【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

99 ミニィさんがいうことには。

　ミニィさんが言っていたんだ。

「偉い人……この場合は貴族などの社会的地位が高い人に媚びへつらう者は、自分より社会的地位が低い人への対応がクソである」

　僕はミニィさんは正しいんだなって再確認してしまった。

「フン、前王陛下の孫なんて……怪しいな」

　僕はデンブルさんと馬車に乗って市街地へ案内して貰っていた。馬車なんて要らない、歩いて行くって言ったのにそこはどうしてもっていわれてしまったし、このデンブルさんも一生懸命訴えて来たんだよね。

「是非ともこのデンブルにお孫さんの案内をさせてくださいませ！！　」

　でも馬車に乗ったら僕のことを汚いものを見るみたいな目で見て来たんで、こういう事かーと納得してた。

「おい、お前。このまま街を一周して帰るからな。散策なんて面倒なことは俺様はしないんだからな」

　そういうことを面倒くさがるからお腹が出っ張るんじゃないかな。とにかく僕はこの屋敷から出て、馬車がどっちの方向に行くかを窓からじっと見ていた。目立つ建物、お城の位置、真っ白な神殿、高い山。うん、なんとなく覚えられる気がする。後でロイに頼んで地図を手に入れて貰えばきっと一人でも問題なく街の中を歩けると思う。
　デンブルさんはずっと独り言をつぶやいている。大体文句ばっかりみたいで、クラスの女子が馬鹿にするとか、剣術の成績が不当だとか、テストの問題がおかしいとか。僕にはよくわからないなあ。

　馬車が賑やかな通りに差し掛かった。きっとこの辺がお店がいっぱい並んでいるところなんだろう。行きかう人たちは鎧姿で剣を腰から下げていたりする武装した人が多い。きっと遺跡を探索する冒険者達がいっぱいなんだ。いろんな人がいる中になんだかロイが見えた気がした……気のせいじゃなくて、お店の裏側に積んである荷物の後ろ側から手を振っている。どうして僕がいるのが分かったんだろう、流石だ！
　ロイの口がパクパク動いている……えーと、なんだろう……いくよー、かな？
　にやりと笑ってロイは積んであった荷物を思いっきり押して倒しちゃった！

「うわあああっ！」
「ひひーーんっ！」

　崩れた荷物は僕が乗っていた馬車の前にゴロゴロと転がり出て、馬と御者さんが大きな声を上げた。

「うわわわ！」

　デンブルさんは座席から前のめりに転がったけど、僕は窓枠にしがみついたから平気だった。急停車はしたけれど、元々街中で速度が遅かったのも良かったみたいで、特に怪我人もでなかったみたいだった。

「何をしている！この無能がッ」
「し、しかし坊ちゃん、急に荷物が崩れて……」

　ロイの悪事は誰にも見られていないみたいで、急に崩れたって感じになっている。それにそんなの御者さんのせいじゃないのに、デンブルさんは顔を真っ赤にして怒鳴りつけている。デンブルさんは馬車の前方についている小窓越しに怒るのは気に入らなかったらしくて、馬車のドアを開けて御者さんに文句を言い始めた。

「これだから平民はーー！！　」

　そしてあんまりにも身を乗り出し過ぎたせいか、馬車からドシンと落ちてしまった。

「い、痛い痛い痛いーー！」
「ぼ、坊ちゃまーー」

　僕は足を抑えて転げ回るデンブルさんの横にぴょんっと飛び降りた。これくらい普通に降りれるよねえ？そしてさっきロイがいた物陰の方に行く事にする。きっと待っててくれる気がするんだ。