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半魔神の残念聖女
2 大袈裟ですよ
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「あんれーーー!あんた!半魔神様の聖女様なんか!!!」
おじさんはかなり大声で驚いた。
「え?ええ。珍しいですか?」
何せ一応神だけど、マイナーすぎてなり手がいないのだ。半魔神様のごめんなさい。私はあなたの事が大好きですよ!
「珍しいねぇ!私の住んでる町にも半魔神様の聖女様はおられなかった!いやぁ!ありがたや!ありがたや!このサンドイッチの美味いこと!」
「私の残りですいません……」
おじさんと話しているとお腹が空いたので、残りのサンドイッチを取り出したら、おじさんが驚いたのだ。
このウェストポーチは半魔神様の加護がしっかりかかっていて、かなりの荷物を詰め込める。いわゆるマジックバッグになっている。
私の家にあった家財の一切合切詰め込んで持ってきたのだ。
半魔神様はもともとパーティーの荷物係。マジックバッグを作るのはお手の物だ。この力で勇者さまの荷物を運んだのね。
「すんばらしいなぁ!さすが半魔神様の聖女さま!」
「ふふ、おだててもサンドイッチしか出ませんよ!」
「いやぁ!こんな美味いサンドイッチ食ったのは初めてですよ!美味い!」
「ははは!大袈裟ですって」
半魔神様はパーティーの雑用も務めていらっしゃったので、お料理も加護があるのです。過酷な戦いで、ご飯くらいは美味しいものを食べて英気を養いたいですものね。
やっぱり半魔神様のお考えは好きだなぁ。あ!神像をポーチにしまいっぱなしだ。後で出してお祈りしようっと。
今日もご飯が美味しいです。ありがとうございます!
バスケットの中身をすっかり食べてしまい、私達は他愛もない話をしながら街道を進む。馬車は順調だった。
私はウェストポーチから紐を取り出して、編み始める。
「お嬢さん、何を始めたんだい?」
「えっと、村で良く作ってたおまじないのブレスレットなんですけど、ほら、王都まで旅費やら宿泊費がいるじゃないですか。売れたら良いなって思いまして」
「ほう!!半魔神様の聖女様の護符!よ、良ければ私にも一つお譲り下さいませんか!」
「もちろんですよ。そうですね、旅の安全なんて良いかもしれませんね。あ、護石をもう一つ増やして魔物避けもつけた方が良いですね!今、編みますから」
おじさんは震え上がる。
「そ!そんな高価なもの!買えません!!」
「へ?高価じゃないですよ。どこにでもある石と紐ですから。差し上げますよ!乗せてくれたお礼です」
「お、お嬢さん!半魔神様の護符なんて言えばひと財産だよ!」
「まーた!大袈裟なんですよ!うちの村では使い捨てみたいなものですよ!……まだきれいなうちに捨てられるのは少し悲しいですが……」
あわわ!罰当りな!おじさんはそう言っていたが、ほんと大袈裟!
網目も揃ってきれいに出来たブレスレットをおじさんに手渡した。
「ふんがー!貴重なものをありがとうございます!聖女様!」
「だから、大袈裟ですって!」
ふんがーって何?鼻息??面白いおじさんはペコペコと頭を下げ、町まで連れて行ってくれた。途中、町の門番さんに話も通してくれたみたいであっさり町に入る事ができた。
「聖女さま。この街に半魔神様の教会はありますが、資格者が居なくて誰もお勤めしておりません。良ければ、お祈りをしていただけると……」
「あっ!良いですね!ついでに今晩泊まらせて貰いましょう」
「!ありがとうございます!ありがとうございます!」
おじさんは丁寧に教会の前まで送ってくれた。教会の世話をしているという隣の家の人に話すと、こちらも喜んで鍵を渡してくれた。
一応神だからなーー。こんなに良い神様なのに、なり手がいないのよね。一応神だからなーー。
村の私の家よりもちょっと教会らしい建物だった。庭は手入れされているし、中も最低限はきれいだった。
お隣さんはマメな人らしい。とっても嬉しい!
窓を開け、空気を入れる。
籠もった空気が入れ替わって気持ちがいい。
「少し掃除をしますか!」
テキパキと磨いて行く。何せ半魔神様はパーティーの雑用。掃除もお上手であったそうで、その加護が私にもバッチリ備わっているのだ。きれいになーれできれいにしても良いんだけど、今日は手で掃除したい気分!
この教会にあった神像を磨くと、半魔神様も笑顔になられた気がする。私もなんだか嬉しくてにっこり笑った。一晩よろしくお願いしますね!
「掃除したらお腹空いたーご飯作ろ!」
私はキッチンに向かう。半魔神様の教会には必ずキッチンがあるのだ!ふふふ!
「水は井戸かな?薪は……あ!ある!嬉しい!」
私はワクワクし始めた。お料理は楽しい!
「あ!窯がある!わーー!何作ろうかな!あ!明日の朝はパン焼こう!クッキーも作っちゃおうかなー!」
楽しくてくるくる回ってしまった。
確かに、半魔神の教会に灯りがついたと街の人は噂した。しかし、すぐに消えたのででたらめだと言う人が大半だった。
が、次の日の早い朝。物凄くいい香りが教会のあたり一面に漂い、人々は混乱した。
教会を管理していた家の主人が、恐る恐る戸を叩くと、若い女の子が顔を出し、ニコニコと笑いながら主人にパンを手渡した。
「お代金を」
「え?ああでは…!多いですよ!」
「半魔神様のパンをいただけるのなら安すぎるほどです!」
「またまたー大袈裟な!」
そんなやり取りをしていたようたが、女の子は折れ、受け取ったようだ。
見た事もないくらいふわっふわで良い香りの輝かんばかりのパンを手に隣人は踊りながら帰宅した。早く食べなくちゃ!
