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57 私はダメな子じゃないよ!?
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「きゅん!うさぎとった!」
「すごーい」
何せ子狐とはいえ私は狐!狩は得意、と見せかけて実はクレヤボンスから茂みで手渡された……。
「時間かけるのもなんですから」
「ぎゅ……」
野宿の嗜みとして私とラセルで旅をしようとしたけれど、少し早かったみたいだった。何もかも自分達で用意するのはやっぱり時間がかかるし、早目に国を出る必要もある。
わ、私が使えない狐だからじゃないぞ!私はできる子なんだから!
「よーし、近くに小川があったからそこで捌こう!」
「うん!」
これも打ち合わせ通り。2人で街道から少しだけ離れて小川の音がする方に近づいて行くと、見慣れた後ろ姿が焚き火の前にいる。
「あれぇ?タムさん??」
「おや、ラセルとイアンか。すると途中で追い抜いたか?私も用事があってね、一緒に行こうかと思ってたんだ」
「わー!そうなんだ」
タムは芝居が上手い。スルッと嘘をついて合流してしまった、さすがだ。旅の仕方や、野宿、野営の仕方なんかも覚えておくに限るんだけれど、やはり子供の2人旅はまだ早過ぎたんだ。
何せ昼間に歩き疲れて2人とも夜は熟睡してしまうのだ!
なるたること!以前なら3日くらい徹夜でも大丈夫だったのに、歳のせいか?!歳のせいだな?あれ……いや、そうなんだけれど、若過ぎてもダメだ。
「20歳くらいの時は一週間くらいの行軍も平気だったのに、30過ぎると3日もきつくて今は1日もたない?あれ? 」
「イアンー?何言ってるのー? 」
あれ?混乱して来た。元来、私は脳筋寄りなので色々考えるのが苦手なんだ。考えるより体を動かしていた方が得意なのに、あいつら毎日毎日書類を山積みにして……やめよう、辛いことを思い出すのは。
「何でもないきゅん!」
「そう?なら良いけど」
私は今は子狐だもの。もう書類なんてかかないぞ!決意も新たに鼻息を荒くしているとタムがめちゃくちゃ優しい目でこっちを見ていた。やめて、それ傷付く。
「まーなんていうか、うさぎ。捌いちまえば? 」
「あっ!そうだった、イアンやろう」
「きゅん! 」
また優しい目をするのはやめて!辛い。
さて、丸々一羽のうさぎだけど、タムは手伝わなかった。私とラセルで工夫して捌いて行く。上手にはできないし、もちろんタムに頼めば完璧に仕上げてくれる。
でもそんなんじゃダメだ。人生、何があるか分からないからね。ある日突然生きたうさぎしか食べ物が無くなるかもしれない。その時、その命を一欠片も無駄にすることなくいただけるようにするには訓練が必要だ。
何事もやってみないと身につかない。
「う、うん……硬い」
「ラセル、こっちからナイフ入れて」
ラセルが四苦八苦して捌いたうさぎは食べるところが半分になってしまった。でも食べられなかった部分はラセルの知識として積み上がってくれただろう。
「うん、頑張ったな。焼いてたべようか?」
「うん!」
もちろん、一人分にも満たない肉は3人で分たらほんの少しだ。
「取り外した骨を煮て、香草を入れよう。スープはあるとホッとするものだし、きれいに外れなかった肉はこうやってやれば食べられるだろう? 」
「わあ!そうだね」
厳しい行軍で大きな鍋を囲んでみんなで食べた鍋もことを思い出す。薄いスープでも格別な味がしたものだ。
「すごーい」
何せ子狐とはいえ私は狐!狩は得意、と見せかけて実はクレヤボンスから茂みで手渡された……。
「時間かけるのもなんですから」
「ぎゅ……」
野宿の嗜みとして私とラセルで旅をしようとしたけれど、少し早かったみたいだった。何もかも自分達で用意するのはやっぱり時間がかかるし、早目に国を出る必要もある。
わ、私が使えない狐だからじゃないぞ!私はできる子なんだから!
「よーし、近くに小川があったからそこで捌こう!」
「うん!」
これも打ち合わせ通り。2人で街道から少しだけ離れて小川の音がする方に近づいて行くと、見慣れた後ろ姿が焚き火の前にいる。
「あれぇ?タムさん??」
「おや、ラセルとイアンか。すると途中で追い抜いたか?私も用事があってね、一緒に行こうかと思ってたんだ」
「わー!そうなんだ」
タムは芝居が上手い。スルッと嘘をついて合流してしまった、さすがだ。旅の仕方や、野宿、野営の仕方なんかも覚えておくに限るんだけれど、やはり子供の2人旅はまだ早過ぎたんだ。
何せ昼間に歩き疲れて2人とも夜は熟睡してしまうのだ!
なるたること!以前なら3日くらい徹夜でも大丈夫だったのに、歳のせいか?!歳のせいだな?あれ……いや、そうなんだけれど、若過ぎてもダメだ。
「20歳くらいの時は一週間くらいの行軍も平気だったのに、30過ぎると3日もきつくて今は1日もたない?あれ? 」
「イアンー?何言ってるのー? 」
あれ?混乱して来た。元来、私は脳筋寄りなので色々考えるのが苦手なんだ。考えるより体を動かしていた方が得意なのに、あいつら毎日毎日書類を山積みにして……やめよう、辛いことを思い出すのは。
「何でもないきゅん!」
「そう?なら良いけど」
私は今は子狐だもの。もう書類なんてかかないぞ!決意も新たに鼻息を荒くしているとタムがめちゃくちゃ優しい目でこっちを見ていた。やめて、それ傷付く。
「まーなんていうか、うさぎ。捌いちまえば? 」
「あっ!そうだった、イアンやろう」
「きゅん! 」
また優しい目をするのはやめて!辛い。
さて、丸々一羽のうさぎだけど、タムは手伝わなかった。私とラセルで工夫して捌いて行く。上手にはできないし、もちろんタムに頼めば完璧に仕上げてくれる。
でもそんなんじゃダメだ。人生、何があるか分からないからね。ある日突然生きたうさぎしか食べ物が無くなるかもしれない。その時、その命を一欠片も無駄にすることなくいただけるようにするには訓練が必要だ。
何事もやってみないと身につかない。
「う、うん……硬い」
「ラセル、こっちからナイフ入れて」
ラセルが四苦八苦して捌いたうさぎは食べるところが半分になってしまった。でも食べられなかった部分はラセルの知識として積み上がってくれただろう。
「うん、頑張ったな。焼いてたべようか?」
「うん!」
もちろん、一人分にも満たない肉は3人で分たらほんの少しだ。
「取り外した骨を煮て、香草を入れよう。スープはあるとホッとするものだし、きれいに外れなかった肉はこうやってやれば食べられるだろう? 」
「わあ!そうだね」
厳しい行軍で大きな鍋を囲んでみんなで食べた鍋もことを思い出す。薄いスープでも格別な味がしたものだ。
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