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223 時空を切り割いてでも(ミニィ

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「だから狐であってもまた義父上に会えた時の私達の喜びはいかばかりかと」
「そんでまたあん時みたいな違和感を感じるんだ。北へ逃げるって言い切った時の大将から感じた違和感を」

 武器は自分の知る最強の物を、防具は身につけない、義父上の慈悲の心に縋って、その切先を歪めるために。

「ヘイズさんは」
「クレヤボンスの部下に当たらせてるけど、油断し過ぎた、連絡が取れねぇ。パムは現地に向かわせてる」
「ラセルに振られた時から準備すべきでした」

 私達はここで一旦会話を止める。時空を割る準備を始めなくてはならない。やってはいけない禁術の一つになっているけれども、禁術だから何だというんだ。

「いきます」
「ああ」

 術を発動させるのは私とタムさん。だから後で贄を捧げるのは私達、アイザックは巻き込むだけ。

「ティエン様! およびたていたします!」

 私とタムさんの魔力を集めて神であるティエン様を降ろす。これだけでも実はとんでもないことなのだが私達は躊躇なくそれを行う。割れてはならない場所に歪みが起き、美しい長身の神が姿を見せる。初見ならば気を失いかねぬほどの美しい神の姿。

「……ミニィとタムか、イアンの子供達よ。正式な手続きで私を呼ぶとは……時空を割く気か」
「御意」
「……やるがいい、取り立ては後でしよう」
「感謝致します」

 私は湾曲した刀をスラリと抜き放つ。人の血を吸い、妖刀の名を冠してしまった愛刀をティエン様に向け、上から下へ斬り下ろす。

「ミニィ?! な、何を!か、神を斬るなんて!!」
「黙って、アイザック! タムさん!」
「ああ! 失礼します、ティエン様」
「行くが、良い」

 頭から腰の辺りまで切り裂かれたティエン様は苦痛に顔を歪めながらも、送り出してくれる。ティエン様を切り裂いた傷口、そこにタムさんは飛び込み、アイザックを後に続かせる。

「ミニィ! どうなってるんだ!」
「いいから、ついていって! 私も飛んだらティエン様の傷は塞がる。時空が開いている間は苦痛を伴うんだ。ティエン様のことを思うなら早く!」
「わ、わかった」

 アイザックは戸惑いながらもタムさんの靴跡を追って飛び込む。

「また後で!」
「ああ……そう、だな」
 
歯切れの悪いティエン様を気にしている場合ではない。私もアイザックの後を追う。時空を切って行きたい場所に飛ぶこの禁術は文字通り、時空を、時空神様を斬って飛ぶ技だ。
 神を切りつけるという罰当たりな技なだけに禁術なんだが、後でたーっぷりティエン様に叱られ、文句を言われ機嫌を直して貰うまで貢ぎ物や奉仕などをしなければならない。人によっては一生労働させられることもあるようだが、その辺りはティエン様次第になる。
 それでも良い、今すぐに義父上の元に行かなくては。

 切れた糸を奇跡的に手繰り寄せたのに、また切れてしまうなんて、絶対に嫌だった。

 


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