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197 至高の喜びとよだれ

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「昼食は選ぶ自由を設定したはず」
「その通りでございます」
「ならば私達が安全である外部の食事を取っても構わないだろう?」
「それはいけません! 殿下」

 そうだ、まだレオンと調理担当者は戦ってたんだった、ごめーん。

「なぜか?」
「外部からの食材など何が紛れ込んでいるか分かりません、毒や危険物が含まれていたらどうなさるおつもりか!」
「その為に騎士や付き人が事前に毒見をしているのだ、そうだな?」

 レオンが少しだけわざとらしく後ろを振り返ると、レオン付の騎士が胸に手を当てながらゆっくりと頷く。

「その通りでございます、レオン殿下」

 そして左手にはパムから受け取った3段お弁当を持っている。彼の後ろにいる騎士も同じような仕草に同じような表情、そしてよだれがちろりと垂れている、それはしまって、しまって!

「もし仮にあのお弁当に危険なものがあればまず我が騎士達が気づく。騎士達の危機管理能力を信用していないのか?」
「き、騎士様を疑うことなど……」
「なら問題ないではないか」

 おっとレオンは後ろにいる大人の騎士達の肩書を借りた、正しいな。そしてあの騎士達はパムのお弁当の虜だ。レオンの学園への護衛騎士は数名いて順番にやってくるが、全員その順番を楽しみにしている。可哀想にがっちり胃袋を掴まれてしまっているのだ……。

「サンドイッチ……ふふ……」

 あっ! 駄目だ、レオン殿下の今日の護衛騎士、確か名前はリックだっけな?もうリックの頭の中にはサンドイッチしか詰まっていない!

「今日は三角のかな……丸いパンをくり抜いていっぱい小さいのが詰まってたのも美味しかったなぁ」

 リック、リック!! 声大きいよ!

「三角ですよ……」
「わぁ……」

 こら、パム! 変なささやきをしないで!

「わあ! 三角のやつ~。耳までいっぱい具が詰まってますか?」
「お任せください、フィンさま。このパムそこらあたりは抜かりはありませんよ」
「わあわあ! 楽しみです、パム。早くお弁当箱くださいな」
「こちらです。フィンさまのは小さめに切っておきましたけれど、皆さんと中身は同じですからね」
「わあわあ! ありがとうパム。残さず食べるね」
「はい、皆様が全部食べて空のお弁当箱が帰って来るのがパムの至高の喜びでございます」

「んんっ!!」
「あっ!」

 レオンのわざとらしい咳払い。ホント、レオンごめん。だって皆、今日のお弁当も楽しみなんだもん。

「中休憩のおやつは手のひらミートパイです。包み紙から出さずに召し上がって下さい。パイは崩れやすいので包み紙を利用して食せば制服も手も汚さずに食べる事ができますよ」
「きゅふん……っ!な、なんの肉を使ったのかなぁ?!」
「ふふふ、ブラックバッファローの肩肉をミンチにしました」
「きゅふっっ!! それ絶対美味いやつっ」
「イアンっ! パムっ! 黙ってくれっ!!」

「はひぃっ!」

 レオンに大声で怒られてしまった! でもレオンも口の端から垂れかかってる涎を拭いてね。ミートパイ、レオンの好物だもんね?

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