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208 子供達の糧となるもの

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「美味しい!」
「うふふ」
「魚っぽいか? 鳥っぽくもあるな」
「ぷるぷるしてる~」
「全然違う! カエルっぽくない」

 カエルという固有名詞がラセルの口から飛び出て、フィンとレオンは露骨に顔を顰めた。

「忘れさせろよ……」
「ラセル~~!」
「あ、ごめん」

 パムが事前に作ってあった下処理済み根菜たっぷりカエルスープはあっさりなのにとろみがあり、奥深い味わいだ。いろとりどりの野菜が入り、ご丁寧にカエルは皮を取り除いてある。つまりあのヘンテコな色がない乳白色のきれいな身がキラキラしたスープの中に散りばめられている。見た目にも上品で材料を知らない女性ならパクパク行けちゃうだろう。
 材料を知っていても美味しくいただけるスープになっているけどね。

「行軍中はやはり水分やぬくもりを求めますからスープで丸ごといただくのが多かった気がします。ジャイアントフロッグなら食べる所も多いんですけど、普通のモノだとこの方が食べやすいですし。坊ちゃんたちが取ってきてくれたカエルも下処理を済ませたら同じようなスープにします。きっと皆美味しいっていいますよ」
「私達が捕まえたカエルを皆に振る舞うのか」
「ええ、もちろんですとも。坊ちゃん達の食材ハントは成功です。大変パムの役に立ちました、ありがとうございます」

 丸い顔のパムの満面の笑みを貰った4人の子供達は最初きょとんとしていたけれど、次第に実感が湧いて来たのか嬉しそうに口元を緩め始める。

「えへへ、どういたしまして」

 一番最初に素直に喜んだラセルは照れくさそうにに鼻の頭をかいている。誰かに感謝されるということは子供だって嬉しいことだ。

「カエルは良い食材なのですが、取る人は限られております。体験した通りドロドロに汚れますし、池が臭う場合も多い。そして小さいが為に面倒だというのもあり、買い取りの値段も安いので市場にあまり流通しておりません。ですからパムはとても嬉しいのです」
「労力と対価が合わないということか」
「そうでございます、レオン殿下。パムはもっと高く買い取りたいと常々思っておるのですが、そうもいかないのが現実ですね」
「確かにこれだけの量を捕まえるのにだいぶかかったな」
「そうでございましょう、そうでございましょう。だからこそパムは嬉しいのです」

 パムが心血を注いだものの中に「どうやっても食べられなさそうなものを美味しく安全に調理する」という課題もあった気がする。その工程の中で世間的にはゲテモノといわれているモノも上手く調理すれば食べられる、むしろ美味しいという発見も数多くあった。そして私達は本当にいろんなものを食べたっけな……美味しかったけど。

 パムの出してくれた美味しいスープは護衛達も含め全員できれいに食べ終わり、パムは大量のカエルを抱えて別の食材を探しに去って行った。そして私達は今日のおさらいをする。

「色々、目から鱗が落ちたと思う、どう? レオン」
「うむ……普通の狩りではなく、たかがカエル取りなのに大変でそしてそれを喜ぶ奴もいるんだな」
「うん。 我々にとってカエルはなんかそこら辺にいる生き物だけれど、パムにとっては貴重な食材なんだ」
「カエルが食べられるということ自体驚きですよ、イアン」
「そうだね、実際には毒があるカエルもいるから気を付けて欲しい所もあるけれど……知識は大事だろう?セドリック」
「ぼく……カエル取りちょっと楽しかったよ」
「新しいことをやってみるのは良いことだしね。それが楽しめたら最高だね、フィン」
「次は何を狩る!? イアン!」
「……体を休めることも必要です! ラセル」

 色々な意見が上がったけれど、その日はそれで解散となった。きっと三人は護衛達や親、保護者に色々話すだろう。その中でいくつか彼らの中に根付き、成長の助けになるだろう。

「うう~……今日はもう眠い……」
「早く寝た方が良いよ、ラセル」
「うん、おやすみ~」

 夕飯を食べるとすぐにラセルはベッドに潜り込んだ。そりゃあれだけカエルと格闘したんだ、疲れていて当然だ。きっと子供達は全員心地よい眠りに落ちただろうな。

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