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45 昔の予言
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「このように「ふわもこきゅんちゃんデラックス」をラセルに抱っこさせておいたわけです」
何か丸くて暖かくてふかふかしてそれに狐の尻尾が生えているクッションとぬいぐるみの中間のような物をクレヤボンスのパペットうさちゃんは大仰に解説してくれた。
「中にはお湯の入っているんであったかいのです」
「買った!」
「ありがとうございますー」
つまり、私が夜中の秘密会議に連れて行かれている間、このぬいぐるみ?のような「ふわもこきゅんちゃんデラックス」がラセルと一緒に寝ているらしい。
「なんか今日は嫌な夢をみたよ……イアンが動かなくなる夢なんだ」
「きゅぅん……僕はここにいるよ!ラセル」
「イアンーどこにも行かないで! 」
「行かないきゅん!ずっと一緒だきゅん!」
でもなんとなくラセルには私の不在が分かったようで、私達は朝からぎゅぎゅっと抱き合ってしまった。ラセルを不安にさせるなんて良くない、今日から夜中の会議は禁止にしよう!
「でもこのふわもこきゅんちゃんは大人気ですよ!予約受付中です」
「変な商売しないでよ、クレヤ……」
遠目に見ると丸くなって寝ている私にそっくりなんだよね、これ。
「だから売れてるんですってば」
「何でぇ?」
まあ売り上げの一部をラセルの生活資金に充ててくれるというのでこれ以上文句はつけなかったけれど。
「ラセル。あの絵本の試作品ができたんだ。君に一冊あげよう。でもこれは試作品だから、製品版とは違う。製品版が欲しかったら、自分で買いなさい」
「ありがとう!黒いおじさん……、えーと黒曜将軍?」
「ここは戦場じゃないからヨウルさんと呼んでくれ」
「うん! 」
ラセルはにこやかに特別装丁だろう「試作品」を受け取った。開いて見ると、敵対している筈の黒将軍がかっこよくなっていた以外、あまり変わらない内容だった。
「わあ!キラキラしてきれいだねぇ」
「う、うん……」
本は職人の手によって金装がされていて、一体いくらかけて作ったのか分からない特別豪華版になっていたけれど、ラセルの目はもっとキラキラしていた。
「ね、この子僕に似てない?」
「似てるね」
マイワード将軍を囲んで笑顔になる子供達の中で一番真ん中に描かれていた男の子がラセルそっくりになっている。でも絵の感じもミニィが描いたものに間違いないから、きっと本にする前にミニィが描き変えてくれたんだろう……優しいなあ、流石私の息子だよ。
「僕、この本大事にするね」
「そうしてくれ」
黒曜将軍の大きな手がラセルの頭を撫でる。多分私もまだ人間だったなら、同じ事をしただろう。希望に溢れる子供の笑顔は何にも変え難い。これを守る為に、私達は本来戦っているはずだったのに。
「その笑顔を、守るためなら死すら厭わない」
「イアン?」
「きゅ?どうしたの? 」
一瞬、静けさが辺りを包んだ。あるよね、そう言うことって。突然その瞬間だけ言葉が止むってやつ。何かが通り過ぎたとか言われたりするけど、まあタイミングだと思う。
「何でもない!」
「きゅん!」
私とラセルはまた本を見始めた。前とどこが変わっているか当てっこを始めたのだ。りんごがひとつ増えていたり、オレンジが半分に切られている所もあって中々楽しい。
「じひなきちより しんなるおう たつる……「なき」はもしや「無き」ではなく「亡き」なのではないかと。我が国の占星術師の判断だ」
「……どこの国でもそうだと言われ始めています。情報を撹乱し続けているのですが、中々に難しい」
黒曜将軍の横にうさちゃんがぴょっこり顔を出す。私とラセルから離れた位置での会話。特に私の耳に入れないように細心の注意を払って交わされている会話。
「そうだとすると「慈悲亡き地より、真なる王、立つる」私はラセルにその資格があるように思えるんだ」
「うちの「可愛子ちゃん」は真実を掴み取る達人だからねぇ」
「だから、私達は守らなければならないんです。真なる王が立つその日まで」
その日、ラセルの家に来ていたむさ苦しい男達の心は一つだったらしい。
何か丸くて暖かくてふかふかしてそれに狐の尻尾が生えているクッションとぬいぐるみの中間のような物をクレヤボンスのパペットうさちゃんは大仰に解説してくれた。
「中にはお湯の入っているんであったかいのです」
「買った!」
「ありがとうございますー」
つまり、私が夜中の秘密会議に連れて行かれている間、このぬいぐるみ?のような「ふわもこきゅんちゃんデラックス」がラセルと一緒に寝ているらしい。
「なんか今日は嫌な夢をみたよ……イアンが動かなくなる夢なんだ」
「きゅぅん……僕はここにいるよ!ラセル」
「イアンーどこにも行かないで! 」
「行かないきゅん!ずっと一緒だきゅん!」
でもなんとなくラセルには私の不在が分かったようで、私達は朝からぎゅぎゅっと抱き合ってしまった。ラセルを不安にさせるなんて良くない、今日から夜中の会議は禁止にしよう!
