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103 ロイ流下町の歩き方
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「都会は古着屋があるから、今日みたいな時は今着てる服を売って古着を買う」
「服って買えるの? 」
「……田舎じゃ交換か手作りだったっけ?」
「うん」
そういえば行商人が来た時に服も持ってた気がする!ロイは僕と一緒に古着屋へ入ってくれた。
「ちょい訳ありなんだ。この子の今着てる服を買い取っていい感じの服をくれ」
「ふーん、価格に文句つけないなら構わないよ」
「問題ないよな? 」
「うん」
僕は着慣れた服に着替えた。やっぱり妙に薄いのより落ち着くなぁ!
「随分買いたたかれたけど、訳ありは足元を見られてこうなる」
「……わかった」
古着屋のおばちゃんが「こっちだって色んな危険を考慮して買い取ってんだ、文句をつけるな!」って言った事も含めてロイは丁寧に説明してくれた。
「例えばだ、今日ラセルの着ていた服にはなかったみたいだけれど、もっと偉い人なんかは服についてるボタンにその家の家紋が入ってることがある。それを買い取ったとなると古着屋が偉い人に罰せられることがあるんだ」
「えーと……逃亡の手助け、とか? 」
「そう、その通り。だから自分が訳ありですよーって客からは凄い安値で買い取ったりする。今日なんかは相場の20分の一ってとこかな? 」
古着屋のおばちゃんの顔が物凄く怖くなったけど、ロイは構わず続けた。
「でも、綺麗な服を着て怖いおっさんに目をつけられる方が怖いだろ?だから早めに着替えた方が良い。もちろん出て来る前に平民の服を用意できてて自分で着替えれるなら問題ない。そういう時は貴族の服を古着屋に売る時もこっちから交渉できるしな」
「そっかあ」
「後、気をつけなきゃならないのが、こういう店を出てすぐに攫われることがあるってこと。店に入る前から目をつけられてて、着替えた後に連れ去られるってこともあるからな」
「ウチはそんなアコギな商売してないよ!邪魔だ、でてけーー!!」
「わわ!ごめんなさいー」
「ぎゃはは!わりーね! 」
僕は古着屋から逃げるように出て来て……なんとなく辺りを見てみる。いやな感じで僕を見ている人はいないみたいだった。
「ロイ、大丈夫だよね? 」
「ああ、大丈夫だ。でも覚えておくんだ、良いね」
僕はこくんと頷く。田舎の村と違って都会は色々な人がいる、知らない人もいっぱいいる。自分が生き残る為にちょっと狡いこともしなくちゃいけない……僕は死にたくない。
「古着屋が見つかんなかったら、干してある洗濯物を失敬するしかないな。代わりに今まで着てたいい服をぶら下げときゃ大抵誰も怒らない」
「なるほどね……」
「帽子は必須だぞ、顔を隠さなきゃ」
「うん」
一通り変装の方法を教えてもらってから、デンブルさんを見に行ってみた。
「畜生!あのカギどこへいった!!お父様に叱られるだろう!!ええい早くゴミをどけろ!クソックソーーッ」
御者さんに当たり散らし、怒っている声も大きいから皆遠巻きに見てる。態度が偉そうすぎるから誰も荷物の撤去も手伝わないし大変そうだった。
「チッこれだから貴族は……」
「どこのクソぼんぼんだよ……うぜえな、早く消えろ」
デンブルさんには聞こえない所でそんな悪口まで言われていたけど、あんな態度じゃ仕方がない気がする。そして結構近くまで寄ってみたけれど、僕には全然気が付かなかった。
「ああいう輩はラセルの顔なんか見ちゃいねえ。見てんのはどんだけ着飾ってるかとか、後ろ盾が誰なのかとかだな。だから平民と同じ服を着ちゃえばこんなもんよ」
「そうなんだね」
「逃げる時には助かるけどな、平凡も悪くねえんだぞ」
そういえば、と思い出してロイに聞いてみた。
「でもね、ミニィさんとかタムさんとか……ヘイズさんなんて背が凄く高いでしょう?どうみても目立つと思うんだけど、そういう人はどうやって隠れるの?」
するとロイは嫌そうな顔をしてからああいう化け物クラスと一緒にしちゃいかん、と言ってから教えてくれた。
「あの人達は気配ごと消すんだよ、あと歩いてる音も消せるんだ……そこにいるのに、いないような気がする。達人ってのは怖いよ、まったくもう!」
「えーと、良く分からない……」
「あんなの俺は真似できないから、会ったらやって貰いな。不思議ですげー怖いよ、ほんとまじで」
「う、うん……」
なんかよく分からないけど、不思議ですげー怖くて、ほんとまじらしい……良く分からない。
「服って買えるの? 」
「……田舎じゃ交換か手作りだったっけ?」
「うん」
そういえば行商人が来た時に服も持ってた気がする!ロイは僕と一緒に古着屋へ入ってくれた。
「ちょい訳ありなんだ。この子の今着てる服を買い取っていい感じの服をくれ」
「ふーん、価格に文句つけないなら構わないよ」
「問題ないよな? 」
「うん」
僕は着慣れた服に着替えた。やっぱり妙に薄いのより落ち着くなぁ!
