」

 次の日、リードさんとは合流したけど、私はまだ怒ってるんですからね!
 
「良いですか?私は女の子!熊ではありません!」

「分かってますってばー謝ってるじゃないですか!」

 本当に分かってるのかなっ!もう!!

「アリアさん、アリアさん。あれ」

 リードさんが指差す先に、昨日まで馬車で一緒だった訳ありさんが辻馬車乗り場で困っている。

「どうする?アリアさん。あれは面倒ごとだ」

「でも見つけちゃいましたね」

「なるほど、そう言う考えもありますか」

 見て見ぬ振りは私の中には無いのです。知らなければ仕方がありませんが、知ってしまったら何とかしてあげたい。

「おはようございます」

 にこりと笑って、お母さんに声をかける。腕の赤ちゃんは泣いている。あらあら!

「ミルクは飲みました?」

「あ、あの……」

 なるほど、持ってなかったと見た。

「リードさん!許して欲しかったら……」

「ひぇええ……怖い!怖いです!アリアさん!」

「しっかり抱っこする!はい!ミルクの角度が低い!もっとあげて!!!」

「ひぃ!」

 リードさんを赤ちゃんのお世話係に任命する。よしよし、筋は良いですよ。

「ミラージ領に行きたくて…」

「ふむ?」

「遠回りになりますが、まあ王都への道はありますよ?」

 赤ちゃんをがっちりホールドしながら、リードさんが首を挟む。男の人の方がしっかり支えてあげられるから赤ちゃんが安心するという話もあります。
 ナイスですよ、リードさん。

「ミラージ領行きの馬車ですね。探しましょう。良ければ御一緒しても?」

 お母さんは泣きそうな顔をするが、私は笑う。赤ちゃんをお母さんに返してリードさんが近くの馬車を回って交渉してくれた。

「おーい、あったぞー。大人3人と子供1人と赤ちゃん1人。その代わり夕食の支度は俺ら持ちが一回で手を打って貰った」

「流石!リードさん」

「頑張ったから許してくれるよなー?」

 私は両手で大きな丸を作った。よーし、頑張っちゃうぞー!

 馬車の確保も終わったので、リードさんと連れ立って、警備隊の詰所に向かった。盗賊の報奨金は思ったよりも多く、ほくほくと懐が暖まった。

「しかしこいつら少し妙でね、気のせいだと思うんだが……」

 やけにおとなしいという。大体盗賊は捕まっても、出せ!と騒いだり、命乞いをしたりと騒がしいものだが、私達が捕まえた盗賊は隅に固まってじっと座っているだけなんだそうだ。

「まるで誰かが助けに来るのを待っているようだよ」

「怖い事言わないでくださいよー!ちゃんと捕まえて置いてくださいね!」

 任せろよ、お嬢ちゃん!そう言ってくれたので、ほっとする。警備隊は頼りになるなぁ!

 馬車に戻る前に市場により食材を買い足す。

「あっ!山羊!」

 山羊を連れた商人に会う事ができたのでミルクも手に入った。これはラッキーだ!

 ぽいぽいとバッグに詰めていると、また物欲しそうに見ているリードさんと目が合う。

「もう!今度は何ですか!」

「そのバッグ、マジックバッグだよね……収納が凄いやつ」

「そうですよ!半魔神様は元々はポーターですもの!マジックバッくらい作れます!」

 リードさんがぎょっと眼を見開いた。

「アリアさん?俺の聞き間違いでなければつくるって言った?!」

「言いましたけど?」

「いやいや、アリアさん。マジックバッグは古代のアーティファクトだろう?現代では作り手は絶滅していないって……」

「なんですかー!もう!信じられないなら作ってあげますよ!その代わりそんなに大きいものは作れませんけど!」

 アリアさんは小さなバッグを取り出す。種も仕掛けもないバッグに

「いっぱいはいるようになーれ!はい、どうぞ?」

 信じられないが憧れのマジックバッグが出来上がっていた。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

処理中です...