おじさんはかなり大声で驚いた。
「え?ええ。珍しいですか?」
何せ一応神だけど、マイナーすぎてなり手がいないのだ。半魔神様のごめんなさい。私はあなたの事が大好きですよ!
「珍しいねぇ!私の住んでる町にも半魔神様の聖女様はおられなかった!いやぁ!ありがたや!ありがたや!このサンドイッチの美味いこと!」
「私の残りですいません……」
おじさんと話しているとお腹が空いたので、残りのサンドイッチを取り出したら、おじさんが驚いたのだ。
このウェストポーチは半魔神様の加護がしっかりかかっていて、かなりの荷物を詰め込める。いわゆるマジックバッグになっている。
私の家にあった家財の一切合切詰め込んで持ってきたのだ。
半魔神様はもともとパーティーの荷物係。マジックバッグを作るのはお手の物だ。この力で勇者さまの荷物を運んだのね。
「すんばらしいなぁ!さすが半魔神様の聖女さま!」
「ふふ、おだててもサンドイッチしか出ませんよ!」
「いやぁ!こんな美味いサンドイッチ食ったのは初めてですよ!美味い!」
「ははは!大袈裟ですって」
半魔神様はパーティーの雑用も務めていらっしゃったので、お料理も加護があるのです。過酷な戦いで、ご飯くらいは美味しいものを食べて英気を養いたいですものね。
やっぱり半魔神様のお考えは好きだなぁ。あ!神像をポーチにしまいっぱなしだ。後で出してお祈りしようっと。
今日もご飯が美味しいです。ありがとうございます!
バスケットの中身をすっかり食べてしまい、私達は他愛もない話をしながら街道を進む。馬車は順調だった。
私はウェストポーチから紐を取り出して、編み始める。
「お嬢さん、何を始めたんだい?」
「えっと、村で良く作ってたおまじないのブレスレットなんですけど、ほら、王都まで旅費やら宿泊費がいるじゃないですか。売れたら良いなって思いまして」
「ほう!!半魔神様の聖女様の護符!よ、良ければ私にも一つお譲り下さいませんか!」
「もちろんですよ。そうですね、旅の安全なんて良いかもしれませんね。あ、護石をもう一つ増やして魔物避けもつけた方が良いですね!今、編みますから」
おじさんは震え上がる。
「そ!そんな高価なもの!買えません!!」
「へ?高価じゃないですよ。どこにでもある石と紐ですから。差し上げますよ!乗せてくれたお礼です」
「お、お嬢さん!半魔神様の護符なんて言えばひと財産だよ!」
「まーた!大袈裟なんですよ!うちの村では使い捨てみたいなものですよ!……まだきれいなうちに捨てられるのは少し悲しいですが……」
あわわ!罰当りな!おじさんはそう言っていたが、ほんと大袈裟!
網目も揃ってきれいに出来たブレスレットをおじさんに手渡した。
「ふんがー!貴重なものをありがとうございます!聖女様!」
「だから、大袈裟ですって!」
ふんがーって何?鼻息??面白いおじさんはペコペコと頭を下げ、町まで連れて行ってくれた。途中、町の門番さんに話も通してくれたみたいであっさり町に入る事ができた。
「聖女さま。この街に半魔神様の教会はありますが、資格者が居なくて誰もお勤めしておりません。良ければ、お祈りをしていただけると……」
「あっ!良いですね!ついでに今晩泊まらせて貰いましょう」
「!ありがとうございます!ありがとうございます!」
おじさんは丁寧に教会の前まで送ってくれた。教会の世話をしているという隣の家の人に話すと、こちらも喜んで鍵を渡してくれた。
一応神だからなーー。こんなに良い神様なのに、なり手がいないのよね。一応神だからなーー。
村の私の家よりもちょっと教会らしい建物だった。庭は手入れされているし、中も最低限はきれいだった。
お隣さんはマメな人らしい。とっても嬉しい!
窓を開け、空気を入れる。
籠もった空気が入れ替わって気持ちがいい。
「少し掃除をしますか!」
テキパキと磨いて行く。何せ半魔神様はパーティーの雑用。掃除もお上手であったそうで、その加護が私にもバッチリ備わっているのだ。きれいになーれできれいにしても良いんだけど、今日は手で掃除したい気分!
この教会にあった神像を磨くと、半魔神様も笑顔になられた気がする。私もなんだか嬉しくてにっこり笑った。一晩よろしくお願いしますね!
「掃除したらお腹空いたーご飯作ろ!」
私はキッチンに向かう。半魔神様の教会には必ずキッチンがあるのだ!ふふふ!
「水は井戸かな?薪は……あ!ある!嬉しい!」
私はワクワクし始めた。お料理は楽しい!
「あ!窯がある!わーー!何作ろうかな!あ!明日の朝はパン焼こう!クッキーも作っちゃおうかなー!」
楽しくてくるくる回ってしまった。
確かに、半魔神の教会に灯りがついたと街の人は噂した。しかし、すぐに消えたのででたらめだと言う人が大半だった。
が、次の日の早い朝。物凄くいい香りが教会のあたり一面に漂い、人々は混乱した。
教会を管理していた家の主人が、恐る恐る戸を叩くと、若い女の子が顔を出し、ニコニコと笑いながら主人にパンを手渡した。
「お代金を」
「え?ああでは…!多いですよ!」
「半魔神様のパンをいただけるのなら安すぎるほどです!」
「またまたー大袈裟な!」
そんなやり取りをしていたようたが、女の子は折れ、受け取ったようだ。
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