【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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209 フェスティバル開始

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「はあーー! この戦いの勝利を時空神様に捧げまするー! すべての食材に最大の敬意をーーー」
「ねぇ、イアンまだ?」
「黙って! ラセル。今大事なところなんだから!」

 ブラッディナイトフェスティバルが始まった。厨房担当者達は意味が分からないと怒っていたがレオンが

「食材無制限時間無制限の料理対決で、沢山の人が投票した方が勝ちということらしい」

 と、いう説明で納得してくれた。そしてフェスティバルの幕は切って落とされ、厨房担当者チームが次々と料理を提供し始めた中、パムはヘンテコな踊りを踊り続けている、一時間くらい。

「早く食べたいよぉ」
「駄目駄目! 感謝の舞はパムにとっては必要不可欠なんだから! さあ、ラセルも一緒に!感謝いたしまーす!」
「いたしまぁーす」
「心を込めて!」
「感謝! いたしっ! まっす!!」

 ラセルがぐったりして私もぐにゃぐにゃして来た頃、パムの信じる八百万の神様に奉納が済んだようだ。手に持っていたお玉とフライ返しを置いてパムが保管庫に手をかけた。

 その頃になるともやは会場と定められた神殿に集まって来た人達は厨房担当者チームの料理を味わっており、空腹なのな私とラセル、そして知っている私の部下とレオン達くらいになってしまった。

「今更なぁ」
「なんかすげー柔らかい肉とか食ったしなあ」
「あれ高そうだよなーあんなのタダで食えるなんてすげーな、この祭り!」

 なんて向こうを褒める声ばかり聞こえている。ふん、後でお腹を開けてお腹を開けておかなかったことを後悔するがいい!

「ではまず、食前茶をお召し上がり下さいませ。これは雪深い北方の霊山で取れた雪割草の葉をつんだもの。胃腸の調子を整えて体を温めてくれます」
「わぁ~ラセル、貰おう、貰おう」
「う、うん」

 私達は我先へと走ってお茶を貰うが厨房担当者側から失笑が上がる。

「茶だぁ? こっちはブラウンバイソンのヒレ肉のステーキだそ?!」
「赤ロック鳥の炭火焼きもあるんだぞ? 今更茶なんて飲むか?!」

 飲みますけど?! さて、ここからだよ?

「美味しいお茶だ、もう一杯欲しい」

 そういって器を差し出すレオンにパムはチッチッチ、と舌を鳴らして首を横に振る。

「一杯だから良いのです。別の物をお召し上がりになって下さいませ、例えばカエルスープとか」
「あれか! 頂こう」
「はい! こちらはレオン殿下とご友人が採取して下さったカエルより作らせて頂いたスープでございますー」
「わーーい!」
「おっ! 良いね、カエル。あったまるなぁ」

 一目散で向かって行くのは子供達と部下達。そして子供達の護衛や付き人だ。

「イ、イアン……カ、カエルを、食すのか?」

 駆け出そうとした私の肩を掴んでお忍びのマリアネットが青い顔で聞いてくる。普通の反応過ぎない?そこは専門家にお願いしよう。

「パムー! 効能頼むー」
「はーい、お任せ下さい。カエルはなんとフルフルとした食感があり、それを作っている成分は女性のお肌をみずみずしく保つ薬効があるとされています」
「な、なに?!」
「また、滋養に富み、疲れを除くのにも最適な物を根菜と優しく煮込み、胃を守り活発にする働きがありまーす」
「頂こうか!」
「はい、美味しいですよ」
「うむ!レオンやセドリック、フィンにラセルが取ったのだ不味いはずがない!」

 と、言いつつ女性のお肌のくだりに目を輝かせていたよね?マリアネットが口にし、セドリックの母親も我が子可愛さから恐る恐る口に運び……目を丸くしている。

「まあ! なんて上品なスープかしら?」
「ああ、良いなこれ。年寄りも好みそうだ。胃にたまらずスルスルいける」

 マリアネットが思わず口にした「胃にたまらずスルスル」の部分に何人か反応する。

「さっきから肉の食い過ぎでなんだかムカムカするんだよな」
「カエルってのはさておき、汁物飲みてぇな。口をさっぱりさせてぇ」
「カエルだぞ?!」
「料理されてんだろ? へーきだよ」

 ちょっとだけパムの周りに顔見知り以外が寄って来た。
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