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228 ずっといていい?
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「イアンが見つかったんですか!義父上!」
「ええ、マシュー子爵の地下室に隠されていました。隠されてなきゃもっと早く見つけられたんですけどね」
「?」
また違う人だ。今度の人も笑いながら駆け寄ってくる……初めて見たのに好きな人だ。おかしいなあ?
「イ、イアンだーー! イアン、私のこと覚えてるかい?! ラセルだよ!」
「?」
知らない、でも君のこと大好きだよ。
「はは、ラセル。思い出さないでいてもらった方が良いぞ。思い出したら横に並ぶのは難しいぞ」
「うっ! そういえばそうかもしれません。私、魔法は全然駄目で……」
「全然じゃないぞ、ラセル。ミニィが求めるレベルが高すぎるだけだ」
「そういうタムさんだってラセル達に厳しすぎるって学園から苦情がきてたじゃないですか。どうして時空斬りから教えようとするかなあ?」
「あれはラセル達が習ってるレベルを知りたいっていうから、ちょっと見せただけの話で」
やっぱりよく分からないけれど、皆笑ってるから良いことがあったんだろうな。
「そうそう、なんと言葉もまともに教えてもらってないんですよ、イアン様ってば」
「えっ!そこから教えて良いのか?! たぎるぅ~!」
「じゃあ全然喋らないのは話せないからなのか、うひょー!新鮮」
「こりゃ楽しくなりそうだなぁ!おい」
やっぱり皆笑ってる。ここは皆楽しそうな所なんだ。だから真似してみたくなった。口をくにゃっと歪めたらおんなじ風になるのかな?
「笑った! イアンが笑った! 可愛いね」
「おう! やっぱりうちの大将は笑っててくんないとな」
「無理矢理作った笑顔じゃなくて、心からな」
「そうだそうだ」
私がほんの少しだけ真似をしたら皆また喜んでくれた、褒めてくれた。何だろうとても楽しくて嬉しい気がする。
「積もる話もあるでしょうが、きっと疲れてますよ。今日はもう眠らせてあげましょうね。明日からずっと一緒なんですから」
「そうだな、初めて風呂に入ったらしいから、疲れただろうしこんなに人に会ったことなかっただろうしな」
「そうだな、この屋敷自慢の義父上のお部屋だな?」
「あのふかふかベッドに寝せてやれ」
私は連れて行かれ、ふかふかに寝転がらされると眠ってしまったらしい。その部屋は薄暗いけど真っ暗じゃなかった。あの私のいた冷たい暗闇とは違ってとても暖かい場所だった。
「今度はごゆっくりですよ、イアン」
目を開けなくても見える人の大きい方がそういった。
「マジでミニィ達、きれいに問題片付けてしまうんだもんな。ありゃ執念だわ」
小さい人の方が困ってるのか喜んでるのか分からないことをいう。でも嬉しそうだから喜んでいるんだろうな。
ミニィ? ミニィってあそこにいたおじさんの一人だよね?きっと凄い人なんだろうな。そんなことを考えていたら気がついたら朝になっていて、知らない人が起こしてくれる。
「イアン様、朝ですよ」
朝は明るい、この人は怖くない。
「お腹が空いたでしょう? 顔を拭きましょうね、それから朝ごはんです。パム様が本日も腕によりをかけてお食事を作ってくださいましたよ」
ご飯は食べれるもののこと。いつも目を開けなくても見える人が置いて行ってくれたものを口に入れてたけど、今日から決まった時間にしか出てこないらしい。
「義父上~ご飯食べに行きましょー」
「ミニィ義父上、イアンは私が連れていきます」
「いやいや、俺が俺が」
「私、私!」