「随分買いたたかれたけど、訳ありは足元を見られてこうなる」
「……わかった」
古着屋のおばちゃんが「こっちだって色んな危険を考慮して買い取ってんだ、文句をつけるな!」って言った事も含めてロイは丁寧に説明してくれた。
「例えばだ、今日ラセルの着ていた服にはなかったみたいだけれど、もっと偉い人なんかは服についてるボタンにその家の家紋が入ってることがある。それを買い取ったとなると古着屋が偉い人に罰せられることがあるんだ」
「えーと……逃亡の手助け、とか? 」
「そう、その通り。だから自分が訳ありですよーって客からは凄い安値で買い取ったりする。今日なんかは相場の20分の一ってとこかな? 」
古着屋のおばちゃんの顔が物凄く怖くなったけど、ロイは構わず続けた。
「でも、綺麗な服を着て怖いおっさんに目をつけられる方が怖いだろ?だから早めに着替えた方が良い。もちろん出て来る前に平民の服を用意できてて自分で着替えれるなら問題ない。そういう時は貴族の服を古着屋に売る時もこっちから交渉できるしな」
「そっかあ」
「後、気をつけなきゃならないのが、こういう店を出てすぐに攫われることがあるってこと。店に入る前から目をつけられてて、着替えた後に連れ去られるってこともあるからな」
「ウチはそんなアコギな商売してないよ!邪魔だ、でてけーー!!」
「わわ!ごめんなさいー」
「ぎゃはは!わりーね! 」
僕は古着屋から逃げるように出て来て……なんとなく辺りを見てみる。いやな感じで僕を見ている人はいないみたいだった。
「ロイ、大丈夫だよね? 」
「ああ、大丈夫だ。でも覚えておくんだ、良いね」
僕はこくんと頷く。田舎の村と違って都会は色々な人がいる、知らない人もいっぱいいる。自分が生き残る為にちょっと狡いこともしなくちゃいけない……僕は死にたくない。
「古着屋が見つかんなかったら、干してある洗濯物を失敬するしかないな。代わりに今まで着てたいい服をぶら下げときゃ大抵誰も怒らない」
「なるほどね……」
「帽子は必須だぞ、顔を隠さなきゃ」
「うん」
一通り変装の方法を教えてもらってから、デンブルさんを見に行ってみた。
「畜生!あのカギどこへいった!!お父様に叱られるだろう!!ええい早くゴミをどけろ!クソックソーーッ」
御者さんに当たり散らし、怒っている声も大きいから皆遠巻きに見てる。態度が偉そうすぎるから誰も荷物の撤去も手伝わないし大変そうだった。
「チッこれだから貴族は……」
「どこのクソぼんぼんだよ……うぜえな、早く消えろ」
デンブルさんには聞こえない所でそんな悪口まで言われていたけど、あんな態度じゃ仕方がない気がする。そして結構近くまで寄ってみたけれど、僕には全然気が付かなかった。
「ああいう輩はラセルの顔なんか見ちゃいねえ。見てんのはどんだけ着飾ってるかとか、後ろ盾が誰なのかとかだな。だから平民と同じ服を着ちゃえばこんなもんよ」
「そうなんだね」
「逃げる時には助かるけどな、平凡も悪くねえんだぞ」
そういえば、と思い出してロイに聞いてみた。
「でもね、ミニィさんとかタムさんとか……ヘイズさんなんて背が凄く高いでしょう?どうみても目立つと思うんだけど、そういう人はどうやって隠れるの?」
するとロイは嫌そうな顔をしてからああいう化け物クラスと一緒にしちゃいかん、と言ってから教えてくれた。
「あの人達は気配ごと消すんだよ、あと歩いてる音も消せるんだ……そこにいるのに、いないような気がする。達人ってのは怖いよ、まったくもう!」
「えーと、良く分からない……」
「あんなの俺は真似できないから、会ったらやって貰いな。不思議ですげー怖いよ、ほんとまじで」
「う、うん……」
なんかよく分からないけど、不思議ですげー怖くて、ほんとまじらしい……良く分からない。
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