上 下
196 / 229

196 常識人ですが、なにか?

しおりを挟む

「なんだなんだ?たいしょ……じゃねえや。イアン、ラセル何してんの?」
「タム!」

 お弁当を取りにタムが現れた。

「おはよう、ラセル、イアン。どうしたんだい?何かあったのか?」
「あっレオン殿下」

 お弁当を取りにレオンも現れた。

「寮の厨房の方々かな? 一体どうしたんだ?」

 お弁当を取りにセドリックも現れた。

「パムさん、今日のお弁当サンドイッチなんだって?あの甘いトマト入ってる?」

 お弁当を取りにフィンも現れた。

「今日はサンドイッチかあ~あの魚の白いソースかかってる奴入ってますよね?」
「私はあの薄切り肉がいっぱい挟まっている奴が好きですねー」
「私はあの揚げてある厚切り肉のサクサクした奴が……」

 三人の付き人も現れた。人数でも勝ったぞ、やったね!

「ありますよ。あと今日は……お花のフルーツサンドも入ってます」
「やったー!」

 パムの完全勝利だ……! 完!!

「で、殿下! 我々は学園へおいでになる殿下に最高のお料理をお出ししようとしております!」
「うむ。いつもありがとう、朝と夜は食べているよ」
「しかし! 昼は我々の食事を召し上がらず、どこの馬の骨とも知らぬ男の作った安全も分からぬ弁当とやらを食していると! これは由々しき事態です」
「なぜか?」

 あ、「完」じゃなかった……まだ続くんだ。早く学園へ行きたい……。私達より苛つきだしたタムが耳打ちをしてくる。

「おい、大将どうなってんだ?俺、さっさと戻りたいんだけど」
「なんか学園の厨房担当者達にパムが文句つけられてんだもん」
「あー……はぁめんどくせぇ。ぶっ飛ばしていいか?」
「駄目だよ、タム!」

 タムの全身に静電気が回って来てる……本気で嫌がって本気で腕力で交渉をしようとしてるな……まあ、タムの場合腕力っていうか魔力か……やめてやめて、私の叫び声以上に酷いことになるでしょっ。レオンと寮と学園の厨房担当者の話は続いているから少し成り行きを見守ろうよ。

「食事というものは成長期の子供達にとても大切な物です! 我々は毎日、毎週、毎月のバランスを考えて提供しております。ですから昼に違うものを食されるのは我々の考えた完璧なバランスが崩れてしまうということなのです」
「だが、我ら生徒は週に2回の休日は家に帰る者が多い。そこでは自由に食べるのだ、完璧なバランスとやらは取れないのではないか?」

 そうだよねー。休日に殿下であるレオンと私達が同じものを食べるわけがない。レオンが正しいんだけれど、厨房担当者たちは食い下がった。

「それも計算に入れてのメニューです!」

 自信満々に言い切るけど、そんなこと出来るのかな? 休日の二日間に食べる物を計算に入れるなんて。

「私でも無理ですよ」
「だよねー」

 パムが厨房担当者達に聞こえない声で呟く。

「やっぱりさっさとぶっ飛ばして」
「学園から追い出されるよ、タム」
「それはだめだ!」

 タムが堪えた! えらいぞら流石多少常識のある大人! でもタムの常識力は低い、私は知っている。困った奴だとタムを見上げれば何故かタムも同じような目をしてこっちをみていた、何故?!

「なんか大将に常識がないように思われてる気がして。俺らの中で一番常識ない人にいわれたくないなーと思いまして」
「どうして?! 私はこんなに常識人なのに」

 あ、あれ? タムだけじゃなくてパムの視線もちょっと冷たい。なんで?!

「僕、学園に通い始めて知ったことがあるんだ。イアンやミニィさん、全員常識からズレてるって」
「そんな事ない」
「私をこの人達と一緒にしないで」
「俺はまともだぞ」

 つい声が大きくなってセドリックに睨まれてしまった。ご、ごめん
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)

柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか! そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。 完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

処理中です...