【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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156 ファンシーマスター降臨

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 とりあえずお金の工面が出来そうなので別荘の建築に当たってもらうことになった。

「リア伯爵。あの土地の木を切ったり土地を整備するのに、祭壇を用意する必要がある、のだそうです」
「はあ、祭壇ですか。それくらいなら」

 この地を護っている人にちょこっと改造しますよ、絶対悪いことしませんって言葉と意気込みを伝えるために、リゼレン君に頼んで祭壇を用意して貰ったのに!

「何じゃこりゃー?! なってない! なってなさすぎ! 舐めてんのか!」
「えっ?!どうしてです?お酒も用意したしお花も供えました。何がダメなんですか??」

 私は重くて深いため息を吐くしかない。リゼレン君、君はもう少し賢い男だと思っていたのにガッカリだ。

「はあ……仕方がない、クレヤボンス、手本を見せて」
「お任せ下さい!」

 しゅたっ! と音をわざとらしく立てながらクレヤボンスが祭壇の前に降り立つと早速良い仕事してくれた。

「出来ましたぜ! 大将」
「うむ、素晴らしい。さて、存分に語ってくれたまえ」
「ではこの不肖クレヤボンス、語らせて頂きます!まずこちらの中に敷き詰めた布は遥か北方、もこもこ羊の毛を使い丁寧につくりあげたフェルト地をピンクの花びらで染めてから刺繍を施した物です!」
「うむ、暖かそうでいて小花柄の刺繍が非常に可愛らしいな!」
「そして、このリボンは南方より取り寄せたカイイコ虫より取れた糸をよって使ったイコシルク!1 0センチ金貨一枚の最高級品です!」
「うむ!手触りと輝きが素晴らしい!金貨が必要なのも頷ける」
「更にこのキュートなリリセル&狐ちゃんぬいぐるみを供え、お花は白い小花を中心にカラフルなものをこれでもかと盛りました!」
「リリセルはどうもラセルに似ているな!これ以上似せるなら、モデル料を取るが覚悟したまえ」
「ひょっ?!そ、そしてパムに特製バラクリームのきらふわケーキです!」
「ケーキは非の打ち所がない! 最高である!」

 殺風景な祭壇は何ということでしょう!匠の手によりキラキラでファンシーでありながら、安っぽくない大人の女性も微笑んで手に取ってくれそうな夢の空間に生まれ変わったのです!

「だから、ここの偉人は女性だっていったのになんであんなしみったれた祭壇にしたの?! 女性があんな安酒を嗜むとおもってんの?! せめてフルーツカクテルくらい持って来なさいよ!」
「ひ、ひゃい!」
「女性なんだよ?! 可愛くてふわふわしてキラキラした物が好きなんだよ?! それなのにまったく分かってないじゃないか!」
「す、すいません! イアン」
「次から気をつけてよね、まったく! 君達は女性を何だと思ってるの??」
「いえあの、祭壇というから今まで通りの物を……」
「おだまらっしゃい!」

 リゼレン君を正座させて1時間くらい説教した。ファンシーマスタークレヤボンスのアレンジと飾り付けで祭壇はきちんと効力を発揮し、我々は土地を弄ることを許された。

「良い?さっきのままだと木を1本切ろうとしただけで怪我人が出るレベルだよ?? でも今は大丈夫。我々がやりたい事は伝わったし、この事業で伯爵領が何とかなりそうって分かってくれたんだよ?良い?毎日お花を飾ってケーキを供えるんだ。これはリア家の血縁者がやった方が良い。感謝を忘れずにね」
「は、はいぃ……」

 リゼレン君の隣にリア伯爵もいつの間にか座っていた。しまった、私達の正体はできるだけ伏せておきたかったのについ力が入ってしまった。
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