139 / 229
139 じゃあね~
しおりを挟む
「その二つを置いていく代わりに、ラセルは私達と一緒に行動するで構わないね?」
「短剣と杖は必要だ」
現国王の言い草に私達は額に青筋が浮かぶ心持だが、今食って掛かるのは得策じゃない。まあ現国王にしてもラセルの存在は厄介なんだろう。多分彼は自分の子を次期王にしたいし、そうする予定で王太子にでもしているんだろう。そこへ失踪した今でも人気がある妹の子供が帰ってきた。手に初代王の短剣を持って。
国を良き方向へ導けない王様の子供より、人気があって更に初代由来の宝物を持った妹姫の子供が民衆の支持を得る可能性が高い、誰もがそう思うし、現国王もそれに気が付いている。だからはっきりいわずとも現国王がラセルをこの国から放逐したいと思っている事も誰もが気が付いているんだ。短剣と杖さえあればラセル本人は要らないと暗に言われているようなものだ……腹が立つ。
「ラ、ラセル……せっかく戻ったんだ。この国にいて欲しい」
「やだよ、お祖父ちゃん。ぼくはイアン達と一緒に行く」
ラセルを引き留めたいのはこの前国王だけだろう……あとは現国王の意向を見事に汲んでいるし、ラセルの意志も出て行く方向で固まっているから、あの生真面目な副団長も口をはさんでこない。
「父上、我が儘はおやめください、ラセルの意思は固い。それに広い世界を見ることは良いことです」
「……」
説得しようとラセルに近づく前国王は肩を掴まれてその場に留められた。
「……お前」
「なにか?」
力を強めて意思表示をしたのか、前国王の顔が少し歪んでいる……あーはいはい王宮の面倒くさい親子喧嘩は我々がいなくなってからにしてもらいたいものだ。
「じゃ、行こうか。ラセル」
「うん! 行こう、行こう! 」
私の手をラセルは握り、歩き始めた。ラセル……いや、ルセラはこうやって私と並んで歩くことを求めたのか。後ろからその背中を見守る役ではなく、共に歩く友人になってほしかったのか。その事がなんだか嬉しくて、大人の嫌な暗い汚い算段を薄めてくれる。
「あまり納得の行く事じゃないですけど、ここから離れることはありがたいですね」
「そうだな、どうも空気が淀んでいて感じが悪い。裏側はすげー楽しいのにな」
何でもない世間話風に話しつつ、ミニィとタムが私達の後ろに続く。リラックスしているように見えて、二人ともキンキンに気を張り巡らせている。どこから狙撃されようと魔法を打ち込まれようと即座に対応できる用意があるんだ。
クレヤボンスがいた窓辺を見ると気配も姿もない。もうロイも移動して城から出やすい場所に待機しているだろう。
「まあまた来るかな?」
「今度は裏側で遊びたいな~あのぐるぐる回る扉にもう一回入りたいな」
「隠し部屋探しとかしちゃう?」
「するする~」
ハイランド城の滞在時間が短すぎて色々作った仕掛けを見ている暇が全然なかったもんね。まだまだたくさん楽しい仕掛けがあるからね。
私達は今度は正面の門の横にある小さな通用口に通され、外に出る。最初からここを使えば良かった? いやいや、たまに石像も動かさないと壊れてたら困るでしょ??
「じゃあね~」
手を振るラセル、そして私達。
「ま、私もそこまでイイヒトでもないわけなんだよね。さあ、ラセルあの短剣を手放しちゃお……君の持ち物だと誰も鞘から剣を抜けないからね」
「あ、そうだね。ぼくはモノよりヒトが良いもん!」
モノに求める大義なんてどれほどの価値があるんだろうね?
「短剣と杖は必要だ」
現国王の言い草に私達は額に青筋が浮かぶ心持だが、今食って掛かるのは得策じゃない。まあ現国王にしてもラセルの存在は厄介なんだろう。多分彼は自分の子を次期王にしたいし、そうする予定で王太子にでもしているんだろう。そこへ失踪した今でも人気がある妹の子供が帰ってきた。手に初代王の短剣を持って。
国を良き方向へ導けない王様の子供より、人気があって更に初代由来の宝物を持った妹姫の子供が民衆の支持を得る可能性が高い、誰もがそう思うし、現国王もそれに気が付いている。だからはっきりいわずとも現国王がラセルをこの国から放逐したいと思っている事も誰もが気が付いているんだ。短剣と杖さえあればラセル本人は要らないと暗に言われているようなものだ……腹が立つ。
「ラ、ラセル……せっかく戻ったんだ。この国にいて欲しい」
「やだよ、お祖父ちゃん。ぼくはイアン達と一緒に行く」
ラセルを引き留めたいのはこの前国王だけだろう……あとは現国王の意向を見事に汲んでいるし、ラセルの意志も出て行く方向で固まっているから、あの生真面目な副団長も口をはさんでこない。
「父上、我が儘はおやめください、ラセルの意思は固い。それに広い世界を見ることは良いことです」
「……」
説得しようとラセルに近づく前国王は肩を掴まれてその場に留められた。
「……お前」
「なにか?」
力を強めて意思表示をしたのか、前国王の顔が少し歪んでいる……あーはいはい王宮の面倒くさい親子喧嘩は我々がいなくなってからにしてもらいたいものだ。
「じゃ、行こうか。ラセル」
「うん! 行こう、行こう! 」
私の手をラセルは握り、歩き始めた。ラセル……いや、ルセラはこうやって私と並んで歩くことを求めたのか。後ろからその背中を見守る役ではなく、共に歩く友人になってほしかったのか。その事がなんだか嬉しくて、大人の嫌な暗い汚い算段を薄めてくれる。
「あまり納得の行く事じゃないですけど、ここから離れることはありがたいですね」
「そうだな、どうも空気が淀んでいて感じが悪い。裏側はすげー楽しいのにな」
何でもない世間話風に話しつつ、ミニィとタムが私達の後ろに続く。リラックスしているように見えて、二人ともキンキンに気を張り巡らせている。どこから狙撃されようと魔法を打ち込まれようと即座に対応できる用意があるんだ。
クレヤボンスがいた窓辺を見ると気配も姿もない。もうロイも移動して城から出やすい場所に待機しているだろう。
「まあまた来るかな?」
「今度は裏側で遊びたいな~あのぐるぐる回る扉にもう一回入りたいな」
「隠し部屋探しとかしちゃう?」
「するする~」
ハイランド城の滞在時間が短すぎて色々作った仕掛けを見ている暇が全然なかったもんね。まだまだたくさん楽しい仕掛けがあるからね。
私達は今度は正面の門の横にある小さな通用口に通され、外に出る。最初からここを使えば良かった? いやいや、たまに石像も動かさないと壊れてたら困るでしょ??
「じゃあね~」
手を振るラセル、そして私達。
「ま、私もそこまでイイヒトでもないわけなんだよね。さあ、ラセルあの短剣を手放しちゃお……君の持ち物だと誰も鞘から剣を抜けないからね」
「あ、そうだね。ぼくはモノよりヒトが良いもん!」
モノに求める大義なんてどれほどの価値があるんだろうね?
55
お気に入りに追加
1,888
あなたにおすすめの小説
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。


家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる