【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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116 ミニィ対アウレア

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「そ、そんなことはない、私とイアンの間には深い信頼と友情と、愛が」

「ない!特に最後の奴は絶対にない!! 」
「大笑いしてぇ!でもよぉ、あいつ本気だぞ?」
「どうしてそう思ったんだろう……私、王太子殿下に愛を囁いた事なんてないよ?!ていうか男を愛したことなんてないけど!」
「なんていうかーウチの大将はそういうのに好かれますからねぇ、よっ色男」
「やめてー!」

 ゾゾゾっと背中に寒いものが走って、私はブルっと体を震わせる。狐だったら尻尾の毛が全部逆立っていただろう。

「なにおかしな妄想してるんです?義父上があなたを特別に思ったことなど一欠片もないですよ」
「そんなことはない!私とイアンはーー」
「義父上の口からあなたの名前を聞いた事ないですからね」
「そんな!」
「ないですよ、一度も!何とも思われてなかったんです、確実に絶対に!」

 ミニィが物凄くはっきりキッパリ言い切る。うん、でもその通りだ。私はアウレア・ガルエンに自国の王太子という肩書き以上の感情はまったく待ち合わせていない。それより面倒くさいとか何故私を呼びつけるんだろう、迷惑だなぁというマイナス感情しか持ち合わせていなかった。
 なんでアウレア・ガルエンがあんなに絶望に満ち溢れた顔をしているか分からない。

「う、嘘だ」
「何故嘘をつく必要があるんです?当の義父上はもう戻って来ないのに!!」

 ミニィの迫真の叫び!その声に貫かれたようにアウレア・ガルエンは胸を押さえて蹲る。

「いつみてもあいつは世が世なら良い役者になれたと思うぜ」
「うん……」

 深い怒りと悲しみに満ちたミニィの顔。でもあいつらから見えない所で舌を出したりニヤニヤしてみたりして私達を笑わそうとしてくる……もうっ!

「私達……いや、この世界から義父上を取り上げた大罪人、我々はあなたを憎みます」
「違う、私はこんなつもりは」

 蹲ったまま低く呟くように呻くアウレア・ガルエン。彼は私を殺せば本当に私が手に入ると疑っていなかったのだろう。
 気持ちが悪い考えだ。まったく理解できん。

「アウレア・ガルエンは囁かれたようです。ほとんど洗脳に近かったかもしれませんが、自分の理想の甘い夢を肯定されてそちらに傾いた。普通の人間であれば許されることでも王太子という立場にいる者が許される事じゃない」

 影がゆらっと揺れて珍しく言葉に感情が乗ったクレヤボンスの声が聞こえる。私もタムも、聞こえたであろうヘイズも頷く。

「義父上からすべてを取り上げたアンタが何かを得ようなんて……ふざけるのもいい加減にしろ」

 演技ではなく本当に憎しみが溢れかえった声と顔のミニィはそれでも私を愛してくれていた。





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