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半魔神の残念聖女
6 ワイワイ!乗り合い馬車 傭兵さん
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乗り合いの辻馬車に、一緒に乗り込んだ少女はもの珍しそうに流れる景色を見ていた。
「わぁー凄い!景色がはやーい」
どこかの鄙びた村の出身なのだろうか。珍しくも無いはずの馬車からの風景を、それはそれは目を輝かせて見ている。
馬車の車輪が大きな岩を踏んだ。
がたん!
「きゃっ!」「あぶねぇ!」
予想通り、少女は馬車から転がり落ちそうになり、俺は咄嗟に手を伸ばして襟首を掴んだ。うん、これ子供がよくやる奴な?
「あ、ありがとうございます!助かりました」
「良かったな、落ちなくて」
「ハイ!」
次の街へ行く途中の乗り合い馬車だ。少女を座席に戻してやると、照れ隠しに頬をポリポリとかいた。
聞けば少女も一人旅の途中らしい。大丈夫か?こんな世間知らずで?
「私は王都で開かれる半魔神さまの祝日祭に行きたくて。こう見えても半魔神さまにお仕えしてるんですよ」
「な……!半魔神様の使徒様であらせられたか!」
ざわり!辻馬車の中が騒めいた。半魔神の聖女と言えば、超希少だぞ!大体半魔神様に選ばれるだけで、その人物は王族クラスの能力の持ち主じゃないか!
それが聖女?!嘘だろ?!
「え?そんな大層なものじゃないですよ!」
アリアと名乗った少女は恥ずかしそうだ。も、もしかして、アレか?!「半魔神の晩餐」を味わえる機会が?!
「では、では!休憩場で食事の用意などは……」
「?自分の分はありますよ」
「あ、ですよね……」
そりゃそうだよなぁ~!なんせ乗り合い馬車だもんなぁ……。そんな見ず知らずの奴に飯を作ってくれる訳ないよなぁ。俺はがっくりと項垂れ、馬車内に悲しみの空気が流れる。
みんな、常識で考えろ?聖女さまはなにも間違ってないぞ。知らない女性に飯を集ろうとする方が悪いのだ。
すいません、半魔神様。貴方の作ったと言う伝説の飯を食えるのかと少し期待してしまいました。
「あれ?あれ??どうしたんですか???」
「いえ、何でもないのです。聖女様」
「……そ、そうですか…?」
聖女様はオロオロと顔を曇らせてしまった。すいません、俺たちががっついてるだけです。
何せ半魔神の聖女様が表舞台に現れたのが7.8年前、すぐに王に召されて市井には降りて来られなくなってしまわれた。
あの時はクソ王族め!と暴動が起きそうだったな。なんでまともな聖女様を召し上げるんだ!女神教のビッチでいいじゃねーか!クソが!
所が俺たち市井の聖女様、半魔神の聖女様は
「な、何かお昼を用意しましょうか……?」
神かな?!聖女様だった!
鼻歌を歌いながら聖女様は肉を叩いている。その包丁捌きの素晴らしいこと!料理に疎い俺でも分かる華麗なテクニックだ。
「普通ですよー。あ、味見でもします?自己流なので自信はないですが」
にこっと笑ったんだ!可愛いーーー!ん、違和感が……?
差し出された小皿を受け取ると、良い香りがする。
「ただの塩味ですけど」
いや、この塩はなんか違う……?はっ?!
「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
あれだ!楽しそうに大きな鍋をかき回している聖女様!それは伝説の半魔神魔法「おいしくなーれ」ではないですか?!
かき回すたびに鍋の中にキラキラが増えて行く。俺の味見した皿の中にもキラキラがある。
ああ!美味い!体の疲れが吹っ飛ぶようだーーーーーー……。
「美味い!」
「良かったです」
聖女様が作った「ただの塩味の肉団子スープ」は馬車に乗っていた全員に振る舞われた。全部飲み干してしまいたいが
「独り占めはいけませんよ」
と、聖女様に釘を刺されてしまったので諦める。
「すいません、足りなかったんですよね。男の人ってすぐお腹空きますもんね」
と、こっそり大きなふわふわのパンを下さった。神かな?!聖女だった!そのパンを隠れて食べていたら乗り合わせていた傭兵仲間に見つかって、殴り合いの喧嘩をしてしまった。
俺が貰ったんだ!おれのだろ!
頬を腫らして、出発の時間に馬車に戻ると
「ええええー?!」
と、言いながら
「あの……ご迷惑でなかったら、治してもいいですか……?見てるだけで痛そうで」
と、なんと無料で回復魔法もかけてくれた!神?!略
そして和気藹々と何事もなく、街へつき聖女様に例を言ってわかれた。
みな、飯の美味さに忘れて気がついていないが、この馬車、一度も襲われなかったぞ?これも半魔神様の加護に違いない!