「早くパムのご飯食べに来てくださいーっ! 卵が固まっちゃいますっ」
一番最初に来た人を押しのけて、たくさんの人がやってくる。よくわからないけれど、みんな笑ってる。だから真似をしたら皆もっと笑ってる。
「んあぁ~~、これから義父上に一から十まで教えていくことができるなんて……感動する」
「ははっ! しばらくだけだろうなあ、親の顔できんのは! 俺も楽しみ!」
「きっと思い出したらぶっ倒れるだろうなあ! 大将!」
「思い出さなくてもいいよ! だってイアンはイアンだもん」
「それもそうだな!」
なにかよくわからないけれど、この人達はいい人だってそれだけは分かる。
「無意識に山を動かしたり、地脈を変えたりしなけりゃそれで……」
「やりかねんぞ……! ま、元に戻すくらいできるだろ。大丈夫だ」
「まずはこの騒がしさに慣れて貰おうかな。皆、君の傍に居たいからね」
ミニィ、と呼ばれた人に抱き上げられた。横にはラセルと呼ばれた人がくっ付いてきて、私の手を握った。
私は私に何が起こっているか、何も分からない。でもここにいる人達は全員私のことを大好きみたいだ。どうしてかは分からないけれど、きっとそのうち教えてくれるんだと思う。分からないが全部分かるまで私はここにいていいみたいだ。
「やや、今度はお爺ちゃんになるまでいてくださいよ」
「?」
やっぱり良く分からないけれど、ここにはずっといていいみたいだ。
「前と違ってしっかり地盤を固めましたからね。根無し草みたいなのはもう終わっちゃいましたよ、帝国にワイアードの影なきところなしっていわれるくらいにはね!」
「クレヤボンスさんがやり過ぎたんですよ、この人ほんと怖い」
「んふ~大将に褒めてもらうにゃこれくらいしないとな~やっぱ 坊じゃイマイチよ」
「はぁ……30過ぎても坊主呼ばわりかあ~クレヤボンスさんには敵わないな」
「んふふふっ! さあて、イアンちゃんには大きなぬいぐるみをあげようね~~6年間改良を加え続けたでっかい狐のぬいぐるみだよ~」
「そんなことより、皆! 早くパムの朝ごはんを食べて~~!! オムレツが固まっちゃうってば!チーズも固くなるんだからね」
その時食べた見た目も黄色くて甘くてちょっとしょっぱくてふわふわしたものは嬉しい味がした。ふわふわの黄色は大好きな物になった。
「ええ、マシュー子爵の地下室に隠されていました。隠されてなきゃもっと早く見つけられたんですけどね」
「?」
また違う人だ。今度の人も笑いながら駆け寄ってくる……初めて見たのに好きな人だ。おかしいなあ?
「イ、イアンだーー! イアン、私のこと覚えてるかい?! ラセルだよ!」
「?」
知らない、でも君のこと大好きだよ。
「はは、ラセル。思い出さないでいてもらった方が良いぞ。思い出したら横に並ぶのは難しいぞ」
「うっ! そういえばそうかもしれません。私、魔法は全然駄目で……」
「全然じゃないぞ、ラセル。ミニィが求めるレベルが高すぎるだけだ」
「そういうタムさんだってラセル達に厳しすぎるって学園から苦情がきてたじゃないですか。どうして時空斬りから教えようとするかなあ?」
「あれはラセル達が習ってるレベルを知りたいっていうから、ちょっと見せただけの話で」
やっぱりよく分からないけれど、皆笑ってるから良いことがあったんだろうな。
「そうそう、なんと言葉もまともに教えてもらってないんですよ、イアン様ってば」
「えっ!そこから教えて良いのか?! たぎるぅ~!」
「じゃあ全然喋らないのは話せないからなのか、うひょー!新鮮」
「こりゃ楽しくなりそうだなぁ!おい」
やっぱり皆笑ってる。ここは皆楽しそうな所なんだ。だから真似してみたくなった。口をくにゃっと歪めたらおんなじ風になるのかな?
