【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

203 責任の所在を考えて

「じゃ、じゃあどうすれば？」

　フィンの視線は当然レオンに向けられる。三人の中でリーダーはやはり一番皇帝位に近いレオンになるからだ。
　頼られればなんとかしなくてはならない、それが高位貴族。しかしレオン自身どこにウサギがいるかは分からないだろう。

「えーと、皇帝所有の禁足地を使うわけには行かないよな……リード、どこにウサギはいるか分かるか？」
「すみません、分かりかねます」

　護衛騎士筆頭のリードさんに声を掛けても答えは出てこない。そりゃそうだろう、リードさんは分かっている。

「誰か、分かるものはいるか？」

　自分の護衛騎士、セドリックの護衛騎士、そしてフィンの付き人全員に声をかける。当然の行動だけれど、それはダメなんだ、レオン。
　その中に一人手を挙げる騎士がいる。おい、リードさん。ダメだろ。

「殿下、私はこの辺りの地理に詳しいです、ウサギなら」
「ストップ、黙って」

　リードさんが慌てて止める前に私が止めてやる。レオンの護衛にしては杜撰だなぁ、本当に大丈夫かい？？

「イアン様ありがとうございます」
「良いけど、教育はしっかりした方が良いよ、リードさん」
「重ね重ね申し訳ない」

　手を挙げた騎士の発言を途中で遮る、そして護衛騎士筆頭が感謝の意を表す。レオンには理解できなかったようで声を上げた。

「イアン、何故止める。彼は私の問いに答えようとしていたんだぞ！」
「答えようとしたから止めたんだよ、レオン。答えていたら、彼は降格で済めば良いが下手したら死罪だよ、分かっているの？」
「何故！」

　声は更に大きくなる。私はリードさんに視線を送り、彼が了承したのを確認してからレオンに向き合う。君は知らなければならない。

「君がレオン殿下だからだ。もし君がこの状況で、先ほどの騎士からウサギがいる場所を聞いたとしよう、すると君はどうする？　必ずその場所へ向かうだろう、安全かどうかも確認ができないそんな場所へ」
「でもウサギだぞ？　危ない事なんてないだろう！」
「その場所に野盗がいる可能性は？　君を攫おうとする腕利きの誘拐犯がいない可能性は？　もし、何かあった時責任は誰が取る？そう、リードさんとその騎士だ。はっきりいおう、リードさんは多分安全にウサギ狩りができる場所などとうに把握済みだ。だが、安全が確認できていないんだよ、だから分からないと答えた、そういう事なんだ」
「そうなのか？！」

　振り返るレオンに沈黙で答えるリードさん。それは是ということ。

「もしこれがラセルだけならウサギだろうがイノシシだろうが狩りに出た。私はラセルの力量を知っているからね。でも今、どれほどのことができるか見当もつかない子供が三人、しかも絶対に何かあってはいけないやんごとなき方々だ。狩りにいけるなんて思う方が間違っているとは思わないか？」

　必ず肝に銘じておいて欲しいこと。高位貴族に何かあった時に責任を取らされるのはその下についた人間だということ。

　私はレオンにも名君になって欲しいと思っているんだ、欲張りかな？