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90 始まりと終わりの遺跡
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「おかしくないか?ここは地下三階までのはずだろう?」
「ええ、おかしいですね」
呑気な遠足気分で次の日に私達は「始まりと終わりの遺跡」へやって来た。中には小型のスライムやネズミの魔物がいてラセルでも余裕でさばき切れるものばかりだった。
「……素手は嫌だなぁ」
「イアンは誰かの肩の上にでも乗ってた方が良いかも」
肉球パンチでも倒せる気がしたけれど、足にスライムがつくのは嫌だったので、ミニィの肩の上にお邪魔することにした。
「いつの頃に出来たのか分からない遺跡。相当古いものらしいけれど、何せ中が狭いので手掛かりが少ない、ということですね」
「小さければ確かに手掛かりも小さいか」
「ええ、私達が住んでいたガルエン王国にはこういう古代の遺跡はありませんでしたから、中々気になりますね」
ミニィやタムは遺跡の成り立ちや歴史が気になっているらしい。壁を触ったり、模様を調べたり床の素材まで気にしている。
「スライムって食べられるんだろうか? 」
「むりだろ!」
パムとヘイズはそんな感じだ。ヘイズなんてでかい足でスライムを踏んで倒してるぞ?
「ねーねー!下に降りる階段があるよ」
そんな中、ラセルがあるはずのない階段を見つけたのだ。私達全員で2度見をして目をこすった。だってそこには何もなかったはずなのに、今は下への階段がある。一体いつ?どうやってそこに現れた!?
「……行かない方に一票」
「私も」
「俺も」
「怪しすぎる駄目だ」
「わあ、明るい~~皆、早く早く~~」
大変です、もう降りている子供がいます!!私達は全速力で追いかけるしかなかった。
降りると小さな部屋だった。机の上に、木の短い杖と短剣が一本づつ置かれている、ただそれだけの部屋。他に何も不自然に何もなく、何の説明もない。必然的に静かで音がない空間。
「はい、イアン」
「きゅ……」
何のためらいもなく、ラセルは短い杖を私に差し出した。
「これはイアンので、これは僕の。そんな気がする」
「……分かった」
遺跡に置いてあったものを勝手に持ち出したらとか触って大丈夫なのか?とか色々ある気がするが、ラセルはそれをすっ飛ばして、無造作に掴んだ。まるでそれが自分の物であって、自分でそれを置き、ただ取りに来ただけ。そんな感じで。私達は何も言えなかった。あまりに自然な動きだったから止める間もなかったんだ。
そして差し出された小さくて短い杖を私もなんの躊躇いもなく受け取った。なぜ?ラセルがくれたから……?そうかもしれないし、そうでないかもしれない……きっと後から不思議になって混乱するのかもしれないが、今はそれでいいと思った。
「もどろ、イアン」
「きゅ、きゅん?」
ラセルはまるでこの二つを取りにここまで来た、という足取りで降りて来た階段を登って行く。私達は釈然としないながらもラセルの背中を追いかけて行くしかなかった。
「ええ、おかしいですね」
呑気な遠足気分で次の日に私達は「始まりと終わりの遺跡」へやって来た。中には小型のスライムやネズミの魔物がいてラセルでも余裕でさばき切れるものばかりだった。
「……素手は嫌だなぁ」
「イアンは誰かの肩の上にでも乗ってた方が良いかも」
肉球パンチでも倒せる気がしたけれど、足にスライムがつくのは嫌だったので、ミニィの肩の上にお邪魔することにした。
「いつの頃に出来たのか分からない遺跡。相当古いものらしいけれど、何せ中が狭いので手掛かりが少ない、ということですね」
「小さければ確かに手掛かりも小さいか」
「ええ、私達が住んでいたガルエン王国にはこういう古代の遺跡はありませんでしたから、中々気になりますね」
ミニィやタムは遺跡の成り立ちや歴史が気になっているらしい。壁を触ったり、模様を調べたり床の素材まで気にしている。
「スライムって食べられるんだろうか? 」
「むりだろ!」
パムとヘイズはそんな感じだ。ヘイズなんてでかい足でスライムを踏んで倒してるぞ?
「ねーねー!下に降りる階段があるよ」
そんな中、ラセルがあるはずのない階段を見つけたのだ。私達全員で2度見をして目をこすった。だってそこには何もなかったはずなのに、今は下への階段がある。一体いつ?どうやってそこに現れた!?
「……行かない方に一票」
「私も」
「俺も」
「怪しすぎる駄目だ」
「わあ、明るい~~皆、早く早く~~」
大変です、もう降りている子供がいます!!私達は全速力で追いかけるしかなかった。
降りると小さな部屋だった。机の上に、木の短い杖と短剣が一本づつ置かれている、ただそれだけの部屋。他に何も不自然に何もなく、何の説明もない。必然的に静かで音がない空間。
「はい、イアン」
「きゅ……」
何のためらいもなく、ラセルは短い杖を私に差し出した。
「これはイアンので、これは僕の。そんな気がする」
「……分かった」
遺跡に置いてあったものを勝手に持ち出したらとか触って大丈夫なのか?とか色々ある気がするが、ラセルはそれをすっ飛ばして、無造作に掴んだ。まるでそれが自分の物であって、自分でそれを置き、ただ取りに来ただけ。そんな感じで。私達は何も言えなかった。あまりに自然な動きだったから止める間もなかったんだ。
そして差し出された小さくて短い杖を私もなんの躊躇いもなく受け取った。なぜ?ラセルがくれたから……?そうかもしれないし、そうでないかもしれない……きっと後から不思議になって混乱するのかもしれないが、今はそれでいいと思った。
「もどろ、イアン」
「きゅ、きゅん?」
ラセルはまるでこの二つを取りにここまで来た、という足取りで降りて来た階段を登って行く。私達は釈然としないながらもラセルの背中を追いかけて行くしかなかった。
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完結しました。
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