【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
195 / 229

195 お?やるのか?パムが相手だ

しおりを挟む
「ちょっと君ィ! いい加減にしてくれないか」
「え? 私ですか?」
「君以外誰がいるというのだね?」
「僕ら?」
「私達にご用ですか……? ええと、寮の食事担当の方ですよね?」

 私とラセル、そしてパムがいつもパムがお弁当をくれる場所に降り立ったら、待ち構えていた横にお太い方々に声をかけられた。とうとう来たか……。

「君みたいな部外者に入られると我々が困るだ、何かあったらどう責任を取ってくれるんだ!」
「責任ですか? 取っていただかなくて大丈夫だと思います。私の作ったお弁当を食べてもし何か……腹痛などあれば、それは自己責任という形で話はついております」
「むっ」

 そうなのだ。私達はもちろんだけれど、レオン殿下とセドリック、そしてフィンには「もし、パムの作ったお弁当を食べて何かあった時は自己責任」ときちんと了承して貰っている。もちろん、朝に受け取って昼に食べるからそれまでの管理は各々の付き人がしっかりやってくれている。三人は国の重要人物だから、特別に付き人がついているし、もちろんその日のお弁当の中身は付き人達も食べる。同じ味付けの美味しいお弁当が食べられると大変人気だそうな。私だってもっと食べたいけれど、小さな狐の体で過剰摂取は良くない。

「わ、我々は生徒達の栄養も考えて、メニューを決めているのに、そこに勝手なものを持ち込まれても困るんだが!」

 これは言いがかりだ。私とラセルは顔を見合わせる。パムにもちゃんと教えてあることだからしっかり説明してくれる。

「お昼のメニューはかなりの種類が用意されていると聞いています。いくつかお坊ちゃま方から聞きましたが、それらのメニューから逸脱した栄養素などは取り入れておりませんし、量も普通程度になっております。むしろメニューによっては果物や野菜が足りないものが多いと感じますが、大丈夫なのでしょうか」
「ななっ!!」

 パムの反撃が始まったーいいぞ、パム! 料理の事になるとパムは色々張り切って頑張ってくれるからね、頼りになるよ~~料理のことは!

「で、殿下達に黒いパンをお出ししているじゃないか! あんな庶民が食べるものを高貴な方にお出しするなんて」
「ラライ麦の全粒粉で作ったパンのことですか? ラライ麦は西の方で取れる稀少な麦です。子供達の成長期に必要な栄養素がふんだんに含まれていて、特に身長が伸びていく子供には食べさせたいものです。これからどんどん背が伸びる殿下やラセル達には必要ですし、見た目だけで判断されるのはどうかと思いますよ」

 あのパン美味しいんだよね。見た目がちょっと茶色いけれど、パムは良くサンドイッチにしてくれた。ラライ麦、実は凄く高級品だから軍人おじさんだった時は全然食べさせて貰えなくて、小さかったミニィは良く貰ってたっけ。香ばしくて、お腹もいっぱいになるんだよね~~。

「イアンイアン、よだれでてる」
「はっ! ちょっとラライ麦のパンの、表面はパリパリで中がふくっくらのアレを思い出してたらつい……」
「あのパン美味しいよねー。ぼく、白いパンより好きだよ」
「うんうん! あれにさ、ホワイトパールサーモンのマリネとタルルソースでレチュの葉っぱのサンドイッチ」
「あーっあーっあっー! それ狡いやつー!」

 まずい美味しいサンドイッチを思い出しちゃったじゃないか! どうしてくれるんだー!!

「今日のお弁当サンドイッチですよ」
「いやああああ! パム天才!?」

 往来でつい騒いでしまい注目を集めてしまった……恥ずかしい。

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)
BL
「ネヴィ、どうして私から逃げるのですか?」 冷ややかながらも、熱がこもった瞳で僕を見つめる物語最大の悪役。 それに詰められる子悪党令息の僕。 なんでこんなことになったの!? ーーーーーーーーーーー 前世で読んでいた恋愛小説【貴女の手を取るのは?】に登場していた子悪党令息ネヴィレント・ツェーリアに転生した僕。 子悪党令息なのに断罪は家での軟禁程度から死刑まで幅広い罰を受けるキャラに転生してしまった。 平凡な人生を生きるために奮闘した結果、あり得ない展開になっていき…

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

処理中です...