「わぁー凄い!景色がはやーい」
どこかの鄙びた村の出身なのだろうか。珍しくも無いはずの馬車からの風景を、それはそれは目を輝かせて見ている。
馬車の車輪が大きな岩を踏んだ。
がたん!
「きゃっ!」「あぶねぇ!」
予想通り、少女は馬車から転がり落ちそうになり、俺は咄嗟に手を伸ばして襟首を掴んだ。うん、これ子供がよくやる奴な?
「あ、ありがとうございます!助かりました」
「良かったな、落ちなくて」
「ハイ!」
次の街へ行く途中の乗り合い馬車だ。少女を座席に戻してやると、照れ隠しに頬をポリポリとかいた。
聞けば少女も一人旅の途中らしい。大丈夫か?こんな世間知らずで?
「私は王都で開かれる半魔神さまの祝日祭に行きたくて。こう見えても半魔神さまにお仕えしてるんですよ」
「な……!半魔神様の使徒様であらせられたか!」
ざわり!辻馬車の中が騒めいた。半魔神の聖女と言えば、超希少だぞ!大体半魔神様に選ばれるだけで、その人物は王族クラスの能力の持ち主じゃないか!
それが聖女?!嘘だろ?!
「え?そんな大層なものじゃないですよ!」
アリアと名乗った少女は恥ずかしそうだ。も、もしかして、アレか?!「半魔神の晩餐」を味わえる機会が?!
「では、では!休憩場で食事の用意などは……」
「?自分の分はありますよ」
「あ、ですよね……」
そりゃそうだよなぁ~!なんせ乗り合い馬車だもんなぁ……。そんな見ず知らずの奴に飯を作ってくれる訳ないよなぁ。俺はがっくりと項垂れ、馬車内に悲しみの空気が流れる。
みんな、常識で考えろ?聖女さまはなにも間違ってないぞ。知らない女性に飯を集ろうとする方が悪いのだ。
すいません、半魔神様。貴方の作ったと言う伝説の飯を食えるのかと少し期待してしまいました。
「あれ?あれ??どうしたんですか???」
「いえ、何でもないのです。聖女様」
「……そ、そうですか…?」
聖女様はオロオロと顔を曇らせてしまった。すいません、俺たちががっついてるだけです。
何せ半魔神の聖女様が表舞台に現れたのが7.8年前、すぐに王に召されて市井には降りて来られなくなってしまわれた。
あの時はクソ王族め!と暴動が起きそうだったな。なんでまともな聖女様を召し上げるんだ!女神教のビッチでいいじゃねーか!クソが!
所が俺たち市井の聖女様、半魔神の聖女様は
「な、何かお昼を用意しましょうか……?」
神かな?!聖女様だった!
鼻歌を歌いながら聖女様は肉を叩いている。その包丁捌きの素晴らしいこと!料理に疎い俺でも分かる華麗なテクニックだ。
「普通ですよー。あ、味見でもします?自己流なので自信はないですが」
にこっと笑ったんだ!可愛いーーー!ん、違和感が……?
差し出された小皿を受け取ると、良い香りがする。
「ただの塩味ですけど」
いや、この塩はなんか違う……?はっ?!
「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
あれだ!楽しそうに大きな鍋をかき回している聖女様!それは伝説の半魔神魔法「おいしくなーれ」ではないですか?!
かき回すたびに鍋の中にキラキラが増えて行く。俺の味見した皿の中にもキラキラがある。
ああ!美味い!体の疲れが吹っ飛ぶようだーーーーーー……。
「美味い!」
「良かったです」
聖女様が作った「ただの塩味の肉団子スープ」は馬車に乗っていた全員に振る舞われた。全部飲み干してしまいたいが
「独り占めはいけませんよ」
と、聖女様に釘を刺されてしまったので諦める。
「すいません、足りなかったんですよね。男の人ってすぐお腹空きますもんね」
と、こっそり大きなふわふわのパンを下さった。神かな?!聖女だった!そのパンを隠れて食べていたら乗り合わせていた傭兵仲間に見つかって、殴り合いの喧嘩をしてしまった。
俺が貰ったんだ!おれのだろ!
頬を腫らして、出発の時間に馬車に戻ると
「ええええー?!」
と、言いながら
「あの……ご迷惑でなかったら、治してもいいですか……?見てるだけで痛そうで」
と、なんと無料で回復魔法もかけてくれた!神?!略
そして和気藹々と何事もなく、街へつき聖女様に例を言ってわかれた。
みな、飯の美味さに忘れて気がついていないが、この馬車、一度も襲われなかったぞ?これも半魔神様の加護に違いない!
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