「笑った! イアンが笑った! 可愛いね」
「おう! やっぱりうちの大将は笑っててくんないとな」
「無理矢理作った笑顔じゃなくて、心からな」
「そうだそうだ」
私がほんの少しだけ真似をしたら皆また喜んでくれた、褒めてくれた。何だろうとても楽しくて嬉しい気がする。
「積もる話もあるでしょうが、きっと疲れてますよ。今日はもう眠らせてあげましょうね。明日からずっと一緒なんですから」
「そうだな、初めて風呂に入ったらしいから、疲れただろうしこんなに人に会ったことなかっただろうしな」
「そうだな、この屋敷自慢の義父上のお部屋だな?」
「あのふかふかベッドに寝せてやれ」
私は連れて行かれ、ふかふかに寝転がらされると眠ってしまったらしい。その部屋は薄暗いけど真っ暗じゃなかった。あの私のいた冷たい暗闇とは違ってとても暖かい場所だった。
「今度はごゆっくりですよ、イアン」
目を開けなくても見える人の大きい方がそういった。
「マジでミニィ達、きれいに問題片付けてしまうんだもんな。ありゃ執念だわ」
小さい人の方が困ってるのか喜んでるのか分からないことをいう。でも嬉しそうだから喜んでいるんだろうな。
ミニィ? ミニィってあそこにいたおじさんの一人だよね?きっと凄い人なんだろうな。そんなことを考えていたら気がついたら朝になっていて、知らない人が起こしてくれる。
「イアン様、朝ですよ」
朝は明るい、この人は怖くない。
「お腹が空いたでしょう? 顔を拭きましょうね、それから朝ごはんです。パム様が本日も腕によりをかけてお食事を作ってくださいましたよ」
ご飯は食べれるもののこと。いつも目を開けなくても見える人が置いて行ってくれたものを口に入れてたけど、今日から決まった時間にしか出てこないらしい。
「義父上~ご飯食べに行きましょー」
「ミニィ義父上、イアンは私が連れていきます」
「いやいや、俺が俺が」
「私、私!」
「早くパムのご飯食べに来てくださいーっ! 卵が固まっちゃいますっ」
一番最初に来た人を押しのけて、たくさんの人がやってくる。よくわからないけれど、みんな笑ってる。だから真似をしたら皆もっと笑ってる。
「んあぁ~~、これから義父上に一から十まで教えていくことができるなんて……感動する」
「ははっ! しばらくだけだろうなあ、親の顔できんのは! 俺も楽しみ!」
「きっと思い出したらぶっ倒れるだろうなあ! 大将!」
「思い出さなくてもいいよ! だってイアンはイアンだもん」
「それもそうだな!」
なにかよくわからないけれど、この人達はいい人だってそれだけは分かる。
「無意識に山を動かしたり、地脈を変えたりしなけりゃそれで……」
「やりかねんぞ……! ま、元に戻すくらいできるだろ。大丈夫だ」
「まずはこの騒がしさに慣れて貰おうかな。皆、君の傍に居たいからね」
ミニィ、と呼ばれた人に抱き上げられた。横にはラセルと呼ばれた人がくっ付いてきて、私の手を握った。
私は私に何が起こっているか、何も分からない。でもここにいる人達は全員私のことを大好きみたいだ。どうしてかは分からないけれど、きっとそのうち教えてくれるんだと思う。分からないが全部分かるまで私はここにいていいみたいだ。
「やや、今度はお爺ちゃんになるまでいてくださいよ」
「?」
やっぱり良く分からないけれど、ここにはずっといていいみたいだ。
「前と違ってしっかり地盤を固めましたからね。根無し草みたいなのはもう終わっちゃいましたよ、帝国にワイアードの影なきところなしっていわれるくらいにはね!」
「クレヤボンスさんがやり過ぎたんですよ、この人ほんと怖い」
「んふ~大将に褒めてもらうにゃこれくらいしないとな~やっぱ 坊じゃイマイチよ」
「はぁ……30過ぎても坊主呼ばわりかあ~クレヤボンスさんには敵わないな」
「んふふふっ! さあて、イアンちゃんには大きなぬいぐるみをあげようね~~6年間改良を加え続けたでっかい狐のぬいぐるみだよ~」
「そんなことより、皆! 早くパムの朝ごはんを食べて~~!! オムレツが固まっちゃうってば!チーズも固くなるんだからね」
その時食べた見た目も黄色くて甘くてちょっとしょっぱくてふわふわしたものは嬉しい味がした。ふわふわの黄色は大好きな物になった。
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