「でもこのふわもこきゅんちゃんは大人気ですよ!予約受付中です」
「変な商売しないでよ、クレヤ……」
遠目に見ると丸くなって寝ている私にそっくりなんだよね、これ。
「だから売れてるんですってば」
「何でぇ?」
まあ売り上げの一部をラセルの生活資金に充ててくれるというのでこれ以上文句はつけなかったけれど。
「ラセル。あの絵本の試作品ができたんだ。君に一冊あげよう。でもこれは試作品だから、製品版とは違う。製品版が欲しかったら、自分で買いなさい」
「ありがとう!黒いおじさん……、えーと黒曜将軍?」
「ここは戦場じゃないからヨウルさんと呼んでくれ」
「うん! 」
ラセルはにこやかに特別装丁だろう「試作品」を受け取った。開いて見ると、敵対している筈の黒将軍がかっこよくなっていた以外、あまり変わらない内容だった。
「わあ!キラキラしてきれいだねぇ」
「う、うん……」
本は職人の手によって金装がされていて、一体いくらかけて作ったのか分からない特別豪華版になっていたけれど、ラセルの目はもっとキラキラしていた。
「ね、この子僕に似てない?」
「似てるね」
マイワード将軍を囲んで笑顔になる子供達の中で一番真ん中に描かれていた男の子がラセルそっくりになっている。でも絵の感じもミニィが描いたものに間違いないから、きっと本にする前にミニィが描き変えてくれたんだろう……優しいなあ、流石私の息子だよ。
「僕、この本大事にするね」
「そうしてくれ」
黒曜将軍の大きな手がラセルの頭を撫でる。多分私もまだ人間だったなら、同じ事をしただろう。希望に溢れる子供の笑顔は何にも変え難い。これを守る為に、私達は本来戦っているはずだったのに。
「その笑顔を、守るためなら死すら厭わない」
「イアン?」
「きゅ?どうしたの? 」
一瞬、静けさが辺りを包んだ。あるよね、そう言うことって。突然その瞬間だけ言葉が止むってやつ。何かが通り過ぎたとか言われたりするけど、まあタイミングだと思う。
「何でもない!」
「きゅん!」
私とラセルはまた本を見始めた。前とどこが変わっているか当てっこを始めたのだ。りんごがひとつ増えていたり、オレンジが半分に切られている所もあって中々楽しい。
「じひなきちより しんなるおう たつる……「なき」はもしや「無き」ではなく「亡き」なのではないかと。我が国の占星術師の判断だ」
「……どこの国でもそうだと言われ始めています。情報を撹乱し続けているのですが、中々に難しい」
黒曜将軍の横にうさちゃんがぴょっこり顔を出す。私とラセルから離れた位置での会話。特に私の耳に入れないように細心の注意を払って交わされている会話。
「そうだとすると「慈悲亡き地より、真なる王、立つる」私はラセルにその資格があるように思えるんだ」
「うちの「可愛子ちゃん」は真実を掴み取る達人だからねぇ」
「だから、私達は守らなければならないんです。真なる王が立つその日まで」
その日、ラセルの家に来ていたむさ苦しい男達の心は一つだったらしい。
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