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107 ソレはぼくのだ。
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「おい、お前」
「ええと、なに?デンブルさん。ぼく着替え中なんだけど」
リトス家につくとぼくは泊まっていた部屋に行き、着替えをさせられている。自分で着れると断ったけれど、メイドさんたちは「私達の仕事ですから」と新しい服を着せてくれる……なんだか着替えを手伝ってもらうなんて小さな子供みたいで恥ずかしい。
そうやってあっちにくるくる、こっちにくるくる回されていると、部屋のドアをノックもなしに開けてデンブルさんが入ってきた。彼も豪華な服を着ているけれど、もしかして一緒に王宮に行くんだろうか?
「やっとお前みたいな疫病神が我がリトス家から出て行く日だな、やっと! 」
ぼくとメイドさんは何も聞かなかったふりをした。デンブルさんは何を言っているんだろう?もしかしてぼくは何も喋らない置き物でお祖父ちゃんと話さないとか思ってるのかな??
メイドさんは立場上、お祖父ちゃんには何も言わない。だってこのリトス家で働いている人だもん。でも僕はここの家に何の関わりもないから、僕を邪魔者扱いするとお祖父ちゃんに話すと思うよ?
デンブルさんはぼくのそばまで近づいてくるとすごく意地悪そうに笑う。
「お前のせいで私は父上に何度も叱られたんだぞ! 」
「……」
街に出かけたら必ず僕がいなくなって一人で帰って来るからね。道案内としても出来てるとは言わないし、護衛としても失格だもんね。いなくなるぼくも悪いかも知れないけど、いなくなっても気がつかないデンブルさんもおかしいよね?
「その慰謝料の代わりとしてこれは貰っておくからな」
「あっ!ぼくの短剣! 」
「ガキの癖に良いもん持ってやがる。私が使ってやるからありがたく思え! 」
あの始まりの遺跡で僕が見つけた短剣をデンブルさんはなぜか自分の懐から取り出して見せてまたしまった。
それは僕がこの部屋の机の引き出しに隠しておいたのに。デンブルさんは僕がいない間に勝手に入って盗んだんだ!
「それは僕のだ!泥棒だよ、デンブルさん! 」
「貰っておいてやるって言ってるんだよ! 」
「返して、それはぼくのだ」
ソレはずっと前から僕の物だ。ソレはあの人と揃いで作った物なんだ、だから僕のだ。
全然気が付いていなかったけれど、ぼくはデンブルさんを睨んでいたらしい。
「も、貰っておくって言ってるだろっ! 」
「あっ」
デンブルさんはぼくの短剣を持ったまま走り去ってしまった。追いかけて取り戻そうと思ったけれど、ぼくが走り出すと今着替えを手伝ってくれているメイドさん達が困ってしまう。ちょっと考えたけれど、僕は着替えを終わらせることを先にしようと決めた。
「あの、少し急いで貰えたら……」
「あっ!かしこまりました」
メイドさん達は分かってくれたみたいで、てきぱきと終わらせてくれた。動きにくいし袖には何かヒラヒラがついているし、上着の裾も長いしキラキラした服だったけど、テンブルさんを捕まえなきゃいけない。扉から出て行こうとすると今度はお祖父ちゃんが入ってきた。
「支度できたようだな、行くぞ、ラセル」
「あっでもぼく、デンブルさんに用事が」
「後で良い、行くぞ」
「えっ……」
そのままお祖父ちゃんに手を引かれ、馬車に乗せられてしまった。仕方がない後で返してもらう事にしよう。
「ええと、なに?デンブルさん。ぼく着替え中なんだけど」
リトス家につくとぼくは泊まっていた部屋に行き、着替えをさせられている。自分で着れると断ったけれど、メイドさんたちは「私達の仕事ですから」と新しい服を着せてくれる……なんだか着替えを手伝ってもらうなんて小さな子供みたいで恥ずかしい。
そうやってあっちにくるくる、こっちにくるくる回されていると、部屋のドアをノックもなしに開けてデンブルさんが入ってきた。彼も豪華な服を着ているけれど、もしかして一緒に王宮に行くんだろうか?
「やっとお前みたいな疫病神が我がリトス家から出て行く日だな、やっと! 」
ぼくとメイドさんは何も聞かなかったふりをした。デンブルさんは何を言っているんだろう?もしかしてぼくは何も喋らない置き物でお祖父ちゃんと話さないとか思ってるのかな??
メイドさんは立場上、お祖父ちゃんには何も言わない。だってこのリトス家で働いている人だもん。でも僕はここの家に何の関わりもないから、僕を邪魔者扱いするとお祖父ちゃんに話すと思うよ?
デンブルさんはぼくのそばまで近づいてくるとすごく意地悪そうに笑う。
「お前のせいで私は父上に何度も叱られたんだぞ! 」
「……」
街に出かけたら必ず僕がいなくなって一人で帰って来るからね。道案内としても出来てるとは言わないし、護衛としても失格だもんね。いなくなるぼくも悪いかも知れないけど、いなくなっても気がつかないデンブルさんもおかしいよね?
「その慰謝料の代わりとしてこれは貰っておくからな」
「あっ!ぼくの短剣! 」
「ガキの癖に良いもん持ってやがる。私が使ってやるからありがたく思え! 」
あの始まりの遺跡で僕が見つけた短剣をデンブルさんはなぜか自分の懐から取り出して見せてまたしまった。
それは僕がこの部屋の机の引き出しに隠しておいたのに。デンブルさんは僕がいない間に勝手に入って盗んだんだ!
「それは僕のだ!泥棒だよ、デンブルさん! 」
「貰っておいてやるって言ってるんだよ! 」
「返して、それはぼくのだ」
ソレはずっと前から僕の物だ。ソレはあの人と揃いで作った物なんだ、だから僕のだ。
全然気が付いていなかったけれど、ぼくはデンブルさんを睨んでいたらしい。
「も、貰っておくって言ってるだろっ! 」
「あっ」
デンブルさんはぼくの短剣を持ったまま走り去ってしまった。追いかけて取り戻そうと思ったけれど、ぼくが走り出すと今着替えを手伝ってくれているメイドさん達が困ってしまう。ちょっと考えたけれど、僕は着替えを終わらせることを先にしようと決めた。
「あの、少し急いで貰えたら……」
「あっ!かしこまりました」
メイドさん達は分かってくれたみたいで、てきぱきと終わらせてくれた。動きにくいし袖には何かヒラヒラがついているし、上着の裾も長いしキラキラした服だったけど、テンブルさんを捕まえなきゃいけない。扉から出て行こうとすると今度はお祖父ちゃんが入ってきた。
「支度できたようだな、行くぞ、ラセル」
「あっでもぼく、デンブルさんに用事が」
「後で良い、行くぞ」
「えっ……」
そのままお祖父ちゃんに手を引かれ、馬車に乗せられてしまった。仕方がない後で返してもらう事にしよう。
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