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122 短剣と杖(ラセル
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「話はまず、デンブルの調書からになっていて、こっちはあいつの嘘がバレているところだ。冒険者から買ったって言っていたが、あいつが冒険者と話をしているところなんて見た奴は誰もいないし、リトス家のメイドの数人が証言したよ、ラセルの持ち物だったのを勝手に奪って行ったって。王宮に持ってきたのは見せびらかしたかっただけだそうだ」
「そっか」
「おとがめなしでは済まないだろうな。無断で刃物を持ち込む事自体反逆罪として問われることがあるのに、初代様の短剣を正当な持ち主の可能性があるラセルから無理やり取り上げた事は本当にヤバイ」
「デンブル君、大丈夫かな」
あんまりいい思い出はないけれど、罰して欲しいとも思わない。ぼくはあの短剣が返ってきてくれればいいだけなんだけど。
「まああいつの心配より、自分の心配だ。ラセルが行っていた始まりの遺跡はやっぱり地下が二階までしかないない。三階は存在しないんだ……それで揉めている。ラセルが嘘をついてるんじゃないかって」
「でもほんとに入り口があったよ?降りて行ったら狭い部屋であの剣と小っちゃい杖しかなかったけど」
「うん、俺はラセルの言ってることを疑っちゃいないんだけどな。ない物はないんだ……でもその杖の話でラセルを嘘つきだと決められないって連中揉めてるのさ」
「あの杖がどうかしたの?」
短剣と仲良く並んで置いたあった普通の棒きれみたいな杖だったけれど、なにかあれにも秘密があったのかな?
「あれは初代様を助けた賢者の杖だったらしい。まだ若かった初代様を導き助けた老齢の魔法使いが使った杖でこっちも国宝級でさ。二つまとめて行方不明になっていたし、一部の人しか知らない極秘事項だったのにラセルが見た杖は間違いなくそれだろうってさ」
「そ、そんなに凄い杖だったの?ぼく、あれはイアンに上げちゃったよ! 」
「あ、狐ちゃんだっけ……あー、まー……なんだろ、うーん」
ロイは天井を見上げてぽりぽりと頬をかいてから
「なんか上手い事使ってくれそうな気がするな! 」
「うん! ぼくもそれが一番いいって思ったんだ」
イアンなら絶対上手に使ってくれるって知ってるんだから……知ってる?知ってるの??
「ねえ、ロイ……ぼく、変なんだ。ここに初めて来たはずなのに、知っている気がするんだ。あの杖もイアンが持っているのが普通だって思ったんだ、なんか変だ」
「……それは確かに変だな。知らないのに知っている、なんかそんなことをどっかで聞いたことがあるような……うーん、分からん。こりゃ師匠案件だな」
「師匠ってクレヤボンスさん?」
「うん、師匠はどこにどんな伝手があるか分からんから……きっとそろそろ戻ってくるだろうし、聞いてみようぜ」
「イアン帰って来る! 」
「おう! 」
「やったーー! 」
ぼくの周りにぐるぐると渦巻いていた雨雲が一瞬でどこかに飛んで行った。イアンに会える!イアンは太陽みたいにぼくのモヤモヤした暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるんだ!
「そっか」
「おとがめなしでは済まないだろうな。無断で刃物を持ち込む事自体反逆罪として問われることがあるのに、初代様の短剣を正当な持ち主の可能性があるラセルから無理やり取り上げた事は本当にヤバイ」
「デンブル君、大丈夫かな」
あんまりいい思い出はないけれど、罰して欲しいとも思わない。ぼくはあの短剣が返ってきてくれればいいだけなんだけど。
「まああいつの心配より、自分の心配だ。ラセルが行っていた始まりの遺跡はやっぱり地下が二階までしかないない。三階は存在しないんだ……それで揉めている。ラセルが嘘をついてるんじゃないかって」
「でもほんとに入り口があったよ?降りて行ったら狭い部屋であの剣と小っちゃい杖しかなかったけど」
「うん、俺はラセルの言ってることを疑っちゃいないんだけどな。ない物はないんだ……でもその杖の話でラセルを嘘つきだと決められないって連中揉めてるのさ」
「あの杖がどうかしたの?」
短剣と仲良く並んで置いたあった普通の棒きれみたいな杖だったけれど、なにかあれにも秘密があったのかな?
「あれは初代様を助けた賢者の杖だったらしい。まだ若かった初代様を導き助けた老齢の魔法使いが使った杖でこっちも国宝級でさ。二つまとめて行方不明になっていたし、一部の人しか知らない極秘事項だったのにラセルが見た杖は間違いなくそれだろうってさ」
「そ、そんなに凄い杖だったの?ぼく、あれはイアンに上げちゃったよ! 」
「あ、狐ちゃんだっけ……あー、まー……なんだろ、うーん」
ロイは天井を見上げてぽりぽりと頬をかいてから
「なんか上手い事使ってくれそうな気がするな! 」
「うん! ぼくもそれが一番いいって思ったんだ」
イアンなら絶対上手に使ってくれるって知ってるんだから……知ってる?知ってるの??
「ねえ、ロイ……ぼく、変なんだ。ここに初めて来たはずなのに、知っている気がするんだ。あの杖もイアンが持っているのが普通だって思ったんだ、なんか変だ」
「……それは確かに変だな。知らないのに知っている、なんかそんなことをどっかで聞いたことがあるような……うーん、分からん。こりゃ師匠案件だな」
「師匠ってクレヤボンスさん?」
「うん、師匠はどこにどんな伝手があるか分からんから……きっとそろそろ戻ってくるだろうし、聞いてみようぜ」
「イアン帰って来る! 」
「おう! 」
「やったーー! 」
ぼくの周りにぐるぐると渦巻いていた雨雲が一瞬でどこかに飛んで行った。イアンに会える!イアンは太陽みたいにぼくのモヤモヤした暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるんだ!
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